スズランの話 2 前回は、20年続けた花屋もう潮時かと、悩んでいたところ、パリジェンヌが現れ潮目が変わってきたというところまで、面白いのは、これからです。
「花瓶はホテルに借りるから、花包んでくれる。」と、パリジェンヌは、髪をかきあげた。
「花瓶はこれが良いと思います、ホテルにいいのがあるかわからないし、お供しますよ、花瓶はチェックアウトの後、取りに行きますよ。」
「いいよ、また取りに行ったり面倒だから、大丈夫、花瓶ぐらいあるでしよう、ホテルに。」違う花瓶じゃ、イメージが違ってくると思い。
「花瓶も花も、今から配達しますよ、ホテルは近いし、今から行くんでしょ、後ろから付いて行きますよ。」
「忙しいのにいいよ。」と、言いながらも、僕の提案に乗ってくれた。
パリジェンヌの黒い車の後を、オンボロ車で付いて行った、車で5分もかからない海沿いのホテルにむかった。
駐車場に車を止めると、先に着いていたパリジェンヌはホテルに入らず、僕を待っていてくれた、二人で並んで歩いた、ほんの数メートルだけど、恥ずかしい僕は。
「少し離れて歩いてください、貴方の品位が落ちます。」
その時の格好は、ブルーのネルシャツに汚れたワークパンツ、首にタオルをかけていた、少し離れて、後ろから付いて行った、お姫様と使用人という形をとりたかった。
方や、パリジェンヌは、前回のモノトーンな感じと違い、パリからのお客様を迎える風の、華やかな感じで、並んで歩くには、気が引けた。
前回、お客様が来られた時は、違うホテルを使ったけど、食事が良くなかったそうだ、今回のホテルは新築ホテル、ロビーに入るとまた、恥ずかしくなってきた。
バリジェンヌはフロントの人に何やら話してる、僕は後ろで小さくなっていた、いかにもホテルマン、五十代男性が出てきた、手にシャンパンらしきものを持っている、こちらにどうぞと言いながらパリジェンヌをソファーにすすめた。
僕もソファーに座ると、シャンパンの説明だった。
「こちらのシャンパンは、なかなか手に入らないもので、たまたま出入りの業者が、持ち合わせていた物で、しかもノンアルでございます。」
長い説明に少々ウンザリ気味のパリジェンヌは、くいついた。
「ノンアルじゃ困ります、アルコールの入ったものを用意してください。」
それからも、説明というか、言い訳みたいなものをホテルマンは続けた。
「じゃあ、もうそれでいいです。」パリジェンヌは、とうとう折れた。
険悪なムードの中、僕は、花の事をホテルマンに頼み、そそくさとホテルを後にした。
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