フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第24話

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天国と地獄

《ここまでのあらすじ》初めて読む方へ

普通の大学生だった桃子は、あることがきっかけでショーパブ「パテオ」でアルバイトをしている。野心に目覚めた桃子は少しずつ頭角を表し店の売れっ子へと上りつめていく。そんな最中、ある夜襲われかけた桃子を店のチーフマネージャーの佐々木が助ける。そして、その夜を境に桃子は佐々木への想いをハッキリと自覚するのだった。






佐々木はそれからも、週一度のペースで私を、あのカジノバーに連れて行った。


客とのアフターに差し支えないようにと、佐々木は前々日くらいに声を掛けてきた。


私は店をあがると真っ先に、一本先の交差点付近で横付けしている佐々木の車に乗り込むのだった。


カジノも楽しいが、ゲーム中はお互いそっちに気をとられるので、私はその後2人でまったりと飲む時間の方が好きだった。




佐々木の話は面白く聞いていて飽きなかった。


彼は決しておしゃべりではないが、絶妙な間といい、人を笑わせるセンスと才能に長けた男だった。


聞いていると次から次へと笑いがこみ上げてくるのだ。


それはパテオの中のことだったり、世間話だったり


私はくだらない話でバカ笑いするのは、あまり好きではなかったが

佐々木の話を聞いていると、自分でも意外なくらい大きな声で笑ってしまうことがあった。


佐々木は人をネタにして少々口は悪いが、露骨にその人を否定したりけなしたりはしなかった。


もしかすると私は、ずっとこの口の悪さだけで彼の人格を判断してきたのかもしれない。


おかしなものだ。


ある時期は、その言動全てが粗雑で荒っぽい佐々木をヤクザじゃないかとさえと思っていたというのに。




ずるいな…





1番、嫌な奴だと思っていた奴が


ちょっと良いとこ見せると


今までが全部、私の誤解だったってくらいにいい奴に見えるんだから




私は、思った。





もしかして




パテオで働くことが定められた、運命のあの夜




佐々木は本当に私の携帯だけを拾ったのかもしれない。


財布はきっと、誰かを別の人間の手によって


盗まれたんだ。




だって


佐々木は…


果たしてそんなことができる人間なのだろうか?

罪もない善良な学生から財布を奪うだなんてことが…



あの人は


そんなことできないんじゃないか








私は、改めて部屋の鏡の中で突っ立っている女を見た。


その女は下着姿に靴下だけ着用し、ちょっとマヌケな姿なのにもかかわらず


顔は何か思いつめたかのように、熱のこもった目を開いて

ぼんやりとしていた。


これは、誰かに想いを寄せている女の顔に違いなかった。


こんな顔の友人の顔を、これまでにいくつも見てきた。

あくまで、他人事としてだが。


そんな熱病に侵された顔を見ながら


私はこうなることはない

と思っていた。




でも今こうして

目の前にいる女はまんまと、その1人になった。



それは紛れもなく私だった。






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