フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第23話

2 / 4 ページ

前話: フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第22話
次話: フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第24話


母親の顔を思い出していた。


目尻や口元の細かい皺のある顔は常に苦労と疲労が滲んでいた。


母の積み重ねてきた歳月の証だと思ってきた。




「玲子は特別な女だよ。普通の女じゃない」


佐々木の言葉は私の胸に突き刺さった。




それは、あなたの特別でもあるから?




車体が大きく揺れた。


佐々木の携帯電話が鳴る。



「おう、どうした?…俺?ああ帰るわ。今夜疲れてんだ…じゃな」



玲子さんだろうなと直感的に思った。



佐々木は電話を切ると再びスピードを出した。




繁華街を超えまた別の繁華街へと突き進む。

繁華街と繁華街の間には束の間の闇があった。

視界の端で何駅もの駅前を通り過ぎるのを見た。





一体どこへ向かっているんだろう。



でも私の中の警戒心はどこか忘れ去られたままだった。

なぜかシートに身を沈めているのが心地よかった。



あの夜、佐々木に助けられた時の

あの背中の温もりを思い起こすからだ。





私はこの時、既に

佐々木に身を任せる気でいたのかもしれない。





見たこともない歓楽街を通り過ぎると


ギラギラとしたネオンがなくなったかわりに



趣味の悪い看板が目に付いた。




そこは分かりやすいくらいの


ラブホテル街だった。





佐々木は何食わぬ顔でハンドルを握っている。


ある一角にある駐車場で車が停まった。


私は、不思議と落ち着いていた。



ただ、こうなることを予感していたかのような


諦めにも似た気持ちと、これから起こることへの不安は


確かにあった。




幼き日の母の言葉や、中学生の時の苦い記憶が蘇る。




既に降りた佐々木は、私がいつまでも降りないので


助手席に周り、ドアを開けた。




「何だよ、お前」



私が顔を上げると、佐々木はプッと笑って



「あれ〜?もしかしてお前さ、俺とこのまま

  ホテルにでもしけこむかと思ってるだろ」



「そ、そうじゃないんですか?」



「それも、アリかな〜〜と思ってたけど

   お前、なんか辛気臭えしよ、今はやる気失せたわ」



佐々木は素早くタバコに火をつける。


著者のYoshida Maikoさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。