入社式で社長の前で答辞を読んだら恐怖に襲われて円形脱毛症になった話
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普通なら、新入社員が会社のために頑張るのは当然のことだし、この答辞を読んでもむしろこれから頑張ろうと身が奮い立つことだろう。
しかし、僕は全く逆の感情を抱いていた。
先輩が言っていた色々な噂を思い出したからだ。
もう何も考えられなくなり、流されるがままに入社式を迎えた。
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僕は社長の前に立った。
噛まないようにゆっくりと答辞を読み上げた。
改めて声に出して読むと、僕は自ら命を捧げることを宣言してしまったかのように感じた。
かくして僕の社会人生活がスタートした。
その生活はなかなかハードなものだった。
先輩に聞いた噂もあながち間違ってはなかった。
毎晩終電帰りは当たり前、ひどいときは終電で帰れず現場近くのネットカフェに泊まるという過酷な日々。
睡眠不足がたたって思考力も低下し、社員はただのロボットと化していた。
どこからともなく怒号が飛び交うのは日常茶飯事で、時には僕もターゲットにされた。
もちろん僕のできが悪くて怒られるなら仕方ないが、理不尽な怒られ方しかしなかったので辛かった。
まあ、上司はもっとひどい怒られ方をされていたので僕はまだマシな方かもしれない。
同期はいつのまにか数人辞めていた。
そして僕はストレスで円形脱毛症になった。
髪を切りに行ったときに美容師に言われるまで気付かなかったので、おそらくしばらくの間、ハゲを露呈しながら歩いていたのだと思う。
若くてもハゲるのかと驚いたものだ。
それ以来、髪の毛を不自然な方向に流してハゲを隠していた。
あの時のことはあまり詳細に思い出したくないのでこれくらいにとどめておく。
しかし、僕に衝撃を与えた言葉だけは書き記そうと思う。
それはある日飲み会で上司に言われたことだ。
今のうちに楽しむ・・・?
こんな過酷な状況でどう楽しめばいいんだとわけがわからなくなった。
しかも、この状況に頑張って耐えたところで将来もっと苦しくなるだけ。
人生に希望が持てなくなってしまった。
この言葉を聞いてから、僕の止まりかけていた思考が再び動き出した。
この環境にいたらやばいと本能的に感じ取り、今まで周りに流されてばかりいた僕が、ついに自分の意思で行動を起こすことになったのだ。
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あの日答辞を読んでから2年が経った。
あれから会社を辞め、起業した。
僕は今、お気に入りのカフェでこのストーリーを書いている。
あの経験があったからこそ、今が余計に幸せだと感じる。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
こんな僕でも会社を辞めて起業できた理由はブログに書いていますので、もしよろしければブログの方でこのストーリーの続きをご覧いただけると幸いです。
僕は学生時代に何も考えていなかったので、流されるままの人生を送っていました。
しかし、本気で自分の人生の未来を考えたとき、流されているままでは希望はないと感じました。
ブラック企業が問題になっている昨今、現状は変わる気配がありません。
環境が変わらないなら、自分が変わるしかありません。
かつての僕と同じように苦しんでいる人たちが少しでも前向きになれるように、このストーリーがお役に立てることを願います。
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