元獣医アーティストが一年かけて地球を一周してアート活動してくるまでの話2

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第二章 1ヵ月のNY滞在でワークショップ開催して新聞に紹介されギャラリーに作品を預けるためにやってきたこと

2017年1月11日から1年4か月に渡る地球一周アートの旅に出ています。

3月22日現在、フィンランドの西の町、トゥルクでのアーティスト・イン・レジデンスに参加中です。


1月     ロサンゼルス
2月     ニューヨーク
3~5月   フィンランド(トゥルク) → イマココ
4~6月   ルーマニア
9、10月   フィンランド(マンッタ)
11~翌年5月 上海


さて、2月15日から3月15日までの1ヶ月間、ニューヨークのブルックリンに滞在していました。

ちょうど3月上旬にはアーモリーショーが開催されており、アートフェアも楽しむことができたとともに、現地の美術学校でのパブリックレクチャーにも多く参加してきました。


ニューヨークで具体的に達成できたことは

1)現地の小学校でアートプロジェクトSORAのワークショップを開催
2)ニューヨーク、ワシントンなど東海岸を中心に配布される日系新聞「週刊ニューヨーク生活」に活動の紹介記事が掲載

3)Lower East Side(LES)にあるギャラリーに作品を預けてくる

です。

いくつかのギャラリーにはArt Submissionのメールも送り、数件からは登録アーティスト?としてギャラリーに名前を残しておく、という返信をいただきました。


自分ガタリのStorys.jpには合わない話かもしれない。


でも、世界で活躍したいと筆をとるアーティストにとって、可能性の一つになるかもしれないと思い、ニューヨークで私がやってきたことをここに残しておこうと思います。

===

私がニューヨークで意識していたことは2点。

①取り扱ってくれるギャラリーを探すこと
②SORAプロジェクトの活動先を探すこと

私がニューヨークに来たのはこれが3回目。
初めて来たときは正直、マンハッタンがなんだかもよく分かっていなかったし、もちろん知り合いも誰もいなかった。その時から比べたら、知っていることも増えた。
何より、当時と比べたら作品の質は明らかに上がった。


作家にとって一番大切なことだ。


どれだけ英語が上手だって、どれほどプレゼンが上手にできたって、作品がそこに追いついていなければ、道を拓くことは絶対にできないから。


今回、上記の目標をもとに、私がやってきたことは2点。

①情報の整理と優先順位づけ
②売り込まないこと


ニューヨークに来るときはいつも使っている定宿がある。

Airbnbで見つけたところで、ブルックリンのFlatbushというところにあり、マンハッタンからは電車で2時間ほどかかりかなり遠いのだけど、空港まで車で迎えに来てくれるし何より安いのでいつも助かっていた。でも、今回は自分の活動を広げるために来ていたので、最初からアート関係者のお宅にお願いして泊まることにした。非常に親切にしてくださり、何よりたくさんの情報をいただけた。


①情報の整理と優先順位づけ

こちらに来てからいただいた情報をまずは全て調べ上げ、自分の中で優先順位をつけた。

人らもらう情報だけでなく、もちろん自身で調べた情報もある。

ロサンゼルスでは宿泊先でインターネットが使えなかったこともあり、ニューヨークの情報はすべて現地に来てから調べ上げた。いろんな人からいろんな情報をいただくけれど、中には美味しいサンドイッチやさんとか美しいガーデンなどの情報もある。

初めて来たときはニューヨーク全体を楽しみたかったので、自由の女神を見に行ったりジャズを聞いたり、セントラルパークを歩いたりしたが、今回はもちろん、現代アートに関わることを優先にする。

美術学校のパブリックレクチャーやアーモリーショーなどの日程、またニューヨークの美術館の多くにはFree day(任意の寄付で入れる日)があるので、それらをすべてスケジュールに入れる。

同時に、すべてをGoogle mapにスター付き登録しておく。

ニューヨークはロサンゼルスと比べてエリアが狭いので、Google mapに登録しておくとまとめて行けるエリアがだいぶはっきりする。

ギャラリーのオープンはだいたい水~土曜。月曜はクローズなところが多いので、人に会ったりいつでも開いているようなところは月曜に行く。


ニューヨークは見どころが多い。

一ヶ月の滞在であっても、あっという間に終わってしまう。

なるべく見逃しなく吸収できるものは全て吸収しておきたかったので、毎日のように情報を更新し、事前にスケジュール立ててまわる。

ギャラリーの多いエリアもチェルシー、LES、ブルックリン、SOHOと複数あり、特にチェルシーとLESは非常にギャラリーが多いので、丁寧に見てまわっていると、とても1日では回り切れない。疲れ始めると作品を丁寧に見られなくなるので、ギャラリーめぐりは最初から一日数時間程度と決めて見て回った。


