高木教育センターのありふれた日々(10)

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著者: キョウダイ セブン

「自習室はありますか?」

 と尋ねられる。「落ちこぼれ」組の生徒の質問だ。「お客様の声を聞く」という美名のもと、多くの塾が自習室を作った。もちろん、お金がかかるので月謝が上がる。でも、私は作らなかった。「浮きこぼれ」の子たちが望んでいないことを知っていたからだ。

「5科目の指導をしてもらえますか?」

 という声もよく聞く。「落ちこぼれ」の生徒からよく出る。しかし、考えてほしい。学校と違い、塾は週に2回とか3回しか通わない。そこで、どうやって5科目の指導をするというのだ。全科目中途半端になる。

 5科目の先生を雇って中途半端な指導を始める塾もあった。もちろん、人件費が莫大になり月謝が上がる。私はその道はとらなかった。毎月の月例テストを5科目にし、家庭学習中の質問を写メして送信してもらい5科目の質問に答えるようにした。

  経費をかけた塾の多くは、すでにない。存続している塾も「不良のたまり場」と呼ばれている。逆に、私の塾には地元の優秀な生徒が集中して集まってもらえた。こんな田舎の個人塾なのに、ほぼ毎年「京大」「阪大」「名大」に合格者がでる。

  「落ちこぼれ」はいつも騒ぐ。だから、大きな声に惑わされて塾経営者の方たちは「生徒の声」だと勘違いする。一方、「浮きこぼれ」の優秀な子たちは常に静かで声をあげない。しかし、サイレント・マジョリティの声を聞かない経営者は淘汰の憂き目をみるのだ。

  これは、日本のマスコミを見ているとよく分かる。すぐにデモなどの暴力に訴える左翼の声が大きいので、それを「国民の声」として報道する。ところが、現実はそうなっていない。左翼を支持するのは、日本人の2割くらいしかいないのだ。

  あとの8割は黙って推移を観察している。そういう大多数の声に耳を傾けないから中学生からでさえ

「マスゴミの言うことは信用できない」

 と言われてしまい、テレビや新聞を信用しなくなるのだ。「落ちこぼれ」組は怠け者なので、成績が上がらない。すると、

「あの塾はダメだ」

 と自習室や5科目の講師を用意した塾を簡単にやめていく。そういう塾は経費に圧迫されて消えていった。ワガママな人を相手にすると、夜逃げや首吊りに追い込まれる。まともな人を相手にしないと命取りになりかねないのだ。

  だから、どの塾も予備校も高校も大学も「マジメで素行がよく、成績優秀な生徒」の確保に必死になる。学校だけではなく、企業も同じことだ。アホな若者に来られたら倒産してしまう。

 優秀な人材の確保は死活問題なのだ。

 では、どうすれば優秀な人材に来てもらえるのか。既に書いた。「落ちこぼれ」の大きな声ではなく、「浮きこぼれ」の静かな声に耳を傾けることだ。観察することだ。たとえば、私は

「学校の先生は質問すると、すぐに逃げる」

 という静かな声を聞いた。だからこそ、学校のように5科目指導の先生を用意せずに家庭学習中の質問にメールやファイルで答えるようにした。

「塾の先生は、私より英語がヘタかも」

 という声を聞いた。だから、英検1級をとって生徒に安心してもらった。

「あの予備校の先生、Cランク大卒で信用できない」

 という声を聞いた。だから、自分で京大を7回受けて成績開示をした。

 そういう真摯な声に耳を傾けずに、豪華な自習室を作り、学力の低い講師を用意しても廃業に追い込まれるだけなのだ。もちろん、少子化や不況も関係しているが厳しい経営環境の中でも生き残る塾はある。

  エール出版の合格体験記は「東大」「京大」のものが売れる。それは、大多数の生徒が

「どうしたら成績を上げることができるか」

  知りたいからだ。つまり、上位層の勉強のマネをしようとするわけだ。お陰で、四日市高校や津高校、あるいは東大や京大が定員割れなど起こらない。塾や予備校も同じことで、上位層に選ばれる塾や予備校だと

