②マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話
最初は遊びのつもりで投資した船の資金が会社の起死回生のネタへと変わり母体の経営まで巻き込む大きな負債となってしまったそうです。
老舗の和菓子屋工場ももはや銀行から出向が来るほどに業績が落ち込んでいたそうです。詳しくは分りませんが、菊池さんもその銀行からの出向と一連していたような気がいたします。
「マグロは市場に持ち込めば翌日には現金にしてくれるだろ?あいつらがやらなければ私たちがやるだけの事だ」
フィリピンで水揚げされるマグロでも日本に入荷できるレベルはごくわずかです。
フィリピンのマグロ漁師が日本の漁師みたいにすべてきちんと魚を手当しているとは限りません。
朝上げの鮮度はとても良いマグロですから見た目はきれいで良いのですが中が真っ黒にやけていたり身割れがひどかったりとそれを見分ける技が重要です。
しかもタチの悪い事にフィリピンのマグロの棚はとても複雑ですのでパヤオ漁のような棚の浅い場所で釣れたマグロは何をやっても焼ける可能性があります。
日本のマグロのセリ人が現地に行って買い付けても半分は悪いマグロをつかまされるといいます。
それほどマグロビジネスは奥が深く難しいです。
「会長、和菓子の作り方が分らない素人が作った和菓子なんて誰がお金を出して買うと思いますか?プロがやっても失敗する世界です。失礼ですがプロをなめないで頂きたい」
しかしいくら促していても会長の気持ちが揺らぐ事はありませんでした。
まぁこちらには国家警察もついているし優秀な弁護士も付けた。命を狙われるほど危ない事は無いだろう。
「分りました。菊池さんが残るのは船の売り先を探す事を最優先に、そして決して漁には出ないでください。」
そして、船に近づく時は必ずNBIと一緒に行動すること。
これらをお願いして私もしぶしぶ了承せざるを得ませんでした。
私たちが日本に戻り、一週間後に菊池さんから連絡がありました。
「やりました!船を奪還しました!」
弾んだ声で連絡がありました。
菊池さんも緊張していたんでしょう。
感情を表に出さないような普段のしゃべり口とは違い、とても人間らしい嬉しそうな声でした。
「菊池です、今宜しいでしょうか?」の普段のしゃべり口ではなく、いきなり「やりました!船を奪還しました」と切り出したものですからその嬉しさはひとしおだったと思います。
NBIと弁護士同行の元、船から船員を下し、船に立ち入り禁止のロープを張り警備員の24時間体制で付けたそうです。
「色々ありがとうございます。漁には出ません。船の買主を一刻も早く探します」
「菊池さん、くれぐれも気を付けて」
私たちが日本に帰って来てから会長からの電話はぱったり無くなりました。
あれほどしつこいくらいに電話をしてくれてた人からパタッと連絡が無くなったので心配はしていました。
菊池さんが船を奪還したとの連絡はすでに会長の耳に入っているだろう。会長からお礼の電話があってもいいはずなのに・・
帰りの電車の中、あと一駅で自宅の駅に着こうかというところ、急に会長の事を思い出し、駅に着いたら久々に電話でもしてみるか?と思い始めました。
よく「女性を落とすテクニック」として、頻繁に電話をしている相手から急に電話が無くなると女性は恋に落ちやすくなる。なんてどっかの本に書いてあったな?
まんまとやられた感と悔しさが入り混じり満員電車の中で笑をこらえているところに会長から電話がありました。
「ナベさん、聞いてほしい・・・菊池が逮捕された」
私の気持ちとはあまりにも裏腹な会長からの第一声でした。
慌てて電車から飛び降り詳細を聞きました。
相手は一緒にいたNBIや弁護士などに一切触れず、菊池さんが単独で船を奪ったと主張してきたそうです。ホテルでくつろいでいた菊池さんの部屋に入り込みあっという間に逮捕拘束したそうです。
罪状は「海賊行為」
港から一歩も船を動かさない海賊行為なんてある?出来の悪そうな連中が考えた妨害策です。
こちらはNBIも腕利きの弁護士も控えています。奴らが動いてくれた方が早くぼろが露呈しますので都合がいいのかもしれません。
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