昭和版/音楽業界用語辞典:

3 / 3 ページ

 ・アコギ : アコースティックギターの総称。


 ・アコベ : アコースティックベース、ウッドベースの略称。


 ・エレベ : エレクトリックベースの略称。


 ・スーベ : ベースの意。


 ・ペット : トランペットの略称。


 ・パツラー : 「ラッパ」の意。トランペットやトロンボーン等の管楽器全般をさす。


 ・ボーヤ : 機材運びやスタジオアシスタントの総称。主にミュージシャンを目指す若人が有名ミュージシャンのアシスタントとしてボーヤになる。運転免許と体力は必須。また人格面でも明るく快活である事を要求される。日本古来の徒弟制度にもとづく階級では最も下位に位置する存在。

 師匠に殴られて田舎に帰京するボーヤが90%以上を占めるが、中には師匠よりも出世するボーヤもいる。なりたい人は3日くらい徹夜する練習をしておくこと。


 ・インペグ屋 : 人集め屋。作編曲家やディレクターに頼まれたミュージシャンを集める業者。業務として行なうには国に専門の申請が必要。フリーのスタジオ系ミュージシャンになりたい場合には、このインペグ屋のリストに乗らなければ仕事は回って来ない。また、呼ばれて行って良い演奏ができなければ格下げされ、ギャラが安くなるか、ろくな仕事が回ってこなくなるか、お呼びがかからなくなる。

 レコーディングの際(特にメンバーの集まるスタート時と、終了時)には立ち会い、作業終了後にとっぱらい(別項参照)でミュージシャンにギャラを渡す。スタジオのロビーで背広姿の人が一人待っていたらインペグ屋の確立が高い。


 ・ディレクター : 音楽制作の場での現場監督。作業内容はケースバイケースで録音に関する全工程を仕切る場合もあれば、作編曲家にすべてまかせてしまい、現場では食事の心配しかしないケースまで様々である。また作編曲家と共同作業の場合もある。例えばオケパートの仕切り(演奏のダメだしや細かい指示)を作編曲家に任せ、歌入れのダメだしだけを担当する等のケースもある。

 所属先は様々で、レコード会社専属の場合もあれば、特定の仕事に単発で雇われる事もあり、また制作先の会社のスタッフがディレクターとなる場合もある。


 ・ジャーマネ : マネージャーの略。アーティストのスケジュール管理やお世話をする。奴隷のようにこき使われる人もいれば、アーティストを仕切って主導権を握っている人もおり、立場は様々。アーティスト優位の場合には夜のお相手探しまでさせられるケースもある。またアーティストが売れないうちに地方回りの世話などしている間に、ちゃっかりアーティストとできてしまい、結婚引退などというケースもよく見受けられる。


 ・光り物/ヒカリモノ : キラキラとしたシンセサイザー系の音色の事をさす。1980年代後半以降にポリフォニックシンセが一般的に使われるようになってから登場した言葉。音色の雰囲気から「キラキラ系」などと呼ばれる事もある。

 また、ドラムのシンバル系の音をさす事もある。

  用例:「サビの所がちょっと地味だから光り物を足してみましょうか?」


 ・うわもの : 高い音域の音色、またはドラムで上側に配置されているシンバル類の音をさす。

  用例:「うわものがちょっと多い」



ーーーーーーーーーー

場所・会社:


 ・シナソ : 信濃町ソニースタジオの略。現在は廃止されたが、居住性が高く、スタジオ・TDルーム・マスタリングルーム等、音楽制作の一連の作業を1つのビルでまとめて行なえる場所として注目を集めた。1990年代後半のテレビドラマ「With You」で登場するスタジオがここ。現在は建物ごとなくなった


 ・ロクソ : 六本木ソニースタジオの略。現在は廃止され鯛スタジオという名称になっている。地下1階は六本木ピットイン(ライブハウス)のため、どちらも音、機材搬入で同ビルのテナントともめ事が多かった。ちなみに鯛スタジオはビンテージキーボード(ハモンドやエレピ)が充実しているので個人的にオススメ!(その後、建物ごとなくなりました)


 ・一口坂 : ポニキャン(別項参照)の所有スタジオ(現在は廃止)。その名の通り、千代田区一口坂にあった。複数のスタジオがあり、オーケストラの収録にも対応。スタジオの残響効果を変えるために天井の高さが変えられる機能が付いていた気がするんだが、使った記憶がない。ミュージシャンの待合用ロビーにあるゲーム機の種類が豊富なのでも有名だった。

 漫画「プラスティックドール」(高橋由佳利)のスタジオシーンに出てくるのが、この一口坂スタジオ。知ってる人が見ると「あ、これ一口坂じゃん!」とすぐに分かる辺り、さすがプロの漫画家さんです。

 なお、筆者が1980年代に一口坂でレコーディングしている貴重なビデオは以下を参照の事。

 コーラスピッチ修正の出来ない時代のプロのコーラスレコーディングの技を見よ!


