受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート2(完)
ちなみに、アスペルガー症候群の人と接するときは、
1.指示や伝達はなるべく具体的に(文章にしたり図で詳しく説明すると、なお良い)
2.細かいルールや約束をちゃんと守ってあげる
3.最後に、ちゃんと"愛”で包んであげること(これが一番難しいですが・・・笑)
さらに余談ですが、アスペルガー症候群は、本人の自覚と努力で徐々に改善していくことができます。
もちろん周囲の人の支えが不可欠ですが、障害だと言って自分を卑下するのでなく、前向きにポジティブに向き合っていきたいですね^^
(*アスペルガー症候群に対する偏見や誤った知見が昨今多いようですが、上記はあくまで簡略化した説明や僕の個人的な体験譚で、実際アスペルガー症候群と診断される人には本当に様々なパターンや症状があります。詳しくは専門書や信頼できるウェブサイトなどで、正しい情報をご参照ください。)
人生が変わるということ
そんな僕でも、当時親友と言えるほど仲の良い友人がいました。
香港人で年は僕より3つ上。いろいろ話していてお互い境遇が似ていたり、授業も同じものが多かったので、よく一緒につるんでいました(今思えば彼もアスペルガーで、お互いに親和性(?)があったのだと思います)。
しかし渡英から半年後のある時、僕はささいな事から彼と大喧嘩してしまいます。
僕は本気で、もう日本に帰ろう、このままここで頑張り続けることはできないと、精神がやさぐれていました。
勉強も手に着かず、またもや自分の部屋に引きこもりのような状態になってしまいます。
そんな折、たまたま見ていたmixiで、こんな記事を見かけます。
「日本一周自転車の旅」 ー 7か月で約6000キロ、600人もの人に出会う -
「この人、すげーなー」と思って、初めは読んでいました。
しかしよくよく見ると、なんとこの人ロンドンに住んでいるじゃありませんか。
「会いに行こう!」と直観で思いました。メッセージで連絡を取り合い、直近で会える日に僕はロンドンの郊外、ウィンブルドンへと向かいます。
そこでお会いしたのは、「てるさん」という方で、18歳の時に人生を変えるための自転車日本一周を計画、いろいろな人の「人脈」を基に、行った先々で様々な人と出会い、様々な繋がりを作っていきます。
この日記を、僕は見せてもらいました。
いろんな人からの応援メッセージ、感謝の言葉、熱い生き様、大きな夢・・・
知らず知らずのうちに、僕の頬には涙が伝っていました。そして、どっと自分の心の全てのつかえが取れる感覚がありました。
「僕も、本当はこうしていろんな人と繋がっていきたい・・・」
僕はそんなことを痛切に願いながら、てるさんの前で泣きじゃくりながら、今までの全部を吐き出していました。
それを黙って受け取ってくれるてるさん。涙が止まらない僕。
こうして、僕は本当に自分が何を望んでいるのかを知ることができました。
今までは自分を偽っていたけど、結局は人と繋がっていたいのだと。
そして世の中には、自分のような孤独な人間が他にもたくさんいる。その人たちのために、これからの人生を尽くして、世界をより良いものにしていきたい。孤独を味わい舐めつくした自分だからこそ、できることが何かきっとあるはずだと。
それからの僕は改心して、人との出会いや繋がりを心の底から求めていけるようになりました(もっとも人との付き合い方が分からなかったので、常に試行錯誤の連続です)。
そして、自分の人生の目標も定まります。当時「社会学」という学問に惹かれていて、その一分野で「人との繋がりや絆」を研究していきたい、という思いが強くなりました。
イギリスで社会学を勉強するには、どこの大学が一番良いか?
・・・調べていくと、やはり案の定、ケンブリッジ大学でした。
こうして僕は、人生に対しても、勉強に対しても、受験に対しても、確固たる「軸」を手に入れることができました(そして今でも、この経験が自分の原点です)。
最初に喧嘩していた友人とも、泣き泣きしっかり仲直り。
改めて、世界最高峰のケンブリッジ大学に挑む決意を固めます。
6月のA-level受験まで、あと2か月半。全身全霊で、受験本番に挑んでいきます。
1年目の受験本番
(当時使っていた辞書。一度引いた単語には、必ず線を引いてマークするようにしていました。)
渡英から半年以上が経ち、僕はこれまで毎日生き延びてきたこともあって、リーディング・ライティングについてはそこそこ他の受験生と渡り合えるレベルにまで達していました。
しかし入試本番で、どうしたら点を取れるのか?そこに関しては曖昧なことが多く、ずっともやもやしながら方法を模索する毎日でした。
そんなとき、あるテキストに出会います。
イギリスでは、日本の「大学入試センター」が民間団体で4つくらい存在していますが、それぞれの団体が詳細な「受験要綱」を作成しています。
さらにその要綱を具体的に、個々の科目の個々のユニットやモジュールで、何を学びどの言葉を覚え、何を理解すべきかまで書いた、「具体的な受験対策本」を入試センターが出版していることに気が付いたのです。
先述しましたが、アスペルガーは具体的な指示さえあれば、水を得た魚のように動けます。
僕はそのテキストを、徹底的に分析しまくることに力を注ぎました。どうしたら点が取れるのか、どうしたら失点するのかを徹底的に理解し、さらに試験答案を何回も何回も書く練習をします。
そして1つの単元からは、大体出題パターンが2~3個ぐらいしか無いということを発見します。
各単元ごとにそのパターンを掴んで、答案に書く内容まで具体的に落とし込んで(答案の導入部をどう始めるか、議論の途中でどのような例を使うか、結論はどのようなものにするか、等々)、ポイントを暗記していきます。
ここまで来ると、いわゆる覚えゲーというやつになってきます。試験本番では時間が限られているため、試験中はいかに考えないで答案を作成するか。そのためには、試験前にいかにたくさん予測をして、予め考えをまとめておくか。これが重要です。
結果、僕は学校でトップの成績で、全科目で9割以上の得点で、無事1年目の受験を終えることができました。
それもこれも、具体的な受験対策本があったのと、そしてもちろん、多くの人たちの支えのおかげで、何とか最後まで自分の力を信じ抜いていくことができました。
てるさんを始め、当時お世話になった周りの方々には本当に感謝してもしきれません。
こうしていよいよ、最難関の面接へと挑んでいきます。
いざ、面接へ
(面接室のイメージ。こんな部屋で、当代一流の大学教授と一対一で対面します。緊張しまくりです)
2年目の10月になり、僕は自己推薦状(Personal Statement)もしっかり書き、無事に出願を果たします。
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