死なないよ、死ぬまでは。

7 / 7 ページ

可愛い可愛い子供なんだよ!

会社で何があったかわからないけど

それでも自殺なんてすんな!

お前はお前のためだけに生きるんじゃない!

親のために生きろ!

産んでくれて

大切に育ててくれた親の為に生きろ!

例え辛くても、何があっても、敵だらけでも

親だけはずっと味方なんだよ!

どれだけ腐ってても親は子が心配なんだよ!

お前のことばっかり考えてんだよ!

死んだら、もう会えないだよ!

何考えてんだ!バカが!!

死んでも親を悲しませるんじゃない!

生きていたくなくても生きろ!

その子の家庭環境なんて知らないから偉そうなことなんて大声で言えないけど。

私がもう自殺を選択することはないだろう。誰よりも死にたいと願っていた私は、まだ生きている。親を悲しませたくないから、しばらく生きていく。障害を持った私を捨ててくれなかった、今でも大切に思ってくれている親を悲しませたくないから、生き続ける。自殺しない理由なんてそれだけで充分だろう。他に何がある。それ以上の理由がどこに存在する。

私は生きていく。

これからも不安は付きまとって消えないだろう。

歩いてみたいと思うこともあるだろう。

歯がゆい思いをすることもきっとあるだろう。

それでも、生きていく。

障害とともに生きていく。

だって、親を悲しませたくない。

私を産んでくれたんだ。

その親を悲しませるなんて、一番やってはいけないことだ。

誰だよ、自殺したがってたやつ。

ふざけんな、殺すぞ。

自分だけ楽になろうとすんな。

親を置き去りにするな。

お前の一番の理解者である親を軽く扱うな。

お前みたいなめんどくさいやつでも

あの親から産まれた大切な子供なんだよ。

本人はそう思っていなくても

親からしたらかけがえのない子供なんだよ。

ふざけんな。

ふざけんな。

何があっても親を悲しませるな。

障害があるからなんだってんだ。

辛いからってなんだってんだ。

自殺するくらいなら

不甲斐なくとも最低限生きろ。

親より先に死ぬやつなんてあるかよ。

親を踏みにじるような真似をするな。

生きろ。

死ぬくらいなら、生きろ。

死にたくても、生きろ。

生きてさえいれば、親は嬉しいんだ。

生きて証明しつづけろ。

あなたたちが手塩にかけて育ててくれた

子供はここにいますよって

生きてる限り証明しつづけろ!

私は歩いていかなければならない。たとえその足が動かなくとも。これから先どこまで続くかわからなくとも。死が私に寄り添っていても。不自由な、この身体とともに。障碍者として。社会にとけ込んでいかなければならない。

仄暗い私の視界を遮っていたもの。それは今も刻銘に私の下半分に、ここにある。使い慣れた、長年親しんだ車いすにのせて。視界はよくなったか、なんてそんなことはわからない。私が車いすを卒業する日なんてない。ずっと乗りつづけているさ。私はそう生きてきた。

障害で苦しくて、どれだけ悩み続けて、呆然としようとも、変わることはない。それも受け入れていかなければならない。私の足は動かないのだ。生きているのに、死んだように。上半身と下半身で、別の生き物みたいに感じていても。それが私なのだ。

ただひとつ、忘れてはならないもの。

こだわりがない私にも、唯一あるとすればこれだけだろう。

一人で悩んで苦しいと思っていた時にも親がいた。

障碍者になった息子でも愛してくれる親がいた。

私を見捨てず障害に立ち向かって支えてくれた親がいた。

こんな私にも親がいたんだ。

ずっとそばに、いたんだ。

その親を悲しませたくない。

それだけ。

ただ、それだけ。

視界は悪くたっていいさ。それでも私は生きている。

どうしようもなくとも、生きている。

死なないよ、死ぬまでは。

著者の伊藤 雄一郎さんに人生相談を申込む

著者の伊藤 雄一郎さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。