 ・エヌ朝 : テレビ朝日の旧称。元々はNETというテレビ局名だったのがテレビ朝日に変わった経緯がある。テレビ局内に一般貸しをするスタジオがあったため、ミュージシャンの多くはテレビ朝日という名前に改称した後もNET朝日という名称をもちい、受け付けの女の子を困らせて喜んでいた。現在使うと変な顔をされると思うので注意するように。


 ・赤コロ、内コロ : その昔、コロンビアが2ヵ所にスタジオ・事務所を持っていた頃の名称。内コロは内幸町コロンビアの略、赤コロは赤坂コロンビアの略。

 インペグ屋(別項参照)からの電話を間違えて別な場所に行ってしまうケースもあった。現在では社員すらも内コロの存在は知らないと思われるので、ウンチク話として話題にするとウケるかもしれない。ちなみに赤坂も2004年中に引き払い場所を移動した。スタジオ機能はなくなってしまった。


 ・ビアコロ : コロムビアの意。


 ・ニーソ : ソニーの意。


 ・ポニキャン : ポニーキャニオンの意。


 ・リハスタ : リハーサルスタジオの略称。


 ・スタセン : その昔、六本木の防衛庁(現在のミッドタウン)並びにあった日活スタジオセンターの略。



ーーーーーーーーーー

機械:


 ・マルチ : マルチトラックレコーダー=多チャンネルのレコーダーの総称。この場合4チャンネル以上のトラック数を持つレコーダーをさす。「マルチをまわす」は通常、24または48チャンネルのマルチトラックレコーダーを回して録音する事を意味する。

 初期は磁気テープを使ったアナログマルチ、1980年前後からデジタルデータを磁気テープに記録するデジタルマルチが登場し、近年は廉価なハードディスクレコーダーに取ってかわられた。しかしアナログ時代のテープ独特のサウンドはやっぱり良かったと考える人も多い。


 ・ : ミキシングコンソールの総称。小は8チャンネル程度から、大は96チャンネル程度まで広い意味で使われる。また照明用のコントローラーも同じように呼ばれる。海外ではミキシングコンソールと言わずにボードと呼ぶ事も多い。


 ・SSL、ニーブ : 代表的なミキシングコンソールの名称。SSLはソリッドステートロジックの略。他のスタジオとの互換性からこのどちらかを入れているスタジオは多い。その他の機種としてはフォーカスライトやアドギアー、API等があり、それぞれ個性のある音がするため、特定のコンソールを使用したいためにスタジオを指定する音楽家もいる。


 ・ななろく、さんぱち : アナログテープの走行速度の呼び方。ななろくは毎秒76センチ、さんぱちでは毎秒38センチのテープに音を記録する。テープ幅はマスター用のもので1/4インチか1/2インチ、マルチ(別項参照)で2インチが普通。回転数が早いほど高音域まで綺麗に録音できる。最近ではマルチはデジタルレコーダーやハードディスクレコーダーを使用するケースが多いが、最終段階の2トラックテープでは1/2インチで76センチの速度でアナログテープを回すケースも多い。アナログテープを通すことにより音に温かみが出る、というのがその理由である。


 ・ハーフ(インチ) : 1/2インチの2チャンネル(マスター)アナログテープ(またはテープレコーダー)の事。用例「マスターはハーフにしときたいんですが」。シブイチも参照の事。


 ・シブイチ(6ミリ) : 1/4インチ=6ミリの2チャンネル(マスター)アナログテープ(またはテープレコーダー)の事。アナログテープ全盛期のマスターテープはこのテープ幅が主流だった。現在でもアナログにこだわる場合には利用され「マスターは6ミリでください」などといった言い方をする。


 ・トークバック : 録音スタジオではミキサールームとスタジオ内が音響的に隔離されている。このため、会話をするためにはマイクを通す事になり、これをトークバックという。通常スタジオ側にはコンソールにトークバック用のマイクとスイッチが用意されている。またスタジオ側ではトークバック用にミュージシャンの前にマイクを立て、これを通して会話を行なう。このマイクは録音時にはオフにされる。またドラムやピアノのようにミュージシャンのすぐ近くにマイクがある場合にはこれをトークバック用のマイクとしてあえて会話用マイクを立てない場合もある。またスタジオ側ではミキサーとディレクターの両者が話をするため、ディレクター用のデスクにトークバックのシステムが装着されているケースや、小型の赤外線式トークバックボックス(手のひらに乗る程度のサイズ)を使用する事も多い。


