私の宝石物語〜ALEXANDRITE編〜

著者: Asaka Misuzu

アレキサンドライト、という宝石がある。


太陽光のもとではエメラルドのようなグリーンに。

夜の白熱灯や燭の光のもとではルビーのような赤に。


光によって石の色が変化するその石は

宝石の王様、とも称されている。



2,000年のある日、

1本の電話がきた。


滅多に家の電話って取らないのだけれど

(そもそも家電にかかってくることも少ないが)

その日はなぜか、電話に出た。


営業の電話だった。


『出なきゃよかった・・・。』


しかし、出た以上

最低限の礼儀は保とう、と受話器を持ったまま

相手の言葉を待つ。


妙に軽いトークの男だった。


最初は何を売りつけられるんだろう?と

言葉少なに警戒心バリバリで聞いていると



『宝石に興味はありますか?』


たしか

そんな質問だったと思う。

その時からちょっと私の姿勢が変わった。


なぜならば・・・



ちょうど

宝石を買おうかな

って思ってたからだ。




高校生の時にバスケットボール部に入った。

当時の顧問に云われたコトバの数々は

今もなお、私の胸に深く刻まれている。

その中の一つに


「本物を持て」というのがある。


高校時代はただ単にイミテーションを持つな、と受け取ったが

後々、そのコトバは色々な場面で私の判断材料となっている。


本物って何だろう?


って当時の私に

たった一つだけ思い浮かんだもの・・・。


それが宝石だった。


テレビCMで

『ダイアモンドは永遠に』

『ダイアモンドは永遠の輝き』


このフレーズが頭の片隅に刻まれていたからかもしれない。



教員採用試験に合格し、

大学卒業後、すぐに県内の公立高校に勤め始めた。


最初の赴任校では臨時で週に3回、

授業を手伝ってくださっていた女性教諭がいて。

その方に料理や観劇やファッション、メイク…等々

教員以外の世界のことを沢山教えていただいた。



ある時、ひょんなことから宝石の話になった。


「私、宝石鑑定士の資格持っているのよ。

若いころ、宝石が大好きでね~。

ジュエリーデザイナーになろうって思ってたこともあるのよ。」


そんな職業があったんだ!

教員以外の就職活動を一つもしていない私にはとても新鮮な響きだった。


確かに

ドラマなんかで固めで覗く小さなルーペで

宝石を吟味しているシーンが有った!と思い出す。

それが宝石鑑定士、の仕事の一部なのだということを知った。


誰もが魅了される美しい宝石と

毎日触れ合っていたらどんなに楽しいだろう。


今度、生まれ変わったら

宝石鑑定士かジュエリーデザイナーになろうって思った。


その後、

海外旅行に行く度に

宝石の原産国では宝石屋を訪れ

自分がピン!とくる宝石を購入していた。


本物を持てる自分、というものが

なんだか大人になったような気がしてすごく嬉しかった。

続く

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