フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第29話
玲子は自嘲気味に微笑んで言った。
「じゃ、お邪魔したました」
背を向きかけた玲子がもう一度振り向き言った。
「そう言えば、新しく入ったボーイくんと仲良しなのね」
そう言うと、玲子は微笑を残して行ってしまった。
私は玲子が出て行ったドアをしばらく見ていた。
フンだ、目ざとい女
私は着替え終わると鏡の前に立った。
とびきりの笑顔の自分が視界に入って来た
ついにやった。
ついに、ナンバーワンだ。
ついでに言うと、もう知っていたけど。
ルイがやめたことも安田から聞いていた。
ルイが辞めたのは
年齢のせいと、プライドが許せなかったからだろう。
あのキャラクターだけじゃ
人気低下をカバーしきれないと分かったんだろう。
確かにホッとできる何かを持っている人だったけど
男たちは美しい女に視覚で恋し、癒されたいのだ。
2ヶ月前、私は安田に朝一番に誰にもバレずに
パテオの照明を違うタイプのものに取り替えて欲しいと頼んだ。
全取っ替えだとバレてしまうから
少しずつお願いね
あ、あとアヤさんとルイさんのよく座る席には
1つ多くつけて
それからステージのライトも変えてくれる?
これも他のと同じ
顔がハッキリ鮮明に見えるタイプのね
安田は言われた通り1週間以上かけて実行してくれた。
ライトは、若い綺麗な肌を鮮明に映し出し
引き立たせる一方で
荒れて衰えた肌には
容赦なく欠点として映し出すタイプのものだった。
彼女たちより若く、肌には気をつけている私の方が
有利に決まっている。
鏡の中で私はこぼれそうな笑いを噛み殺した。
そしてまだ終わりじゃない。
本番はこれからだ。
私はこの店の完全なナンバーワンになるんだ。
頂点に立つまで
私は終わらない。
他のホステスが私に挨拶をして次々と更衣室に入ってくる中
いつの間にか笑顔が消え失せ、私は誰かを睨みつけるように
自分を見つめていた。
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