 ・チャンネルシート/キューシート/トラックシート : マルチトラックのレコーダーの各チャンネルに何が録音されているかを記した表。通常テープに録音する場合にはテープの箱にこのシートと譜面、資料等をまとめて入れておく。これが無いと後でミックスをやりなおしたり、CD再発等の時困った事になる場合が多いので面倒でもちゃんと記録しておくことをオススメする。


 ・キューボックス : スタジオでミュージシャンのヘッドフォンに音を返すための小型ミキサー。ボリュームとパンだけが付いており、ヘッドフォンアウトが2~4つくらい付いているのが普通。4チャンネルから6チャンネル程度の物が一般的。機種にもよるが全てのチャンネルがモノラル受けになっているものや、1チャンネルだけ1つのフェーダーでステレオ受けができるようになっているものもある。通常は1~2チャンネルにステレオの仮ミックス(1つ目のフェーダーがステレオになっている場合は1チャンネルのボリュームだけ)、最後のチャンネル(4チャンネル目、または6チャンネル目)にドンカマ(別項参照)が返り、残りのチャンネルにミュージシャンの希望する音を返す。スタジオ内には色々な場所にマイク用のコネクターの他に、このトークバック接続用のコネクターが用意されている。


 ・キュー : キッカケの意味。色々なケースで使用される。例えば繰り返しのリズムパターンから次のフレーズに移るキッカケを誰かが出す場合、「キュー出しをしたら次のパターンからBのフレーズに飛んで」等と言われる。

 またキュルキュル言う音の総称としても使われ、アナログテープを早回しして音を探す場合にもキューという言葉が使われる。


 ・スレート/スレートトーン : アナログテープが主流だった頃、テープに録音された曲と曲の間に次の曲のクレジット(これは音声で「M3のテーク2」といった感じで録音された)と共に50~60Hzの低周波を10~20秒ほど録音していた。デジタル録音では頭出しはボタン1つで可能だがアナログ時代には曲の頭を探す場合、こうして録音された音をテープを早送りや巻き戻し中にヘッドに軽く近付け(完全に密着させるとテープの劣化をまねくので近付けるだけ)、高速で動くテープのキュルキュルという音の中からピーーーっと聞こえる部分を探して頭出しを行なっていた。この低周波の音をスレートトーンと呼んでおり、古いコンソールではトークバックのボタンの他にスレートというボタンが付いている場合もあった。


 ・タイムコード(TC) : レコーディングの際にテープに記録する時間信号。通常SMPTE(シンプティと発音)を記録し、これをタイムコード/シンク信号等と呼ぶ。元々はアメリカの映画・テレビのための同期信号から来ている。日本のテレビ・ビデオでは1秒間を30に区切り1/30の単位を1フレームと呼ぶ。つまり30フレームで1秒となる。ヨーロッパではこれが29フレーム、フィルムでは24フレームとなり、相互の互換性には注意が必要である。通常音楽で使用する際には30フレームのノンドロップ(レコーディングの際にアシスタントにタイムコード記録を頼む場合には「ノンドロップの30で」と指定すればOK)という規格を選んでいれば間違いがないが、音楽にこのSMPTEが使用され始めた80年代にはまだシンク信号発生用のジェネレーターの規格がまちまちだったため混乱が起こる事が多かった。したがって現在でも80年代のテープをリミックスしようとしたりする時に、この問題が起こる事がある。一般的に相性が悪いのはローランドのシンクロナイザーSBX-80とマークオブザユニコーン(MOTU)の初期型MidiTimePiece(MTP)で録音されたものであり、スタート時点ではタイミングが合うのに途中からじょじょにシンクがずれてくる。こういった場合、オリジナルで使用したシンクロナイザーと同型機を持ち込む必要があり、90年代初頭に製造中止となったSBX-80の中古価格が高騰した事がある。

 ちなみに間違ったフレームレートで記録した信号で演奏をさせようとすると1秒毎に演奏タイミングのずれた音が出てくるのですぐに分かる。


 ・よんぱち(3348)、にーよん(3324) : ソニーのデジタルマルチトラックレコーダーの略称。その名の通り3348では48チャンネル、3324では24チャンネルの録音が可能である。3348は3324の後継機にあたり、テープには上位互換性があるため、3324で録音したテープに残り24トラックを追加して録音する事が可能。現在3324はほとんど使用されないが、両機が混在していた時期には混乱を避けるため「24回し(にーよんまわし)」、「48回し(よんぱちまわし)」という言い方で区別をしていた。

