ボーダーの私が『普通』になるまでの物語⑦
「母親の存在」
この時の私の一番の悩みは母親との関係だった。
過食してしまうのは「母親にストレスを感じるから」と思っていた。
何か言われるわけじゃないのに母親の存在に心が揺さぶられる。
テンションが左右される。
だから一緒にいるのが苦しかった。
同じ空間にいるだけでイライラした。
母からしたらたまったもんじゃない、、
頭では理解していても、気持ちがついていかない。
そんなイライラを母親にメールでぶつけた。
その返信がそっけなくてさらにイライラした。
「なんでそんなメールなの?」
「普通はこうするよね!?」
「母親なのに何でそんなこともわからないの?」
「なんで私が嫌がるようなことをするの?」
「ねえ、なんで!?」
当時の私は、自分の考えがみんなの考えだと思っていた。
だから当たり前のように母親にも自分と同じを求め、思い通りの答えが返ってこないとイライラしたんだ。
考え方は一つでそれ以外はないと思っていた。
知ろうとしなかった。相手を理解しようとしなかった。
世の中にはいろんな人がいて、いろんな考えを持っている。
自分と全く同じ考えを持っている人間なんていない。
それを理解したのはもう少し先の話だ。
カウンセリングの先生とも話し合って、一人暮らしをすることにした。
最初から家を借りるのは不安があったから、ウィークリーマンションからスタート。
「自由」
誰の目もない。
誰かのせいにはできない。
本当に自分と向き合いきる時間だったと思う。
もちろんうまくいかないことも多かった。
真夜中にマンションのボロボロのエレベーターで下に降りて、食料を買いに行っては、大量に食べて吐いた。
私が借りていた部屋の付近は人通りも少なく、まあまあ治安が悪いところだった。
今思うと結構怖い、、
ただ、当時は私は自分なんてどうでもよかった。
だから、怖いとは感じていなかった。
何かあったらその時はその時。
自分以外の人がどう思うかなんて微塵も考えてなかった。
掃除、ごみ捨て、ごはんの支度、全てを自分でやる必要があった。
今までは過食をする食べ物を母親に買ってきてもらったり、片づけも母親にしてもらい、甘えてばかりだった私。
1人暮らしは確実にターニングポイントになった。
感情もそこまで大きくは揺さぶられない。
揺さぶられるときは自分の問題と考えられた。
そんな母と離れた環境の中で、少しずつ前を向けるようになった。
「アルバイトをしてみよう」
バイト情報誌をみながら働けるところを探した。
が、ほとんどの応募条件が「高卒以上」となっている。
私は高校を途中で辞めてしまったので最終学歴は「中卒」
働こうと思えば中卒でも働けたと思う。
でも、自信がなかった。正直怖かった、、
自分に自信をつけるためにも、今後の選択肢を広げるためにも高卒認定を取ることを決めた。
「22歳。少しずつ、少しずつ」
高卒認定を取ると決めたはいいが、何をどのようにしたらいいのかわからなかった。
とりあえずネットで調べてみたところ、高卒認定の資格を取得する学校があるらしい、、
さっそく資料請求。そして連絡。
私にとっては全てがチャレンジだった。
申込の電話するのも、申込に行くのも、家族や病院の先生以外と接するのは本当に久しぶりだった。
ストレスを感じることも多かった。過食も続いた。
ただ、高卒認定を取ると決めた私は1つのルールを作った。
それは・・・
「高卒認定を取る それ以外は何をやってもいい」
決めた日に絶対試験を受け、そして合格する。
それ以外の生活はなんでもいい。
いくら過食してもいい。嘔吐してもいい。
家でくだぐだしてもいい。学校に行っていなくても、働いていなくても、友達がいなくても、恋人がいなくても、別にいい。
今思えば、ずっと否定してきた自分を、何か1つの目標に向かうことで受け入れることができたのかなと思う。
いざ、スタート!
まずは受験する科目を確認。
必要な書類を取りに中退した高校にも行った。
まさかまた行けるとは思わなかった。
私にとっては全てがチャレンジ。
大丈夫。少しずつだけど確実に前に進んでいる。
勉強はDVDを使って進めていく。
解いた問題を郵送で送り、採点してもらう方法だ。
何回かあるスクーリングは緊張した。
久しぶりに長時間人と接した。しかも先生は男の人。
苦手・・・
すごい疲れたけど、スクーリングを終えてエレベーターに乗り、学校を出るときは、妙な達成感があった。
うまくいかないこともたくさんあった。やっぱりダメかもと思うことも山ほどあった。
だけど、目標は決まっているから、そこに向かってもう一度頑張ることができた。
そして・・・
見事合格!
自分で決めた目標を達成したのは久しぶりだった。
次はもともと決めていたアルバイト探しをスタート!
著者のSaito Akiさんに人生相談を申込む