フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第23話

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母親の顔を思い出していた。


目尻や口元の細かい皺のある顔は常に苦労と疲労が滲んでいた。


母の積み重ねてきた歳月の証だと思ってきた。




「玲子は特別な女だよ。普通の女じゃない」


佐々木の言葉は私の胸に突き刺さった。




それは、あなたの特別でもあるから?




車体が大きく揺れた。


佐々木の携帯電話が鳴る。



「おう、どうした?…俺?ああ帰るわ。今夜疲れてんだ…じゃな」



玲子さんだろうなと直感的に思った。



佐々木は電話を切ると再びスピードを出した。




繁華街を超えまた別の繁華街へと突き進む。

繁華街と繁華街の間には束の間の闇があった。

視界の端で何駅もの駅前を通り過ぎるのを見た。





一体どこへ向かっているんだろう。



でも私の中の警戒心はどこか忘れ去られたままだった。

なぜかシートに身を沈めているのが心地よかった。



あの夜、佐々木に助けられた時の

あの背中の温もりを思い起こすからだ。





私はこの時、既に

佐々木に身を任せる気でいたのかもしれない。





見たこともない歓楽街を通り過ぎると


ギラギラとしたネオンがなくなったかわりに



趣味の悪い看板が目に付いた。




そこは分かりやすいくらいの


ラブホテル街だった。





佐々木は何食わぬ顔でハンドルを握っている。


ある一角にある駐車場で車が停まった。


私は、不思議と落ち着いていた。



ただ、こうなることを予感していたかのような


諦めにも似た気持ちと、これから起こることへの不安は


確かにあった。




幼き日の母の言葉や、中学生の時の苦い記憶が蘇る。




既に降りた佐々木は、私がいつまでも降りないので


助手席に周り、ドアを開けた。




「何だよ、お前」



私が顔を上げると、佐々木はプッと笑って



「あれ〜?もしかしてお前さ、俺とこのまま

  ホテルにでもしけこむかと思ってるだろ」



「そ、そうじゃないんですか?」



「それも、アリかな〜〜と思ってたけど

   お前、なんか辛気臭えしよ、今はやる気失せたわ」



佐々木は素早くタバコに火をつける。


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