「あんな優秀な子が選ぶのだから間違いないだろう」

 ということで評価が上がる。建物がきれいだとか、自習室があるからといって選ぶわけではない。ダメな大学ほど

「うちは食堂がきれいです」

 といった学業と関係のない点で生徒を集めようとする。「下町ロケット」の中小企業や、今や巨大企業になったマイクロソフトを見れば

「すべては人次第」

 という原則が分かるはずだ。武田信玄の昔から

戦国最強と言われた武田軍総大将、武田信玄の名言

人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり

  三重県の無名の個人塾から、今年は10名の京大受験にチャレンジする。

H27年度、合格実績        

「京大経済学部」「京大総合人間学部」「東京医科歯科大学」「阪大外国語学部」「東工大」「名市大薬学部」

H26年度、合格実績

「京都大学医学部」「大阪大学医学部」「京都大学工学部」三重大学「工学部」

  こういう実績は、良いユニフォームを着れば一流選手式の考え方の人の目には留まらない。しょせん、塾は講師なのだ。

塾長;名古屋大学卒業後、アメリカ、ユタ州ローガン中学校で教師経験後帰国。英語検定1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級など合格。名古屋の大規模予備校で14年間勤務。京都大学を受けて成績開示し、英語8割、数学7割正解。「英語の資格を取ろう」(法学書院)で紹介されました。

「テレビで有名タレントがCMやっているから、あの塾に行く」

そんな生徒には来てほしくない。合格実績も上がらないし、退塾率が高いし、経営が不安定になる。備品の破壊や月謝の踏み倒しも多いのだ。素行が良くない生徒は塾が倒産する第一歩だ。

第九十六章

「電卓、電子辞書、スマホ」

  電卓が市場にあらわれた頃、学校の先生は苦い顔をした。

「電卓など使っていたら計算能力が落ちる!」

 と言って使用禁止を言い渡した先生もいた。

  電子辞書が普及した頃も、英語の教師は

「電子辞書の学校への持ち込みはゆるさん。紙の辞書の方がよい」

  と言う人もいた。

  スマホに人気がでてくると

「変換ボタンばかり押していたら漢字を書けなくなる」

 と言った。

 しかし、一方では

「計算能力が数学の力ではない」

「辞書など早くチェックできればいいのだ」

「漢字が書けることが国語の目標ではない」

 と言う人も増えてきている。時代が進歩していくときは、必ず抵抗勢力があらわれる。ソロバンの名人や漢字愛好者は悲しいのだろう。しかし、時代の進歩を止めることは誰にもできない。

  産業革命の頃から、人間の仕事を奪われると騒ぐ人たちはいた。しかし、そのような声は歴史の闇に消えていく。昔なら、計算ができて、漢字が書けたら「頭がいい」と評価されたのだろう。しかし、今は違う。

「そんなことはコンピューターがやってくれる」

 のだ。四日市高校や京都大学に合格できる子は、計算のできる子や漢字をたくさん知っている子ではない。機械ではできない思考ができる子なのだ。時々、円周率を何千桁までそらんじることが出来るとか、全国の駅の名前を全て知っているとか、いろんな人がいるが、そういうことを賢いとは言わない。

  少なくとも、難関校に合格できる能力とは異なる。そんなことは検索すれば一発で分かるからだ。

  塾でもたまに時代遅れのクレーマーがいる。たとえば、テストをすると採点ミスが避けられない。すると、

「こんないいかげんな採点ミスをする塾は許せない!」

 と激怒して塾を移っていく方もみえる。しかし、記述式の問題は採点ミスが避けられない。ミスをなくすには、センター試験のように機械に採点させるしかなくなる。しかし、これは教育効果に問題がある。

採点ミスのマイナスと、記述式問題の練習による教育効果のプラスを考えるとプラスの方が大きい。賢い子は、そこを理解しているがクレーマーは人間が機械になることを求める。機械のような人間が理想なのだ。

  残念なことだ。時代の求めている方ではないので、そのうち淘汰されるのだろう。

  世の中のありようが理解できない人を待っていられるほど世の中は甘くない。私の塾は、三重県の小さな個人塾だ。しかし、Youtube に動画を投稿したら合計38万回の最整数になった。アメブロの「受験生」のランキングは1位となっている。北海道から九州まで通信生の申し込みがある。

  今年は、京都大学に10名以上が挑戦します。

  三大予備校「河合」「駿台」「代ゼミ」の一角だった代ゼミが校舎を7割閉鎖した。三重県でも今年、最大の業者テストであった「三進連」が倒産した。受験業界に関係のない人たちは驚いているが、業界にいると不思議ではない。

  私は名古屋の大規模塾で勤務していたので分かるのだ。恐竜のように図体が大きくなると時代の流れについていけない。京大を受験するような優秀な子たちは、すでに時代の流れを感じ取っている。そして、ネットを使って次の流れに乗る。

  代ゼミ、20校閉鎖 浪人生減で全国7校に

2014/8/23 11:04

フォームの終わり

 大手予備校「代々木ゼミナール」を運営する学校法人高宮学園(東京・渋谷)は全国27カ所の校舎を7カ所に減らす方針を固めた。20カ所では2015年度以降の生徒募集をやめて休校し、事実上閉鎖する。施設の活用法は未定という。代ゼミは大学受験の浪人生を主な対象に運営してきたが、少子化や現役志向の高まりで浪人生が減り、業績が悪化していた。

