【2013年、MTB全日本選手権DHIマスターズ】ヘルメットが割れるほどの転倒
フラットセクションを走り抜け、テーブルトップジャンプが2つ待ち受けるセクションへのステップダウン。バイクを信じて踏み切り、溝を跳び越えて向こうのコブの裏側にふわっと飛び降りるはずでした。
激しい衝撃と同時にハンドルバーを握っていた手ははじき飛ばされ、急激に速度を失ったバイクの上を、身体だけが踏み切りの勢いそのままに飛び越えていきました。29erの前輪はコブを飛び越えることが出来ずに刺さってしまい、バイクが止まってしまったのです。
ヘルメットの頭頂部に激しい衝撃を受け、脊椎を走り抜けました。頸椎はヘルメットとそれを支えるリアットブレースのおかげで損傷を免れましたが、胸椎にものすごいインパクトが入ったのはその瞬間にわかりました。
「下半身不随?脚が動かなくなっているのでは?」
と言う不安をいい意味で裏切って、両方の脚が地面に立ち上がりました。声にならないうなり声をはき出し、かろうじて胸郭を囲む筋肉群が止まるのを抑え、呼吸を続ける事ができました。
バイクを引き起こし、本来なら勢いで駆け上がるはずだったテーブルトップの斜面をペダリングで登ります。激しい、そして危険な状態の転倒であったことは、自分でも理解出来ています。周囲で数名の観客が固まっているのが、肌の感覚でわかりました。
それでも、なんとかゴールにたどり着きたい。これで終わりにしたくない。悲しんでいるような、怒っているような、今でもよくわからない感情が、全身を駆け巡っています。
後続は30秒後にはスタートします。案の定、すぐ先のドロップオフで追いつかれます。エスケープルートへよけ、先行してもらいました。
なんとかゴールしたモノの、まともにバイクから降りられない状況。手伝ってもらってトラックに積み込み、車に戻りました。トレーナーであるみっちゃんに、転倒したことを伝え脊椎のチェックをしてもらいます。現時点では明らかな脊椎の損傷は見受けられず、明日も会場に留まることにしました。
脊椎と肩甲骨周辺の関節にB.aメソッドを施して貰い可動域を回復しました。モーラステープとロキソニンで痛みを抑えようとしましたが、楽になることは叶いませんでした。
7月20日(土)
朝、起きても状況は変わりませんでした。良くなっていませんでしたが、悪化もしていませんでした。ダウンヒルバイク一本で走ることに決め、用意します。
タイオガ様から26インチの軽量のタイヤをサポートして頂きました。
ヘルメットが割れていることが判明したので、OGK様から新しいヘルメットに交換して頂きました。
ですが、この日どうしても上手く走ることが出来ませんでした。
バイクをトラックに積み込むため持ち上げるたびに背中に強い痛みが走ります。縦方向に衝撃が加わるセクションでも、背中に響きます。ステップダウンは、この日の最後まで飛ぶことが出来ませんでした。
ただ、ずっと不安だった脊椎の圧迫骨折は、痛みの位置がはっきりしてきた感じから見て無さそうだと思えることが、この日の数少ないいいニュースでした。
著者の館 正訓さんに人生相談を申込む
著者の館 正訓さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます