青春再放送 1−1
4/3(金)
新宿の西口からバスで木更津に向かう。よく木更津まで通うな。
窓の外を眺める、高速のオレンジの灯りが流れていく。
この世で一番足を引っ張る町、バラナシ。そこで会った友達が店をやってるからって、毎回、何をしに行くのか。
イヤホンを耳にして、本を取り出し「ソロモンの偽証」のページを開く。時代設定がちょうど俺が高校に通っていた時期と近い。登場人物が多すぎて、これどう収拾するんだろう。
木更津駅からタクシーで10分。店のドアを開き、カウンターに座る。
「バーボン」と頼む。
「どうしたんですか?また、何かの影響?」
「うん、沢木耕太郎のバーボンストリート読んだんだよ」
好きだねと言われ、Maker'sが出てくる。
店内を見渡すと、ボックス席に3組ほど入っていて、カウンターのふた席に大きな荷物が置かれている。
バーボンを飲みながら何かつまみでも頼もうとしたら、カウンターの端から話しかけられらた。
「ども、久しぶりです」と、パーカーを頭から被っていたから気づかなかった。よく会う常連さんだ。
え?なんでパーカー?いや、明日、福岡でももクロのライブ行くんで、頭、赤く染めたんですよ。期間限定で。いや、愛がすごいですね。いやいや。そういえばボク、今月末にでんぱ組観に行くんですよ。
初めてのアイドルで今からドキドキで。と、一頻り、アイドル話で盛り上がる。アイドルの話できるって楽しい。
「タンカレーをソーダとトニック半々で」アイドルをつまみに酒がすすむ。
店のドアが開き、女の子が一人で入ってきた。レンズなし黒縁メガネだ。
カウンターの荷物の謎が解けた、彼女の荷物だ。客は気づけばカウンターの三人。
カウンターの左端にはimacが置いてある。itunesはもちろんyoutubeからも音が出せるし、いいスピーカを置いてるから音がいい。この店の魅力の一つだ。
メガネの彼女はmacを触り「one ok rock」をかけた。
それを聞いているうちに、どうしても見たいMVがある。ので、勇気を出して「次、ボクがかけてもいいですか?」を話かける。あ、いいですよ。何、かけるんですか?いや凄い好きなんですけど、一人じゃ見れないんですよ。
銀杏BOYZの「ぽあだむ」をかける。
「あ、長澤まさみだ」うん、長澤まさみちゃん。でも、いつものまさみちゃんではないよ。
「え?」とレンズなしの眼が問いかける。いや、いいから見てて。
長澤まさみちゃんのはにかんだチュー、キラキラのメロディからの「イェー」
女の子達のキス顔が続く。女のは可愛い。全ての女子は可愛い。
「ぽあだむですね」料理を作っているハシが奥からでてくる。
「ぽあだむ見るとつらくなって、一人じゃみれないんだよ」分かりますよ。最近、銀杏きかないですもん。音にもってかれるから。
「わかる」とキク。 全員でポアダムを見る。最後にもう一度、長澤まさみちゃん。
いい曲の一言ではかたづけらない。キラキラしてる、女の子は可愛いでも、つらい。
自分の感情を持て余していると、彼女は言った「今日、あたしの誕生日なんだ」
つづく
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