  私が高校生の現役なら「なんとなく」河合や駿台に安心感を持つ。通信教育ならZ会だろうか。何も好き好んで三重県の個人塾の無名講師に添削を依頼などしない。ところが、ネットに京大を7回受けた、英検1級だ、塾生が京大医、阪大医、名大医に合格したと公開したら申し込みがどんどん増えてきたのだ。

第九十七章

「『受験』という硬い話で Youtube 38万回再生」

 Youtube  「38万回」 再生

 2015年11月26日現在で、高木教育センターとして投稿した動画の再生回数の合計が38万回を越えた。ビックリしている。

アメブロ 「受験生」 ランキング 「1位」

本日現在、日本最大級のブログサイトのアメブロで「受験生」ランキング1位となっています。驚いた!

塾生が、 「京医」、「阪医」、「名医」 に合格

  通塾生、通信生の合計で京都大学「医学部」、大阪大学「医学部」、名古屋大学「医学部」などに合格した。指導していた私が驚愕。

  やっぱり、私が率先垂範したからかな。

  • 京大を7回受けて成績開示した(京大英語8割、数学7割)研究した。

  • 英検1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級合格。

  • 河合塾学園、名古屋外国語専門学校などで講師経験。

  • アメリカの公立中学校で教師経験あり。

  • 「英語の資格を取ろう」(法学書院)に紹介された。

  • 通信生は北海道から九州まで広がった。毎日、仕事が楽しくて仕方ない。やる気満々な、才能があり、性格の良い生徒が大半なので、こちらも力が入る。

    企業秘密などないので、私が指導している子の特徴だけど

  • 何よりも勉強を優先する。

  • ファッション、異性、趣味、生徒会など、勉強以外のものを優先する子は受験には向きません。

  • 寝て、食べて、風呂に入る以外は勉強。

  • 気晴らしは必要だけれど、基本的には全ての時間とエネルギーを勉強に向ける。

      灘やラ・サールの生徒と競争するわけだ。それだけの覚悟があるなら、高校の授業と無関係に予習に励まなければならない。高校2年生までに全範囲を終了させる。そして、高校3年生は赤本などの過去問の練習に向ける。

      当然、数学中心に疑問がでる。英語の添削も必要になる。独学では客観的な評価ができず独善的な勉強になってしまいがちだからだ。家庭学習中の質問に急いでアドバイスが必要な場合も多い。

      そこで、私は家庭学習中の疑問はメールや写メで答える。研究し尽くした「数学」の旧帝中心の重要問題や類題を提供する。書いてしまうと、これだけ。しかし、誰にでもできるわけではないよ。

      アイドルとかスポーツの話題なら動画もブログも見る人がいっぱいいるだろう。まさか、「受験勉強」というテーマでこんなに多くの人が動画やブログを見てくれるなんて予想していなかった。嬉しい。

      私は自分を信用していない。

      客観的な事実がないと、我田引水な話になりがちだ。だから、上記のような Youtube の再生回数やアメブロのランキングというデータが出てくると

    「私の動画や文章は何か人々を引きつける力があるのかも」

     と思ってしまう。名古屋の大規模塾の40人の講師の中で、生徒アンケートをとっても2番人気だったことがある。私の語り口には何かしら人にとって有益な話か、心地よい響きがあるのかもしれない。

      私は塾生の子に説教などしないよ。先に書いた塾生の子の特徴というのは、私が指導したからではなくて、もともとそういう子たちなんだ。賞賛しているわけではない。優秀な理系女子は、自分より上と判断する男子以外は視野に入ってない。

      自分が上位の1%以内なのだから、99%の男子を「失格」と公言してはばからない(私の前では)。だから、Bランク以下の学校の男子から告白されたりすると、ニッコリ笑って

    「ふざけんじゃねぇ。見くびるな!」

      くらいに思っているフシがある。怖いでしょ(笑)。先生にも容赦ない。

    「あの先生は、京大受けたら絶対に落ちる!」

     と言いながら内職に励んでいる。嫌なタイプでしょ。でも、自分もイヤなタイプの高校生だったから通じるところがあるのだろう。

     こういう話しは、私が若い頃に流行った「スポ根」仕立ての物語に脚色することはできる。お涙ものに書き換えることも出来る。実際、私は悔し涙を流したこともある。勉強しすぎて倒れて入院したこともある。

      しかし、そんな話はダサい。私の美学に合わない。だから、授業のときはドライに語る。事実のみを語る。主観を入れたくない。主役は生徒たちであって、私は応援団にすぎないのだ。

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