フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第10話

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皆、シンとなって聞いていた。


玲子はボーイに指示を出し、代わりの衣装を持ってこさせた。



ショーが終わると私は気が抜けたようにトイレの個室にしゃがみ込んだ。


なぜか悔し涙が出た。



本音は欲しかった。


指名がもっと欲しかった。


どんどん指名を取って時給を上げたかった。

それからここでの地位も。


いつのまにか、私はこの店で野心を隠せなくなっていた。



私は幼い頃から負けず嫌いなところがあった。


でも目立ちたくない気持ちが勝っていた。


名指しで褒められるレベルまではあえていかないようにしていた。


人と争うことはもっと嫌いだったから。

普通で平穏な生活を壊したくなかったから。




でも、すでに私はここにいる以上普通ではないのだ。


私の抑えてきた野心が暴れだしたのはそのせいだ。


たった200円の時給アップのために飯島からの指名が欲しかった。


忘れていた。

自分がこんなに欲張りだったなんて。



ドアがノックされた。

私は涙を拭き 「はい」と返事した。


「杏、上を目指す気持ちは大切よ。この世界では欲がなきゃ勝てない」

玲子の声だった。


「でも、それは皆同じ。聞いたことあるでしょ?イズミのこと。

あの子は体張って指名取ってるのよ。この意味わかるよね?

入店して半年でベスト10入りしたのは簡単なことじゃない。たとえたった1人の客だってね。

ぽっと出のアナタに客を奪われることは彼女にとっては見過ごせないことなの」


私は涙を拭いた。

それはそうだ。


「まあ、気持ちが落ち着いたら出てきなさい。」



そう言うとヒールをカツカツ鳴らして玲子は去っていった。


私はすぐ立ち上がりドアを開けた。


佐々木が立っていた。

「お、復活したか。なかなか骨のあるやつじゃんお前。

んじゃ早速ヘルプついてもらおっか」


佐々木は馴れ馴れしく私の背中を押した。

嫌なので足早に歩いた。


歩いた先でハッとした。

飯島とイズミが座っていた。


なんで…

動揺を隠せないまま、2人の向かいの椅子に座った。


飯島が照れくさそうにイズミを見つめながら

「いやね、杏ちゃんこいつ勝手なんだよ。

やっぱり僕の隣が1番居心地いいなんて言ってさ」


どうやら元のサヤに収まったらしい。


私はそうですかと言って自分のグラスに水を入れた。

イズミは別人のように満面の笑顔で


「はい、杏ちゃん乾杯〜」と言って飯島と共にグラスを合わせてきた。


意味深な視線を交わし合い話す2人を

私はじっと見ていた。

漠然とだが分かったことがある。

飯島は私をイズミへの当てつけに使ったのだ。


最初から乗り換える気なんかなかった。


それから2人の間に何かがあったのだろう。


イズミにとって既に私は自分の行く先を阻む存在ではなくなった。

それは勝ち誇ったような微笑みが物語っていた。


アンタはただの盛り上げ役

これに懲りてもう人の客に手を出さないことね


彼女の目は時折私にそう語りかけてきた。




帰りの終電車に揺られながら

私は心の中で誓った。


もう2度と人の客なんか欲しがらない。


それどころか自分の客で手一杯になってやる。

そうだ


いつか自分の客でこの店をいっぱいにしてやる。


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