「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~

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前話: 「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~

「えっ!」


終わった。


本当にまた、終わってしまった。


と思ったら、


「いや、元からだな。」


と、ボソボソとつぶやいて解決。


本当に心臓に悪いから、やめてください。


と、心から思った。




その後、先生は「無脳症はハッキリした原因がないから、繰り返すなんてめったにないから!」と励ましてくれた。


でも当事者は、「めったにない」ことを経験すると、


「また起こるかもしれない」


と、普通に思えてしまう。


きっと、似た経験をした人はみんな、


生まれる日まで、不安を抱き続けているのだと思う。


まだあと10か月もある。長い。


心がもつか心配。




妊娠340日目
サンタさん、赤ちゃんをください。



「怖い夢は見ません。」 


「こわいゆめはみません。」


「良い夢だけを見ます。」 


「いいゆめだけをみます。」


そうたろうリクエストによる、毎晩のおまじない。




「ねえハナ。


赤ちゃんまだ戻ってこないの?


遅いねー。12月くらいかなー。」


そうたろうのハの字になった眉毛は、困惑にも苛立ちにも見える。




「サンタさんがお空から連れてくるのかなー。」


子どもにとっての神様は、サンタさんなんだと実感する。


「赤ちゃん帰ってきたかもしれないよ!」って、早く教えてあげたい。


でも、万が一のことを考えて、まだ言えない。


もう、ガッカリさせられない。




「サンタさん、赤ちゃんをください。」


そうたろうは少し暑いのか、毛布をはらい、決め声でおねだりをした。




「まだ3月だよ。」


寝室を覗き込んでいた、はんちゃんが淡白に言った。


そうたろうは、ササッと、毛布をかぶった。




妊娠343日目
くねくね



「そうたろう、大事な話がある。こっちに座りなさい。」


はんちゃんは、威厳を漂わせた。


お父さんコント風に。




「そうたろう。


君は、もうすぐお兄ちゃんになる。」




え?


え?


ニヤニヤ


ニヤニヤ


くねくね


くねくね


喜びと、動揺のコラボレーション。


ドラマや映画のワンシーンのような喜び方を想像していたけど、これがリアル。


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