俺が詐欺師に騙された話…しかも海外で(後編)

<

2 / 2 ページ

前話: 俺が詐欺師に騙された話…しかも海外で(中編)
著者: みかみ いちろう


いらんし。

俺。

しかも、伊東ってどこか知らんし。

いらないというと、「アメックスのカード枠がまだ残ってたよね?利子つけて返すから、あのカード枠を使わしてもらっていい?」と言ってくる。

「アメックスはあの日以来解約しました。(当然解約していない)」

とにかく、俺はこいつに金を渡してる場合じゃない。

金を返してもらわないといけないんだから。

俺のもう1枚のカードがパンクしたままと思ってるから、アメックスのカード枠をギリギリまで使いたいようだ。

お前、他人のカードをパンクさせといてよく言うね。こいつ。


話も長くなるし、用事はただひとつ。

金を返してもらうことだ。


「…まあ、関係ない話は置いといて、とりあえずお金を返してもらえますか?」

上手く言わないと、へそを曲げて「やだ。」とか言われたらアウトだからね。


すると、今はないから、銀行に行こうと言う。

なに?

現金持って来たんじゃないの?

「じゃあ、一緒に銀行に行きましょう。」

そうしたら、山口県にない銀行名を言って、福岡に戻ってからすぐに入金するという。


…終わったな。

うっすら気づき始めた。

俺は詐欺にひっかかっている。


それから入金が途絶えた。

俺の口座から、毎月27万円くらいのお金が自動的に引き落とされていく。


俺は何度か警察に行った。

でも、必ずこう言われてしまう。

「これは無理なケースです。」

海外であること→海外でも詐欺は詐欺なのだが、ちょっと面倒らしい

俺自身がカードを貸していること→盗まれたのならともかく、カードを使ったのは俺だったということ

少しだけ返済していること→返済の意思があり、とみなされるらしい

相手はプロなので、自分が捕まりにくいようにいろいろな工夫をいっぱいしています。

なので、諦めてくださいと。


そして多くの人が騙されていたことが分かった。

特に、奥さんだと思っていた人が奥さんではなく俺よりも一ケタ以上も多くお金を失っていた。

周りの人は全員お金を使わされていた。

ただ、台湾の大物だけはお金を貸さずに詐欺師と絶縁していた。


その後被害者の会のようなものが結成され、詐欺師専門の弁護士について裁判を起した。


~~~今、係争中~~~~



あなたにお知らせしたい。

カードを貸してはいけない。

甘い言葉で近づいてくる人をむやみに信じない方が良い。

そしてなにより、詐欺なんて自分には無関係と思っていても、もしかしたら巻き込まれるかもしれないことを気に留めておいて欲しい。


あのことに関して、みんなが俺に同情してくれる。

詐欺師が100%悪いように言ってくれる。

でも、俺はそうは思っていない。

俺も悪かった。

俺も未熟だった。

そうだな、悪さ的には詐欺師60、俺40くらいだったと思っている。

俺にも隙があった。

断ることだって出来たし、実際にお金を貸してしまったのは俺なのだから俺にも責任がある。


成功者の話を聞くと、お金を騙されたりお金で失敗したことはすでに経験済みのことが多い。

だから、これは上がっていくための経験なのだと考えている。

こういうのを経験して痛い思いをするから、次から上手になっていくんだと思う。

ただ、自分が経験しなくても、話を聞くだけも経験値が上がると思うので、あなたはどうか騙されないで欲しい。


去年の年末にやっとお金を払い終わった。

毎月毎月27万のお金を引き落とされ続けてむかついたが、今はもう終わっている。

200万円近い勉強代は痛かった。

でも、俺は進化した。

もう騙されることはないだろう。




弁護士事務所に行くようになってしばらくして、詐欺師からなんと紙が送られて来た。

その紙にはこう書いてあった。

「分割で返済します。毎月5000円ずつあなたの口座に振り込みます。」と。

毎月27万円振り込まないといけないのに、5000円って。

その金額は誰が決めたのか?

てめえ、なめてんのか?

返済するのに約30年間もかかる計算だ。

詐欺師は俺より年上だったから、90歳くらいまで払い続けるのか?

いやいや、「返済の意思あり」を示しているのだ。

裁判で少しでも有利に持ち込むためにだ。




…恐ろしいことに5000円は今でも振り込まれ続けている。




5000円はきっと裁判が終わるまでは振り込まれるだろう。

だが、俺のカードはすでに甦っている。

そして、俺はいつも気をつけていることがある。

法律に触れることは絶対にしない。だ。

俺は回り道したおかげで、大学に入ったり独立するのに時間がかかったし苦労したと思っている。

だから、苦しそうな気がしても、堂々と真ん中を歩くことが結果的に一番いい道だということを知っている。


俺の塾から道を踏み外す子ができるだけ出ないように、ど真ん中を歩くことがどれだけ重要なことか、これからもみんなに話していきたい。

著者のみかみ いちろうさんに人生相談を申込む