落ちこぼれボク、グランプリ受賞までのキセキ!〜異星人ボクと宇宙人母さん〜 苦悩編
薬を飲むことをピタッとやめ、小麦製品、化学物質を一切口にすることをやめた。
じーっとしていたって、海面へは行くことができない。
何か、アクションを起こさなければ!
1週間、2週間・・・、不思議なことにどんどん体が軽くなっていくのがわかった。
少しずつ、関節がスムーズに動くようにストレッチも始めた。体のバランスを取り戻せるように体の動かし方にも意識をし始めた。
「あのさ、『もう、病院行かなくていいかも』って思うんだけど、ケイタはどう思う?」
いつもながらに、あまりの突然の質問に、思わず口から出たのは素っ頓狂な声の疑問の数々。
「はぁ~? 西洋の次は東洋。東洋の次は薬をやめて食事も変えた。そして、今度は、病院に行かなくていい? な、なんなのそれ? いったい、どこからそんな情報を仕入れてくるの?」
どうしてこうも、
次から次へと「奇想天外な提案」しかしないんだろう。
この時ばかりは、「呆れる」を通り越して、彼女の頭の中を覗いてみたくなった、ボク。
3)難病患者にスキーを勧める宇宙人母
★★スキーで釣って、体力づくりをそそのかす
「あっという間に、もう12月になっちゃったってカレンダー眺めてたの」
「カレンダー? なんで12月だったら、病院行かないになるわけ?」
「そろそろ体力作り始めなきゃいけないから、病院行く暇ないなぁってね、思ったの」
「はー、何言ってんの? 体力作りって、春から夏にかけてするもんだよ。これからますます寒くなる12月から体力作り始めるって、聴いたことないよ。動物だって冬眠するんだよ。しかも、今まで、ほとんど体うごかしてないんだから、急に体力作りを始めたら、それこそ体が悲鳴あげるでしょ?」
「ケイタは、この状態のまま大好きなスキーもせずに、春までベッドの中の生活続けるつもりじゃないよね、って疑問が浮かんできたわけ」
「今、なんて言った? スキー??? 頭おかしいんじゃないの? できるわけないじゃん! なんで突然スキーの話になるわけ?」
「残念ながら白馬のスキーって、冬しかできないでしょ? 今のままの生活だと、体力がないからスキーをやりたくても出来ないじゃないのかなぁって、心配になってきたの。せっかくのシーズンを棒に振ったらもったいないじゃん?」
「出ました、お得意の『もったいない!』」
ボクは、半ば親をバカにするように返した。
でも、そんなことは想定内かのごとく、親の話は続いた。
「だから、そろそろスキーができるように体力づくりを始めることが必要なんじゃないのかなぁって。これでも、ケイタのことを心配しているんだけど・・・だって、家にいてもつまんないでしょ?」
「スキーなんて、無理に決まってるじゃん! だって、体、ぜんぜん動かしてないだよ」
「スキーができるようにするためには、何をすればいいの?」
「体幹と筋力鍛えながら、もう少しストレッチも取り入れて体力をつけることと、食欲をあげることかな。そしたら行ける」
「その体力や食力を上げるために、今日からできることはなーに?」
「ストレッチの内容を変えて、体幹と筋力をつけることを意識しながら、少し長い距離を歩いたりならできると思う」
——ボクは、スキーに行きたい!
——あの一面白一色。
——空は、深いブルー
——キンキンに冷えている風。
——空気も水も、食べ物も、すべてが最高の環境が整っている!
——山のてっぺんから、一気に滑り降りるあの快感も!
——自分の思う通りに板と体が一体になった時の、あの満足感も!
★★ボクの心に闘争心が芽生えた
でも、実は、ボクは寒いのが大嫌い。
だから、本当は、「冬なんて来なきゃいい」って、いつも思っている。
でも、そんなボクが、スキーにのめり込んでいったのは、こうした環境に加え、何と言っても現地の良き人たちとの楽しい時間がもてるから。
優しさと厳しさとを兼ね備えた、大地のような人々。
それは、自然と隣り合わせで生活をしている彼らだからこその優しさであり、厳しさだ。
都会の人からは決して感じることはできない。
何度も落ちた、スキー検定2級。
あまりのショックで、荷物の重みがいつも以上に肩に食い込むのを感じながら、スキー場から宿まで歩いて帰った。あの時は、日頃の優しさは微塵も感じられなかった。
でも、厳しい態度で接してもらったおかげで、ボクの心に闘争心が芽生えた。
ぬるま湯で育ってきたボクの中に力強い精神力を育んでくれたのは宿主の中村さんご夫婦、ボクにとっては、第二の親でもある。
彼たちがいたからこそ、スキーを続けることができた。
そして、知らず知らずのうちに、「もっと上手くなりたい!」と思うようにもなっていった。
——やっぱり、そうなんだ!
——ボクは、スキーに行きたい!
——行くことができるんなら、多少きつくたって体力をつけることにチャレンジしてみたい!
「ボク、学校に行けそうだよ! 駅まで、走ってみたら走れた!」
軽くなった自分の体の動きを確かめたくて全力疾走をしてみた。
まるで、オープンカーにでも乗っているかのように、風景の動きが早かった。久しぶりに、気分は爽快だった。
「あら、よかった!」と、意外とあっさりとした親の返事だったが、安心している様子が伝わって来る。やっぱり心配しているんだよな。
★★「生きていれば、いくらだって勉強もスポーツもできる」
あの親の宣言の日以来、ボクはピタッと病院通いもやめた。
その代わりに、晴れていようが雨が降ろうが、1日1回は外に出かけるようになった。
1km、1.5kmと、歩く距離を延ばしながら、同時に、歩く速度も少しずつ速め、小走りやスキップもメニューに加える。帰ってきてからは、硬くなっていた体をほぐしながら、少しずつ体幹を鍛えられるようなストレッチも取り入れた。
半年前、あんなに激痛がひどくて、ベッドの中でもがいていたのが信じられない。
そして、1ヶ月間の自主トレの結果、猛ダッシュで走ることもできるようになった。
不思議なことに、体力が戻ってくると学校へ行く自信も戻った。
勉強には、ついていけない。
でも、一人で勉強するよりも、やっぱり、友達と一緒に学びたい。
毎日、くだらない話でもいいから、思う存分話をしたい。
学校に行く前日の夜。
「なんで、もっと早くに教えてくれなかったの?」と、これまでの疑問を投げてみた。
「なんの話?」と、とぼけた返事。
「自主トレのことだよ。こんなに早く痛みから解放されるんなら、もっと早くやりたかった」
「そりゃー無理だわ。1つずつやってみて、良し悪しを見ながら進めないとね。しかも、目に見えない病だからよくわかんないし。でも、病気の原因が『気』だから、その流れをよくする『細胞くん』を元通りの姿に戻してあげるための『食べ物』を食べて、『運動』して、『勉強』したら治るんじゃない?って思ったのよ。そもそも、赤ちゃんの時は元気だったんだからね。母さんもとってもいい勉強になりました」と、笑いながら返事がきた。
予想外の答えに、
「人の体で、実験してたの? どんなに辛かったと思ってんの? まったく!」と、あきれながらも、どうしても聞きたいことをこの際、聞いてみようと決心した。
「あのさ、前から聞きたかったんだけど、
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