②マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話

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と目の前にある汚い木造船を手でパンパン叩きながら船を指さしました。




まるでドリフのコントのようです。



設備のリストを見せていただきましたが大きな魚群探知機やら100kも張れるはえ縄の幹糸など、それは外洋でも操業できる立派な装備でしたのでてっきり499型の船だと思っていました。




目の前の汚い木造船を避け一生懸命沖の大きな船を探していたのでまったくその船には気づきませんでした。木造の船には完全に装備と不釣り合いの漁具でした。




船を差し押さえすぐに転売しようと目論んだ私の計画がその汚い木造の船によって大きく予定変更せざるを得なくなりました。






「こりゃ、売れないな・・・」




一生懸命船の説明をするガマ社長。




しかし、そんな説明を遮るかのように現実に戻りたくない衝動を抑えきれずいました。


さっきまで船を探していた視線を戻す来なく遠くを見つめ詰将棋のように先へ先へ、いえ、船が私の頭の中でぐるぐるとまわっていました。



決して売れる事のない木造船をまのあたりにして当初計画していた予定は大きな変更を余儀なくされました。


しかし多少の計画変更はしょうがありません。落ち込んでいる暇は無く三日間でかたを付けなければなりません。




午後からはホテルに戻り、国家警察(NBI)とのミーティングを控えていました。マニラに出発する前、NBIの友人から警察関係者と弁護士を紹介して頂いていました。



今回、あまりにも手口が手馴れている事と古くからマニラに住んでいるガマ社長は以前にも同じ手口で何か事件やトラブルなど起こしているかもしれないと思ったからです。



もし過去に同じケースで有罪が出ていればすぐにでも彼らの動きを止める事が出来ます。


とにかく今は会長が振り込んだお金をいかにして奪還するかが最大の目的です。


口座でも凍結出来れば、あとは日本で女形社長と船頭を相手取りゆっくりと裁判でも起こせる。



ホテルの個室にはマニラNBI、湾岸警察、そしてフィリピン人弁護士が参加してくれました。


私の予想通り、NBIの調べでは過去に数件同じようなケースで日本人からガマ社長に訴えは有ったそうです。


しかし、どれも事件として扱われることが無かったようです。


NBI「とにかく相手は同じ手口を使い日本人からお金を集めていることは間違いないようですね、もう少し調べを進めます」



今回のケースは会長が日本円で7千万円以上の大きなお金をフィリピンに投資したにも関わらず、一年以上何も状況が進まない事で困っているという主張をしました。


彼らのサイン入が入った「計算書」を持っている事でMBIの心象は良く、船が転売されないように船を差し押さえよう。と話がまとまりました。


湾岸警察もこの船が他の港に出航できないようブラックリストに入れてくれるよう了承してくれました。


これであとは持久戦です。焦った彼らがいつ動くか見ものです。


あとは日本で日本の法で彼らを追い込めばいい事。早速、今週中には書類を作り、弁護士とNBI立ち合いのもと船を差し押さえるといってくれました。


後はフィリピンの弁護士と方策を考えながら進めて行けばいい事、こちらは日本に居て弁護士に指示をすればいい。なんら危ない事はありません。



今まで何度も殺し屋に狙われながらも学習してきたこの国での交渉術がここで役に立つとは・・・


そんな思いで私は意気揚々としていました。


明日は日本、午前便でマニラを出発すれば午後いちには成田に着く。


仕事もいい方向にひと段落した事だし、今夜は久々に会長のお酒に付き合おうか。


なんて思っていた矢先、会長からホテルのロビーへ呼び出されました。




ホテルのロビーではネクタイを外しただけのスーツ姿の菊池さんもおりました。


「ナベチャン、飯でも食べながら少し話がしたい」


いい仕事したぞ感たっぷりの私と正反対に菊池さんと会長はとても緊張をしている様子でした。




何かが違う・・





「実は菊池をマニラに残すことに決めました」




ひとしきりオーダーが終わって先に運ばれてきたビールをひといきでぐっと飲み干した会長が発した言葉に私はしばらく何事があったか返事が出来ませんでした。




「マニラに菊池さんを残すのは危険すぎます。ここはひとまず日本に帰って日本で戦うべきです」





「実はもう後が無いんだ・・・来月に一千万円の手形が落ちなければ先祖代々から受け継いできた会社が倒産する。そうなれば菊池も銀行には戻れないだろう、何とか現金を作らないとダメなんだ」




最初から感じていた違和感ははやりその訳ありの違和感でした。

息子さんに事業を引き継いだものの会社の業績は悪くなる一方。

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