Love the way you are★つづき

著者: 高橋 ひとみ
第3章

登場人物
1、四季
2、腹の出っ張った女
3、リン


次の日の夜8時、四季は言われた通り田端駅へ向かった。
時間通りだ。
改札の前にはすでにあの女が立っていた。

無言で近くに行くと、女は
「こっち」
とだけ言い、四季は言われるがまま近くの喫茶店につれていかれた。
喫茶店に入ると、客の少ない中、不自然なくらい奥の席にスーツをバシッと着た男が座っていた。身長は高めそうで、短髪で、まー"普通"だ。

女はその男の席へ向かって歩いた。
そして男の前に座った。
四季にニコリと微笑みかけ、隣に座るように即した。

四季は様子を伺っていた。
だいたいの状況は誰でも想像できるが。

男は四季を無視し、口を開いた
「おろしてなかったんだ、本当にいろいろ申し訳なかった」

こういう時に男性から出る「いろいろ」という言葉の意味は大概本人が一番わかっていない。
考えようともしていないと言う方が正しいのか。

すると女は返した
「下ろす気はないって言ったでしょ。私は産みます。それから、会うのも今日限りにしましょう」

男は困った顔をしている。どうしようもできない。男にとってはゲームオーバーだ。

次に男は四季を見て聞いた
「君は?」

四季はとっさに言った。
「この女の知り合いです。事情はよく知らないけど、この女ぬ雇われました」

男は、なんなんだ?という顔をしている。
女は、四季の隣で少し笑っていた。

女が言った
「そう、ちょっと手伝ってもらおうと思って。ほら、こんなお腹だし、不便なことも多いでしょう。だから、、」と。

女は続けた
「とにかく、もうあなたとは会わないし、この子にも会わせないし、本当に終わり。それでいいでしょ?」

男は何か言いたげだったが、四季がいる手前、言葉を飲み込んだんだろう
「わかった、いろいろありがとう」

と言って、席を立って伝票を持ち、お会計を済まして店を出て行った。

するとともなく、女は四季に言った。
「行こう」

何をするかと思いきや、さっきの男の後を尾行し始めた。
15分ほど歩いた所で、あの男はある大きな家に入って行った。

まーまーまーまー。
という程キレイなお家で。庭も広く、その庭には沢山の植木鉢に花が植えられている。
家と道路をさえぎる壁にも花の鉢が吊り下げられていた。

誰がどう見ても、一見素敵な家庭を想像する。

一見ね。

女はその家を見て何か考えているようだ。
そして
その家から少し離れたところから女は言った。
「よしっ決めた!!」

四季が
「なにを?」
と聞くと

女は
「だってなんだか気持ち悪い。すっきりしないの。こういうの私嫌いだし、胎児にも良くないでしょ。だから。。」

女は続けた
「幸せな復讐、思いついた」

さらに続けた
「あなたには重労働をお願いするかも。その名も、盗っ人大作戦!」
と言って振り返り、来た道を引き返し始めた。

四季は女の後ろ姿を少し眺めていた。
盗っ人大作戦。。。
「なんだ、やっぱり面白そう」
と心の中で思っていた。

喫茶店にいるときは、なんだかよくある話だなぁと思い、このバイト下りようかなと思っていたが、明らかに違うのだ。

喫茶店に入る前と、後のその女の後ろ姿が。
人の表情は秒毎に変わるが、その変わりようが昨日の夜考えても考えてもわからなかった、四季のつっかかりを和らげたのだ。

面白い。

この女はあの男を憎んでいるんだろうか、人の心は後ろ姿を見ればなんとなくわかる。



四季は思った。
見届けてやろうじゃないの。

「マリア様になりたい」なんて言う、
あんたの言う幸せな復讐の先に、何があるのかを。

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