この辺りの情報はいずれ別のブログでまとめて紹介しようと思う。


②売り込まないこと

取り扱ってくれるギャラリーを探すという目的と反してそうだが、今回は「売り込まない」ことを意識していた。世界中からアーティストが集まる町。

ニューヨークのギャラリーは売り込まれることに慣れている、というか飽きているはずだ。

売れるかどうかも分からない無名のアーティストをいきなり取り扱うようなリスクを冒すとはとても思えない。

とはいえ、私も売り込んだことがないわけじゃない。

初めての時も2度目の渡米の時も、ポートフォリオをもってギャラリーをまわっていたし、今回もどこに行くときでもカバンにはポートフォリオが入っていた。実際、そのおかげで2度目の渡米の時に出会ったブルックリンのギャラリーさんからは、作品を置いてくれるという話をもらっており、今回はそこに作品を預けるつもりで、額装作品を1点もってきていた。


しかし、その話をしたのは1年以上前のこと。


ギャラリーは一度移転した後、現在はクローズして別の場所にオープンする機会を待っているとのことだった。日本を出る前に確認しておけばよかったとか、話が出てすぐに作品を送っておけばよかったとか思うけれど、すべては後の祭り。


この後のフィンランドに額装作品をもっていくのもなかなかきつい。

荷物を減らしたいという現実的な問題もあって、どこかのギャラリーに作品を預ける必要があった。


しかしもちろん、アテはどこにもなかった。とにかくギャラリーをまわり、すぐに預かってくれそうなところが見つかるといい、と思って歩いていた。

結論から言うと、幸いにも作品を預かってくれるギャラリーが見つかった。

フィンランドに飛ぶまさにその日の午前中にギャラリーを訪れ、ニューヨークでつくった作品2点を合わせた合計3点を預けてきた。


売り込まない代わりに意識したことは3点。
1)仲良くなる
2)興味をもってもらう
3)自分が選ぶ


1)仲良くなる

ギャラリーの関係者だけでなく、オープニングに訪れているお客さん、出会った人たちとまずは「仲良くなる」ことを意識した。人と出会えたというのはそれだけで一種のチャンスだ。その人を通じ、どんな出会いが広がるか分からない。すぐにポートフォリオを見せると、その出会いのゲートが閉じてしまう。

相手の話を聞く、相手の魅力について伝える。

アメリカでは極端な褒め言葉が普通だ。
Amazing! Wonderful! The best in the world!
こうして相手との距離を縮めていく。

縮まらなければ、それまでの縁だったっていうことだ。

2)興味をもってもらう

ちょっと話すとだいたい「あなたは何をしているの?」と聞かれる。

この時に一言で自分に興味をもってもらう、覚えてもらうキーワードをつくっておくといい。

私の場合は「元獣医のアーティスト」

これは全世界共通で珍しいと興味をもってもらいやすい。

自分の何が引きになっているか、まだ見つかっていない人は、日本でも海外でもいろんなキーワードを添えて伝えて、興味をもってもらえるポイントを見つけるといい。

私はもともとは「獣医でアートを処方している」という自己紹介をしていたけど、これはあまりにも分かりにくく、今も臨床医をやっていると誤解されるので、元獣医のアーティスト、と言い方を変えた。

今でも本当は自分のことを「アートを処方する獣医」であると思っているけれど、伝わらない言い方にこだわるよりも、やりたいことがやりやすくなる方法を選ぶことにしたというわけだ。

獣医からアーティストに転向するというのは、やはり珍しいパターンなので、だいたいここでどんな作品をつくっているかを聞かれる。


そこで初めて作品を見せるのだ。


とはいえポートフォリオをがっちり見るのは重いような場面もあるので、名刺だけを見せたり、iPhoneの中の画像だけを見せたり、見せる方法はその場に応じて選んでいる。

私はiPhoneケースやいつも持ち歩いている小物入れに作品デザインが入っているので、それだけをサラっと見せることもある。どこにチャンスが転がっているか分からないので、自分の作品をいつでも見に付けておくのは大事なこと。

もちろん名刺でもいい。というか、名刺を出すとだいたい相手も名刺をくれるので、名刺がお勧めだ。


今回、私はロサンゼルスで名刺を配り過ぎてニューヨークに来る前に名刺がすべてなくなってしまっていた。だから、仲良くなった人には名刺をもらうかFacebookでつながるかしてコンタクトを取れるようにしておいた。


さて、ギャラリーやアート関係者と話す時には、自分の作品の切り口を複数もっておくといいんじゃないかと私は思っている。


私の場合には

①抽象画

②医療(メディカル、サイエンス)

③日本・日本人・墨

④ドローイング

⑤ストリートアート

⑥インスタレーション・立体

⑦インタラクティブ(体験型)

など。


つまり、相手がこの中のどれかに興味をもっているようなら、それに寄せた話をするということだ。

逆にいえば、ギャラリーに売り込みをかける際も、この中のどれにも当てはまらないようなら売り込まないということ。ここで3)自分が選ぶ が出てくる。


3)自分が選ぶ

ところで、メールでギャラリーに売り込みをかけたことはあるだろうか?
メールで売り込みをかける場合は、タイトルに「Art Submission」と入れる。
ギャラリーによってはこういったサブミッションを受け付けていないとサイトに書かれているところもある。そういうところには出さない。

また、メール本文に作品画像を添付して送る。

私は実際に自分で訪れたことのあるギャラリーにしかSubmissionをしないので、メールを送るギャラリーの良かった点などを短く書き添えて送る。
文面は長い必要はない(むしろ短く伝えるほうがいいと思う)。

添付する作品は2~3点。私は引きのあるインスタレーションと売りやすそうな平面作品を送っている。インスタレーションを送るのは作家としての実力を分かりやすく示すためだ。

だけど、無名の作家のインスタレーションをいきなり扱ってくれるギャラリーはほとんどないはずだ。

チェルシーやLESのギャラリーをまわっても、ほとんどはキャンバス作品。
やはり飾りやすいし手入れもしやすいので、買うほうも買いやすいんだろう。

だから、ギャラリーに「これなら取り扱えるかも」と思ってもらえるように平面作品の写真も送っている。


昔、本当に無作為に行ったこともないギャラリーにメールしたことがあったけど、それは絶対にオススメしない。そういう自分の売り込みだけを考えたメールは相手にも伝わってしまうし、いい出会いにつなげることは難しいからだ。


ギャラリーにはそれぞれ、取り扱いのテイストがある。


フォトギャラリーにインスタレーションの写真を送っても無意味なように、どんなに素晴らしい作品でも、ギャラリーのテイストに合わなければピックアップされることはない。

だから、今では自身が訪れて、ここなら合いそうだと思うところにメールをしている。

また、ギャラリーのスタッフに話しかけることができたら、International artistのSubmissionを受け付けているかどうかを聞いてみるといい。新規アーティストは受け付けていないと言われることが多いが、たまにギャラリーオーナーのメールアドレスを教えてくれて、直接聞いてみたらいいよとアドバイスをくれるスタッフさんもいる。(ごくまれな話だけど一度だけあった)


ギャラリーは自分と一緒に戦ってくれる大切なパートナーだ。
自分の作品が大切ならばなおさら、どこでもいいわけがない。

アーティストとして立っている作家さんと話をすると「相手が自分を見つけたんだ」と言うことがある。見つけてもらうには活動をつづけていくしかないけれど、自分自身もパートナーを選んでいい。


私なら、自分の作品を好きで、一緒にがんばれるところがいいな^^

===

さて、具体的にどうなるか分からないので、ギャラリー名は伏せますが、私の作品を預かってくれたギャラリーさんはストリートアートを取り扱っているギャラリーさんでした。


私の作品も「ストリートアート」として見られていたということですね。


ニューヨークでつくった板描き作品は非常に気に入ってもらったんですが、額装のこちらの作品は「きれいだけど好きじゃない」とはっきり言われました。

それで2日で作り直したのがこちら。

赤い切り絵の上からボンドとアクリル絵の具を塗って下地をつくり、それからペンでドローイングしています。ところどころ、壁がほころびるように下地の赤が見えているので、作品としてもおもしろくなっています。

こちらを持って行ったところ、非常に気に入ってくださり、預かってもらえることになりました。今後、グループ展があった時には参加させてほしいということと、金額は任せるがなるべく安く売ってほしいと頼んできています。また、売れたとしても私にはマージンはいらないと言ってます^^


通常、ギャラリーで企画展をする場合はマージンは50%です。(有名ギャラリーだとギャラリーのマージンが60%以上になることもある)当然ギャラリーはそれが自分たちの収益になるので、なるべく高く売れたほうがいい。作家側としても画材費用は自身もちなので、そこで赤字が出ないようにしないといけない。

今回の私の作品は、額も板もいただきもの。

画材原価がほとんどかかっていません。

私は作品価値を時給換算しない主義なので(作品の質は時給に比例しないため)、ギャラリーに売り上げ分配の手間をかけさせるよりも、展示機会、売れればさらに作品を知ってもらう機会につながる、ということに賭けたわけです。

また、VISA的にもたぶん販売目的の品を置いてっちゃいけないはずなので笑。



ニューヨーク編ではHow to的なことをたくさん書きましたが、一番大切なことは「作品をつくる」ことです。どんなに仲良くなっても、作品が育ってなければ、取り扱われません。


逆に言えば、本当に作品が育っていれば、作品が次のチャンスをちゃんと引っ張ってくれると私は思っています^^

Keep doing!


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元獣医アーティストが一年かけて地球を一周してアート活動してくるまでの話3

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