 なお3348のテープには技術的に更にチャンネルを増やす余裕があり、3364が出るのでは?という噂が流れた事があるが、結局録音解像度を上げた3348の上位機種、3348HRが発表された。しかしこの機種はほとんど普及しなかった。


 ・マック(Mac または Macintosh) : コンピューターの名称。

 20世紀の時代には、音楽・デザイン業界等、クリエイター業界にしか使われていなかった機種。

 21世紀に入ると、意識高い系と呼ばれる人々が、スタバで使うようになり、純粋にコーヒーを楽しみに来た人たちを奈落の底に突き落とす事で有名になった。


 ・キーペ(ゲート) : 現在使われているゲートの元祖。キーペはキーペックスの略でバレーピープルという会社の製品だった。ご存じのようにゲートはドラムの音にリバーブをかけてゲートで切る事により特殊なドラム音を作り出していた。また同じくドラム音のスネアやタムのかぶりをカットするために使われるわけだが、キーペックスが流行していた頃にはほとんどのチャンネルにゲートをかけるという事が行なわれ、余韻はみんなブッチギリという事も多く、キーペックスだけでラックに並べて装備されているスタジオも多かった。流行に弱いディレクター等は「それキーペかけましょう」となんにでもキーペックスをかけたがりスタジオで顰蹙を買うことも多かった。


 ・ノンドロップの30 : タイムコード(TC)の項を参照


 ・マスター/スレーブ : タイムコードやその他のシンク信号を使って2台の機器(レコーダーやシーケンサー等)を同期させる場合、その親となる機械をマスター、子供となる方がスレーブとなる。レコーダーを複数回してレコーディングする際などには「今日はスレーブ回しありで」といった指定をする。


 ・ドンカマ : 曲を録音する際にミュージシャンの聞くクリック信号の事。簡単なレコーディングの際にはスタジオに常備されたリズムボックスで、他のシーケンサー等とシンクさせて使用する場合にはアレンジャーの作ってきたドラムのカウント音でレコーディングするケースが多い。元々はコルグのリズムボックス「ドンカマチック」が語源となっている。

 レコーディングの際にドンカマの音量を大きく聞いているミュージシャンがいたりすると、その人のクリック音が漏れて録音されてしまう事がある。市販のCD等でも曲の静かな場所で良く聞くとドンカマ漏れが聞こえる事もある。静かな曲でドンカマを使用する際にはドンカマに使う音色に抜けの悪い柔らかい音を使うようにする。また曲中である部分だけ静かになってソロになったりするような場合にはミキサーに頼んで、その場所だけドンカマに送る音量を下げてもらったりする。


 ・クリック : ドンカマの項参照


 ・やおや : ローランドのリズムボックスTR-808の愛称。細かいリズムまでプログラムでき、各リズム音の音色をコントロールできるということもあり、画期的な物だったが発売当時はそれほど話題となる事はなかった。しかし80年代後半からのダンス物ブーム時に音色が面白い、とテクノ系人間に使われるようになり一気にブレークしてしまった。しかし、その時点ですでに製品は製造中止となっており、中古市場価格が大きく跳ね上がった。

 裏技的な使い方としてはステップ数を2にし、2ステップ目にカウベルの音をセットする。次にカウベルの単独アウトの音をスタート・ストップの信号インプットに接続し、テンポを一番早くセットする。さらに1ステップ目にクラップの音をセットし、カウベルの音量を最大にセットしてスタートボタンを押す。するとクラップの音が鳴った次の瞬間に2ステップ目のカウベルの音がTR-808自身を停止させる。これにより、簡易ハンドクラッパーを作る事ができる。

 1980年代にはこの方法で808をハンドクラッパーとして使うケースがあったが、やり過ぎると内部のトランジスターを壊してしまうという事があった。またこれに目を付けた某楽器店が808のハンドクラップ部分のみを抜き出したハンドクラッパーのコピーマシンを作ったが、ローランドに特許侵害として訴えられ製造中止になった。


 ・おかま : テープを入れるトースターのような機械。旧譜の復活音源やリマスタリングによるCD化の際、昔使われていたアナログマスターテープをデジタルに変換する事がある。この場合、テープが古くなっていると経年変化からテープに磁性体を貼りつけているノリがベトベトになり、磁性体がはがれたり、テープがレコーダーに巻き付いてしまったり、というトラブルが起こる事がある。

