フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第30話

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前話: フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第29話

再びソファーに座った時

右側のホステスのスカートの裾をわずかに踏んでしまったので

腰を上げると、そのホステスが恐縮したように

あ、あの!す…すみませんでした!

と頭を下げた。


その怯えたような表情を見て私は

ここでの自らの地位を改めて確信するとともに

感じたことにない恍惚に浸った。




その夜は、指名が5本だった。

まずまずと言ったところだ。

着替えていると取り巻きたちがやってきた。

3人はいずれもパテオの人気ベスト10に入るホステスで

うち1人のナナというホステスは私はより先輩だったが

昔から気取らず新人にも威張らない人だった。


ナナたち3人は、ちょっと媚びるような口調で言った。



「ねえ!杏さ〜ん、今夜も行くでしょ〜?」



「どっち?クラブ?それともホスト?」



私が鏡に向かって髪をときながら聞くと

ナナが申し訳なさそうに言った。


「それがさあ、カレシに今日は杏ちゃんと行くかもって言ったのにさ

  連絡取れなくて、店電話したら来てねえって言うんだよね」


他の2人が

「ええ!ちょーマジ、ヒドくないですか、それ」

「今夜もVIP入れてもらえると思ってた〜〜」


と口々に言う。


ナナのカレシは某クラブの支配人で

空いて入れば芸能人御用達のVIPに入れてくれた。

ちなみに私と一緒の時だけらしいが。


「おい、おめえらアタシに期待しすぎだっちゅーの」


ナナがおどけ顔で前かがみになって胸の谷間を強調する。


「ナナさん、それ古くないですかあ。」


2人がケラケラ笑う。

私もコートを羽織りながら苦笑した。

ナナは、さすがちょっと年上だけあって一昔前の

流行りとか会話にチョイチョイ入れてくるのだ。



「いいよ、ホスト行こっか」


私がそう言うと3人がはしゃいで喜んで見せた。


タクシーを降りるとまず、ファミレスで腹ごしらえし

化粧を直しホストクラブへ入店したのは深夜2時だった。



この歓楽街でもトップクラスの人気店だった。


ウィークデーなのに席がほぼ埋まっている。


ここに通ったきっかけは

元を辿ればアヤを陥れるためだったので

もう半年前になる。

最初はもちろん、たった1人で

しかもホストクラブ初体験でいくらホステスとして

多くのお客をこなして来た私とはいえ緊張した。


いつも、接客する側の人間だったので

こっちに話の花を持たせてくれ

絶妙なタイミングで気の利いた

合いの手を入れられたりする彼らに慣れるまで時間がかかった。


ホストは気に入られたい一心で

私を退屈させまいともてなしてくる。

調子にいいことを言って笑わせてみたり

タバコに視線を落としただけで

ライターの火をスタンバイしたり



この人たち売れたくて必死なんだ


最初は自分を見ているような錯覚を起こしそうだった

ただ慣れると、金の余ってる女性なら

ハマって当然な娯楽かもしれないと思えた。



禿げ頭に腹の出た亭主の

苦虫を噛み潰したような不機嫌な顔に話すより

一生懸命、話を聞いてくれ

オーバーなリアクションで会話を盛り上げてくれる

綺麗な若い男の方が何十倍もいいだろう。


そこへいくと私の客たちの気持ちもよくわかる。


ナナたちと遊びに行くようになったのは

トップになってからだ。



ある日突然

「杏ちゃん、ホスト行ってるんだって!?

ねえ!一度連れっててよ、お願〜い!」

とナナに頼まれたせいだ。




今では私がパテオのナンバーワンだということは

店中のホストが知っていた。

それまで以上に太い客として丁重に扱われていた。

もちろん私たちが一晩で落としていくお金に

期待しているからだ。


それぞれがお気に入りのホストを指名して隣に置き

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