昭和版/音楽業界用語辞典:

2 / 3 ページ

 ・ソークー : 大便。

  用例:そーくーたいしー=大便をしたい。


 ・れーたー : 「たれる」の意。主として用便関連の語と共に使われる。

  用例:そーくーれーたー=大便をした。


 ・むいねー : 眠い


 ・かれたつ : 疲れた


 ・なおん : 女性の意


 ・るーすー : 「する」の意。主として異性と性的交渉を行なう事を指す。「りーやー」の項も参照。


 ・たーしー : 「した」の意。「るーすー」の過去形。主として異性との性的交渉を持った事を意味する。


 ・たいしー : 「したい」の意。主として異性との性的交渉を持ちたい希望を表現する時に使用する。

  用例:こめおーたいしー=女性と性的交渉が持ちたい。


 ・じょーしょーぶりやー : 音楽医学用語で処女膜を破る事を意味する。転じて初めて仕事をする、新しい楽器を初めて使うというようなケースでも使用される。



ーーーーーーーーーー

作業:


 ・とり : 録音する事。またはギャラの取り分。


 ・かき : 作曲または編曲する事。譜面に音符を書く事に由来している。上記の「とり」と組み合わせて「とりの50、かきの30」(録音料50万、作編曲料30万)という風に使用する。


 ・まき : 時間がなくなっている事。テレビ局で収録時間がなくなって来た時に、アシスタントが手をクルクルと回す事に由来する。

  用例:「すんませんマキが入ってます」。またスタジオではミキサールームとスタジオが隔離されているため、スタジオ時間が足りなくなって来た時にディレクターが手をクルクル回して時間が足りなくなった事を示す。さらにテンポフリーで3分間のピアノソロが欲しい等の場合、時計を見ないでノロノロと演奏していたりすると、ミキサールーム側からマキのジェスチャーが入ってテンポを上げるか、そろそろエンディングに入ってくれ、との指示が出る事もある。


 ・ケツカッチン : 仕事の終了時間が予定通り終わる事。または次に仕事が入っているため予定の終了時間に終わらせて欲しい事。

  用例:「すみません、次あるんでケツカッチンで...」。


 ・トラ : エキストラの略。頼まれた時間に別な仕事が入ってしまい、元の仕事に代役を入れたりする場合や、急病で仕事に行かれなくなり別な人を頼む場合等「トラを入れる」というように使用する。


 ・落とし : マルチトラックレコーダーに録音された音を通常のステレオやモノラル(最近ではDVD対応のマルチチャンネルの場合もあり)ミックスする作業の事。ミックスダウン、トラックダウンという言葉から由来する。

  用例:「とりの5日、落としの2日(録音に5日かけミキシングに2日かけるの意)」。


 ・TD(MD) : 上記落としの項目にあるトラックダウンがTD、ミックスダウンがMD。ミニディスクのMDと混同しないためTDというのが一般的。


 ・MA : マルチオーディオの略。正しくはダビング。映像用に録音された音楽や効果音等の多数の音をひとつにまとめあげ、最終的な音付き映像を作る作業を言う。MA専用のスタジオがあり、機材的には音楽録音スタジオにビデオ機材がミックスされた感じ。MAという言葉自体は和製英語で、日本テレビが発祥の地とされている。


 ・リテーク : 録音やりなおしの意。依頼者(クライアント)の意志と違う作品が出来上がってしまった場合に起こる恐怖の事態。リテークが出た場合にはリテーク分のスタジオ代をレコード会社が負担したりするが、予算がない時などは、なんとかミックスを変えただけで逃げられないか?等、色々と工夫がこらされる。時としてこのリテークの出たボツバージョンの方が本チャンより良かったりする事もある。要はクライアント様のご意向次第。


 ・ボツ : 日本語では没。ダメテークの事。ボツテーク、ボツ曲等、色々なケースで利用される。現場の製作者としてはあまり聞きたくない言葉の1つである。CD等で「特別ミックスを2曲収録!」などと上手い事を言っている場合でも実は追加の2曲は「せっかくだからこのボツテーク2曲入れとこうか?」というようないい加減なケースも多く、「未発表音源2曲追加」などと言われて買ってみたらカス曲だった、というような事はよくある事である。


 ・まわす : テープレコーダーが主流だった頃、テープを回して録音(または再生)を開始する事を意味した。

  用例:「じゃ試しに弾いてみるからまわしてみてくれる?」、「じゃまわします」。


 ・コンペ : 英語のコンペティションの略。競争、コンテストの意味。何人かの作曲家や作詞家に曲を発注し、クライアントが気に入ったものが採用される。「今回の曲はコンペなんでよろしく」といった使い方をする。コンペに落ちた曲は即ボツにするのではなく、作詞作曲家のストックとして保存され、似たようなコンペがあるとまた出してみたりする。したがって人によってはコンペ用の曲を何十曲とストックしてあり、相手の要望によってライブラリーから引っ張り出して採用されるまで提出し続ける。音楽のコンビニみたいな事をやってる関係者も少なくない。


