フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第29話
私は前から、それを知っていた。
私と飲みに行った翌日
安田は私の指示通りのことを忠実にやっておいてくれた。
それから私は店のナンバー2のアヤが夢中になっているという
ホストがいる店へ顔を出すようになった。
そして、アヤの熱を上げているというホストを
彼女の目の前で指名した。
人一倍気性が激しく嫉妬深いアヤは、
私に対抗するかのように
信じられないくらいの高いボトルを開けまくった。
私もそれなりに応戦したが、金銭をかけて勝負するより
ホストのまんざらでもなさそうな私への態度が一番
アヤへのダメージだということを知っていた。
私がホストにタバコの火をつけさせ
落としたライターを拾わせ
上目遣いでお礼を言い、腕に絡みつくと
ホストは一瞬デレっとした顔をした。
私はその格好のまま、アヤに視線を送った。
アヤは嫉妬に狂った目で、私を睨み続けていた。
その夜、彼女がホストの気を引くために
店で一番高いボトルを注文したのは言うまでもない。
成果は1ヶ月あまりで出た。
アヤはホストに入れこむあまり
毎晩ホスト通いで、まともに睡眠もとっていないらしく
いつも顔色が悪く、機嫌が悪かった。
ボーイを足で蹴っている姿や、女の子に露骨に嫌味を言ったり
その行動はエスカレートして言った。
一晩に100万円使ったと息巻く姿を
目にしたこともあるくらい
アヤはホストに入れあげ、ついには借金沙汰になっている
と言う噂があちこちで絶えなかった。
食事も不規則で偏っていて、酒ばかり飲んで
睡眠をとらないアヤは
不健康そのものだった。
ショーの最中倒れたこともあるし
早退もするようになった。
客の間でも評判が落ちるのに、そう時間はかからなかった。
その結果アヤと私は逆転し
私は店のナンバー2に昇格した。
アヤは、その後どんどん人気が下がり
半年も経たずにショーメンバーを降ろされることになった。
私は、勿論これでは満足しなかった。
アヤはもともと、運と色仕掛けでここまで這い上がったホステスだ。
これに甘んじてはいけない。
まだ、手強い相手がいるんだから。
そう、ミサキが去って以来
ずっとナンバーワンの座に君臨しているルイだ。
私は前から、ミサキのカリスマ性とルイとじゃ
レベルが違うと思っていた。
ミサキはホステスにならなかったら女優にでもなっていたと
思えるくらい華のある人で私は新人の頃からずっと憧れてきた。
それに引き換えルイは、美女でもなくオーラもなかった。
ただ、男性客の心を読み
聞き上手な彼女は上手く盛り上げ、気持ち良い
時間を作る天才だった。
そして菩薩のような、聖母のような表情と振る舞いが男性客を
包み込み癒すのだろう。
それはホステスとして最強の武器だと、当時は分からないでいた。
ナンバーワンたるもの美しさとオーラが不可欠なのに
なぜ、どちらもないパッとしないルイがこの店のトップなのか
それが私のルイに対する気持ちだった。
ショーの時もそうだった。
スレンダーだったミサキの可憐で華麗な舞が好きだったのに
ルイはその豊満な肉体を客に見せつけるかのような
挑発的なダンスをする。
しかも、体に無駄な肉も結構付いているので
どうしても動きが重たそうに見えてしまう。
雌牛を思わせるような体に、ショーの品性が失われる気さえしていた。
出るとこ出てればいいってわけじゃないのに
なぜ体重制限しないんだろう…
密かにそう思っていた。
例のホストの件で病み、痩せる一方のアヤと並んで舞台に立つと
ポッチャリが際立ち、凸凹コンビで滑稽にすら見えた。
そんなルイの人気がわずかに落ち始めたのも
アヤが降格してから間もない頃だった。
当時ルイは実年齢は28歳だった。
照明の下で肌の衰えが露わになることがあった。
近くで見ると薄っすらシワもあるし肌荒れもある。
アヤも夜遊びに不摂生で顔中ニキビが目立ち荒れ放題。
著者のYoshida Maikoさんに人生相談を申込む
著者のYoshida Maikoさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます