鈴の音

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著者: 桐生 刹那

これは僕の小学3年生の頃である。


或る夏、僕は同級生の男子2人と共に度胸試しとして、

近所の神社へ肝試しに行く。


しかしそこは住宅街の隙間の進んだ先にあるかなり寂れた神社で、街灯の一つもない為、

一応危険がないかどうか、昼間に下見をする事になった。




「早く行くぞ!」


「早く来いよ、怜!」


「ハイハイ、分かったから。そんな急ぐなって」




住宅街の隙間にある小道を辿り、100段くらいあるそこそこ長い石段を駆け上っていく。

そして石段を越えた先にある5つの鳥居を潜れば、そこには寂れた神社のボロボロな境内がある。


鬱蒼と生い茂る林の隙間に埋もれて切り離されたような異質な空間に、

僕は来てしまったのだ。




「なんか気持ち悪いトコだなぁ」


「夜大丈夫なん?」


「知らん、まぁ何とかなるだろ」




神社の周辺や境内などをくまなく探索する友2人を横目に、

僕は境内のまだ座れるくらい綺麗な場所に腰を掛けてボーッとしていた。


それにしても、何故だろう?


この鬱蒼とした林も寂れて南京錠が掛けられた境内も気味が悪い筈なのに、

どこか落ち着くというか、懐かしいような感覚に囚われる。



暫くして、ようやく全てを探索し終えたのか、二人がつまらなそうな顔をして僕に駆け寄って来た。





「何も無ぇなー」


「チッ、つまんねーの」


「何もないなら、もう帰るか。じゃあ夜な」




そう言うと、二人は先に鳥居を潜って石段を駆け下りて行く。




「おーい!早く来いよ!!」


「はいはい、分かった」




僕は急かされながもマイペースにゆっくり歩き、一つ目の赤い鳥居を潜ろうとした。


その時、、、



チリーン、チリーン。


二回、背後から頭に響くような印象深い鈴の音がした。




「ん?」




あまりに印象的で不思議な鈴の音が気になって背後を振り返ると、

先程と変わらない寂れた神社の境内。


先程とは違い、空気が変わったような気がした。



僕は特に何があるワケでもなかったので首を傾げると同時に、気付いてしまった。

まだ石段を駆け下りる途中だった筈の二人の声と足音が聞こえない事に。


まるで耳を塞がれたような感覚に慌てて石段の方を向くと、そこにはもう既に別世界が広がっていた。






住宅街が見えていた下の景色は濃い霧に包まれて一切見えず、

少し長いくらいだった石段は気が遠くなる程に長く下まで続いている。


5つの鳥居はまるで石段をビッシリと囲うように、僕を閉じ込めて逃がさないかのように、

先の見えぬ石段の下まで連なっていた。



勿論友達の姿など、そこには存在しない。


あまりの突然の出来事に、流石の僕も一切対処が分からず、

ただただ途方に暮れて辺りをきょろきょろと見回す事しか出来なかった。




暫くすると、人一人が入るには狭過ぎる鳥居の隙間から、

顔に紙を貼り付けた巫女服の女が現れ、石段を上りきったあと僕の横を通り過ぎる。


僕が再び後ろを振り返えって境内の方を見てみると、女は神社の境内の前で手招きをしている。
ついて来いとでも言うのだろうか?



不信に思いながらも、あの巫女服の女について行けば帰れるかもしれないと、

僕はおそるおそる女の元へ行った

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