 ・ブース : スタジオにある(音響的に)隔離された部屋。ボーカルやピアノ等をブースでバラバラに録音していれば、各パートごとに録り直しが可能。また、ミックスの際にそれぞれ別なエフェクトをかけたりできる。通常ブースというとボーカルを録音できる程度の小さな部屋をさすが、大きなスタジオになるとボーカルブース、ピアノブース、ドラムブース等複数のブースが存在する。人によってはかっこをつけてアイソレーションルーム(隔離された部屋の意)と呼んだりする。

 また幽霊が出るという噂もたいがいブースに出る事になっている。例えば東京タワー近くにある某スタジオのブースは、時々お爺さんが覗きに来る、というので有名。


 ・びーた : 旅の意。音楽ではコンサートツアーを「びーたに出る」、「びーたの仕事で今月はいない」等というように使用する。


 ・びーくー : クビの意。バンドやスタッフをクビになる事。


 ・あたま : 曲の最初の部分や、スタジオ時間の最初等の意。

  用例:「頭から8つ」(曲の最初から8小節目)、「頭からいなくてもいいよ」(スタジオ時間のスタート時点からはいなくても大丈夫)。反語:けつ


 ・けつ : 曲の最後の部分や、スタジオ終了時間の意。

  用例:「けつから4つ目のあたまで抜いて」(曲の最後4小節目の先頭で録音を解除して)、「けつが見えない」(作業終了時間が見えない)。反語:あたま


 ・入れる : 録音ボタンを押して、録音を開始する。

  用例「Bの2つ目から入れて」(Bの2小節目から録音を開始して)。反語:抜く


 ・抜く : 録音モードから抜けて再生モードに入る事。

  用例:「今んとこの3つ前から入れて、3拍半で抜いて」(現在のテープ位置から3小節前から録音し、3拍と8分音符行った所で録音をやめて」。反語:入れる


 ・ゲネプロ(またはゲネ) : 本番と同じ流れで行う通しリハーサルの事。ドイツ語のゲネラルプローベに由来する。テレビ番組等では本番前の最後のリハとなり、出演者は全員本番と同じ衣装を着用してリハを行う。超一流ミュージシャンを頼むと、ゲネプロ10分前に会場に飛び込んで来て、初見でゲネプロをこなし、そのまま生番組の本番に突入する事もあり寿命が縮む。


 ・一発もの : 1つのコードだけで演奏される楽曲。ソウル/ファンク/フュージョンでよく使われる。ベースが中心になる場合にはベース最低音である E を基準にして Em のコードでソロを回したりする。またテレビや映画の劇判では雰囲気だけで行きたい場合「30秒なんで一発もので行きましょうか?」等と言う事もある。


 ・いきふんぱついち : 雰囲気一発の事。ソロやフィーリングを大事にしたレコーディングでは、その場限りの雰囲気を大事にする。そのため、あまり多くを説明せず「そこは全体の雰囲気に合わせて、いきふんぱついちで行っちゃいましょう」と、多少の問題点は無視して一回のテークで OK を出したい場合などに使う。


 ・ : 指揮棒の事、または指揮棒を振る事、指揮棒を振る人を指す事もある。

  用例:「明日は棒はどうすんの?」「棒振りますから、バランス見といてね」

 また、指揮棒を振る事を「棒振り」「振り棒」という事もある(棒振り3年、書き8年の項も参照)。



ーーーーーーーーーー

あいさつ:


 ・おはよーございます : 時間に関係なく、その日最初に会った人物、行った場所でこのあいさつをする。音楽・芸能界に共通するあいさつであったが、一般人が真似をするケースが増えたため、最近ではこのあいさつをしないケースも目立っている。これに代わる言葉として「ども」とか「まいど」等の簡単なあいさつが使われる場合が多い。


 ・おつかれさま : 仕事が終了した時のあいさつ。おはようございますと同じく、一般人が真似をして使うようになったため、あえて使用を控える音楽関係者は多い。


 ・かれおつまさ : おつかれさま、の音楽業界用語バージョン。略して「かれおつ」と言う場合もある。方言として「さまつかれお」もある。


 ・たーまー : 「また」の意味。スタジオから帰るミュージシャンに「それじゃあ、またね」といった事を伝える時に使う。


 ・しくよろ : よろしく、の意味。「またよろしく」は「たーまーしくよろ」となる。

  たーまーの項も参照。


 ・あーじゃくーぎょ : じゃあまた!、の意味。

 「じゃあ」=「あーじゃ」の理解は容易であるが、「くーぎょ」はヒネリが入っており注意が必要である。

 「また」は本来「たま」と表現されるべきであるが、ここでは「たま=玉=ぎょく」と解釈し、この「ぎょく」を業界用語に変換することにより「ぎょく=くーぎょ」となった。

 音楽業界用語としても古語に分類されると考えられ、現在、文化庁日本語表現検討委員会の小委員会においての検討課題となっている。



ーーーーーーーーーー

楽器・奏者・関係者:


 ・オリン : バイオリンの略称。


 ・メリン : オリンから派生した言葉。女性のバイオリン奏者をさす。


 ・ローチェー : チェロの事。


 ・ヤノピー : ピアノの略。


 ・タイコ : ドラムの俗称。


 ・パーカス : パーカッションの略称。


 ・ターギー : ギターの意。


著者の安西 史孝さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。