 こういった場合、テープを一度大型トースター(通称おかま)に入れ、高温にしてノリを固定するという事をする。これを「かまいれ」等と呼んだりする。

 ただしカマ入れしてノリを固定したテープは時間が経つと、今度はノリがパリパリになって磁性体が落ちてしまう事もあり、カマ入れは一種の賭けとなる事もある。


 ・デルマ : 筆記用具の「デルマトグラフ」の略。アナログテープを使ったレコーディングでテープを編集する場合、白のデルマを使って印を付けるのが一般的。 

 2インチのマルチトラックテープを使ってコマーシャル音楽等を録音する場合には、テープ上にかなり長い印を付けてスタート位置を探しやすくしたりしていた。これはまだレコーダーがデジタル管理されていなかった頃、確実にテープの頭出しをするために必須のテクニックだった。 

 デルマで印を付ける理由として「デルマ(特に白色)で付けた印はテープの磁性体に影響を及ぼしにくいから」という説があるが真偽のほどは未確認。


 ・オプチカル(オプティカル) : 光学の意味。その昔、ビデオが普及する以前は、映画の音はフィルムの音声トラックに波の形として磁気ではなく光学的に焼き付けていた。このトラックをオプチカルトラックと呼んでいた。テレビのコマーシャルでもオプチカルが使われる事があった。

 この場合、周波数特性が磁気テープよりも狭くなるため、ミキシング時に「今日はオプチカルで...」という風に頼んでおくと、ミキサーが音を光学処理向けの音質に調整してミックスしてくれた。



ーーーーーーーーーー

その他:


 ・はこばん(はこ) : キャバレーなどのバンドで、特定の場所でずっと演奏の仕事を続ける場合に使われる。「はこ」は劇場の舞台手前にあるオーケストラボックスから由来している。

  用例:「ここんとこ、はこの仕事が続いちゃって」のように使う。


 ・劇伴 : 劇音楽の伴奏の意味。ここでいう劇音楽とはTV・映画等の曲をさし「劇伴の仕事なんだけどさー、スケジュールあいてる~」といった感じで仕事が来る。通常1つの番組で30~80曲程度の曲数を1~2ヵ月で完成させなければならず、仕事とするにはかなり特殊技術が必要となる。


 ・ざらはい : 灰皿の事。ミュージシャン(特にドラマー)が怒ってボーヤ(別項参照)に投げ付ける事が多い。


 ・たたく(叩き出し) : マルチトラックレコーダーを使ったレコーディングの際、同じフレーズのある場所は2度3度と録音せずに、1度目に録ったフレーズを別のテープレコーダーに移し、それを元のテープの必要な場所に、タイミングを合わせて移動する。この作業を「叩きだし」と呼ぶ。キッチリのタイミングでボタンを勢いよく叩いて音を出す事に由来している。例えば1コーラス目の2コーラス目でサビのバックコーラスが同じだった場合「2コーラス目は叩いちゃって下さい」という風に利用する。叩きだしにはそれ相応のリズム感が必要なため、アシスタントの腕が悪いと生で録り直すよりも、時間がかかってしまう事もある。

 なおソニーの3348(別項参照)の後期モデルでは、この叩きだし機能が標準で装備されるようになり、必要なフレーズをステレオサンプリングして必要な場所に叩きだせるようになった。


 ・ブロン : 風邪薬の一種。アルコール類と一緒に飲むとトベル、と70年代ロックミュージシャンが愛用していた


 ・エンタテインメント : entertainment を日本語にした場合の表記のひとつ。昔はエンターテイメントで通っていたが、発音にこだわりのあるレコードメーカーは請求書の名前が正確にエンタテインメントになっていないと書類を突っ返されるので注意が必要。


 ・噂の真相 : 各種業界の噂を追求する強力な雑誌(現在は廃刊)。全盛期には音楽業界のスッパ抜きネタも多く、同誌で流れた情報を確認しようとレコード会社に行ってみると「社長は逮捕されました」等とネタの確度が高い事に驚かされる事も多かった。


 ・棒振り3年、書き8年 : (棒を振る)指揮は3年くらいやっているとカッコがつくが、書き(作編曲)は8年はやらないとサマにならないという格言。個人的に「棒振り3年、書き8年、売れてるアイツは3ヶ月」というのも作ってみた。


 ・くりびつてんぎょー : びっくり仰天の事。略して、くりびつ、だけでも使う。


 ・アンダースコア : 英語で Under Score。日本では使われないが、いわゆるテレビや映画の BGM の事。テーマ曲に対してこの言葉が使われる。海外の関連文献にはよく登場する言葉である。



著者の安西 史孝さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。