30代半ばのオッサンが起業した話 破綻編

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著者: 小林 高志



前回の最終回を書いてから、どの位の月日が経っただろうか?

その後、社員を雇い、都内に事務所を構え、ポルシェに乗り、順風満々に思えた。


その兆候は、先ずアプリの収益に現れる。

ずっと倍々で成長してきたアプリの売上が鈍化し始める。

その時期と同じくして、固定費がかさむ。

一人で稼いだ内部留保(会社が保持するキャッシュ)は割と潤っていたが、少しづつ減っていく。

2015年の秋くらいから、内部留保も無くなり、社会保険料の滞納も。


今まで思い通りに出来ていた事が、少しづつ、本当に少しづつ狂い始める。

そして、それが始まると、自分で全くコントロール出来なくなる。


受託案件で立て続けに、一方的に契約解除を言い渡される。

目標を立てれば必ず達成出来る、出来てた。それが出来なくなる。


物事に優先順位を付け、すぐに実行に移す。

どんどん色んな事が億劫になり、それが出来なくなる。


数年前に読んだ『社長失格』という書籍。

他人事のように読んでいたが、自分にフラッシュバックする。


毎月毎月、資金が足りない。

「また足りないのかよ。。。」

自分でもうんざりする。


それでも、起業して軌道に乗せた自負もある。

それが邪魔したのかもしれない。


過去の栄光はどこに行ったのだろうか?

少しづつ、それは着実に。

着実に今まで築いてきたものが蝕まれていく。


ちなみにだが。

4期目の決算は散々な結果だった。大幅な赤字。

税理士に『こんな決算書、見たことない』と言わせる程。

そして、5期目も割と大きな赤字で終わった。


破綻への第一歩

2017年4月21日(金)

休み明けは給与日。また資金が足りない。

メインバンク、信金、公庫から追加融資を断られて、ちょうど1年位経つだろうか。

社長個人として、銀行のカードローン、消費者金融から借金をして会社の口座に入金して何とかしのぐ日々。

その頼みの綱からも断られるようになってしまった。

その時は、カードローン、消費者金融から500万位、その他身内から400万位、合計900万位の借金が個人としてあった。

もう借りられない。

何とか出来ないかとネットで検索なんかをしていると、保険の契約があると、そこから借入が出来るとのこと。

結局子供2人に掛けている学資保険から借入し、なんとか会社の口座に入金した。

何とか、今月もしのげた。来月以降のことを考えると、めまいがするが。


2017年4月24日(月)

何とか現状を打破したい。

ネットで血眼になって調べてると、東京商工会議所で無料で経営相談をしてくれるそう。

今日の午後からその打合せに向かう。

打合せの前に東京駅でトイレへ。

そこで携帯に着信。メインバンクの担当者から。

どうせ何かの営業電話だろう。打合せが終わってから掛け直そう。


所員2名と打合せ。

現状を説明し、このまま経営を続けて良いのか聞いた。

(この頃は会社を畳むことも視野に入れていた)

ここで見覚えのある固定電話から着信。メインバンクからだ。

打合せを続ける。所員2名の感想としては、会社の借入額も少ないし、売上拡大を狙って十分立て直すことは可能だろう、ということだった。

次回は経営コンサルタントも交えて打合せとのこと。


打合せが終わり、銀行の担当者に折り返すも不在。

固定電話に折り返し、多分担当者が掛けてきただろう旨を相手の女性に伝える。

東京駅は帰宅途中のサラリーマンやOLもちらほら。

携帯が鳴る。

いつもの調子で携帯に出る。

相手:「私、◯◯銀行△△支店の支店長をしております◯◯です」

俺:(・・・支店長?)

◯◯支店長:「結論から申します。会社と社長個人の銀行口座が差し押さえられました。

俺:(・・・サシオサエラレタ?)「えっ?」思わず聞き返した。

俺:「25日に給与振込申請もしてるんですが、それもダメですか?」

◯◯支店長:「はい、差し押さえられている状態ですので、一切の入出金は出来ません。」

◯◯支店長:「今後の対策を練りたいと思いますので、大至急ご来店頂けないでしょうか?その際お持ち頂きたいものがございます。銀行口座の印鑑・・・(略)」


携帯を切って、とりあえず駅に向かう。

どっと疲れが押し寄せる。

どう乗り切れば良いのか?誰に聞けば良いのか?これからどうすれば良いのか?


あれだけ苦労して入れた金が差し押さえられた。

その事実だけが、のしかかる。


結局のところ、会社の資金力は限界を超えてしまったのだ。

それ以上に、俺のメンタルも限界を迎えつつあった。

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30代半ばのオッサンが起業した話 破綻編2