第11話:ダライ・ラマが連れて来てくれた理想の結婚相手

前話: 第10話:インドで知ったヨガの本当の意味
次話: 第12話:幸せな結婚をするための秘訣

思い描いた人を引き寄せた!

インドに来て4年たったころ、人生を共にする伴侶について、思い描いていた。

そして、自分の理想とする男性像をノートに書き出してみた。

それは100個以上にもなった。


いつも、なんとなく出会って、知り合っていくうちに、やっぱり違った・・・ということが多かったので、今度は、しっかりと理想像を書き出しておきたかったのだ。


そんなものを書いたこともすっかり忘れた頃。


哲学を学んでいたアシュラムで、ある人と出会った。


最初彼を見たとき、「あれ?日本人かな?後で話しかけてみよう」と思った。


クラスが終わった後、たまたま彼とまた出くわしたので、聞いてみた。

「どちらからですか?」

「シッキムです」


以前、インドで仲良くなった、マニプール州出身の友達が、日本人みたいな顔をしていたので、納得した。


私も、電車に乗っていると、「あなたは、アッサムから来たの?」と聞かれたことがある。


インドの北東地域は、みんな日本人に似た顔をしているのだ。



彼は、クラスの後、いつも私に話しかけてくるようになった。



数日後、彼にこう聞かれた。

「君、仏教徒?」

「そうだよ」

「僕も」

70人の生徒がほとんどヒンドゥー教だった中、彼と私だけ仏教徒だったことに驚いた。


実は、このアシュラムに来る前、私は、「たまたま」仏教徒になっていた。


それは、世界中の人が知っている、ある有名な人との出会いがきっかけだった。


その有名な人とはー


ダライ・ラマ法王である。



私は、ダラムサラという所で、インドのクラシックボーカルを学んでいた。

あと数日で、その街を去ろうとしてた頃、知り合った人に、

「ダライ・ラマ法王様がちょうど講義をされるらしいよ」と聞いた。


事前に、パスポートを持って登録に行き、許可証をもらって、3日間の講義に参加した。


いろんな国から大勢の人々が集まっていて、世界各国の主要な言語での通訳がラジオで聞けた。

個人で、ラジオを買って、イヤホンから聞くという方法。


講義の最初の日、列に並んでいるときに知り合ったフランス人女性と仲良くなり、3日間、ずっといろんなことを教えてくれた。


「仏教徒になれば、ダライ・ラマ法王様から、マントラをいただけるのよ」

とフランス人女性は言った。


私は一生無宗教だと思っていたが、ダライ・ラマ法王にお会いできるなんてチャンスは滅多にないことだと思い、仏教徒になると決めた。

それに、日本は仏教国だし、特に抵抗はなかったのだ。


あとで、哲学のアシュラムの同級生に

「師に会い、その師からマントラを授かることができれば、もう人生ですべきことはない、と言われている」と聞いた。



哲学のアシュラムでも、ヴェーダ聖典を毎日読誦するので、多くのマントラを覚えることができた。




そういう成り行きがあり、私は「たまたま」仏教徒になっていたのだ。



それで、哲学のアシュラムで知り合った、その仏教徒の彼とは、お互いに意識するようになっていった。



ふと、1年前に書いた「理想の男性の条件」を書いたノートを見てみた。

すっかり書いたことさえ忘れていたのだが、驚くべきことに、彼は、ほとんどその条件に当てはまっていたのだ。



きっと、ダライ・ラマ法王が連れて来てくれた相手だと思った。



しかし、アシュラムでは、男女の会話が禁止されていたので、私たちはこっそりコミュニケーションを取らなければならなかった。


ノートに手紙を挟んでこっそり渡したり、講義の録音をしたものを渡すようなフリをして、相手へのメッセージを録音し渡したりした。



そんな大昔のようなラブストーリーには、まるで中学時代に戻ったような新鮮さがあった。


先生が目を光らせる中、コミュニケーションは続いた。


でも、実は、先生も、同級生たちもみんな気づいていたようだ。




ある日、一緒にイベントの準備をしていたときのこと。

彼は、「僕たちは、好き合ってるでしょ?だから、当然、将来は結婚するよね?それで・・・」

と当然のように言うので、心底驚いた。



日本では、何年も同棲したにも関わらず、結婚するかどうか分からないということも多い。


インドに数年住んで分かったことだが、彼らには、ほとんど恋愛期間というのがなくて、いきなり「結婚前提」で付き合う。



彼は「コースが終わったら、実家に連れて行きたい」と言って、


「2人の写真を撮って、手紙で実家に送りたい」と、朝日をこっそり二人で見に行き、写真を撮った。

用務員の人に写真を頼んだのだが、ハラハラドキドキしていた。


数時間後、彼は先生に呼び出された。「今朝、君が女子と二人きりで会っているのを見たものがいる。

このアシュラムでは、禁止されているのは知っているね?これが最後のチャンスだから、心しとくように」

と言われたらしい。



それでも、懲りずに私たちは、こっそりコミュニケーションを続けた。



そんなある日、彼のお母さんが突然亡くなったという知らせが入った。

コースが終わったら一緒に会いに行こうと言っていたのに・・・

会える前に亡くなってしまった。



休み時間、クラスルームに行くと、数人の友達がいた。


友達と話しながら、私は彼の気持ちを考えると出てくる涙をこらえるのに必死だった。


男子生徒が言った。

「彼は、今部屋で荷造りをしているけど、呼んでこようか?

でも、君が泣くことをコントロールできないなら、今は会わない方がいいと思う。

彼も今必死でこらえているから」


しばらくすると、彼がクラスルームにやってきた。

大勢の友達が彼を囲んで、励まそうとしていた。


しかし、とても驚いたのは、一番辛いはずの彼が、一番笑顔でいたことだ。


そして、心配する周りの友達に冗談を言ったりしている。


私は、別の女子生徒と

「あんなに強くはなれないね。私なら、きっと号泣してる」

と感心していた。


彼のことを、真の優しさを持つ、強い人だと、心から尊敬した。



後になって、このことを彼に話をした時、彼はこう言った。


「どんな時も、周りの人を気遣いなさい、ということは、母から教えてもらったんだ。

だから、あんな場合にこそ、母からの教えは大切にしないといけないだろう?」



著者の鶴田京子さんに人生相談を申込む

続きのストーリーはこちら!

第12話:幸せな結婚をするための秘訣

著者の鶴田京子さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。