石屋に18歳で修行に出て学んだこと(3) 「名前を呼んでもらえなかった。」

前話: 石屋に18歳で修行に出て学んだこと(2)「石工になる切っ掛けと父親。」
次話: 石屋に18歳で修行に出て学んだこと(4)「理不尽の中で教えてもらったこと。」
著者: SUSSIE LURE
僕が選んだのは、実家から徒歩で15分ほどの石屋だった。
石屋ってのは結構世界が狭いので、大体つながってる。
どこどこの職人の息子。

それは嫌なので、できるだけつながりのない石屋を探した。
幸い父親が勤めてる石屋は都内の寺院が縄張り※1なので、地元で探していた僕にはあまり影響がなかった。
石問屋のタケちゃん※2に確認もした。
雇ってくれた石屋は、実家からチャリで15分程度のそこそこ大きい石屋だった。
社長、奥さん、営業さん、事務員さん、職人さんもいて社員数10人程度だった覚えがある。家族経営がほとんどだと思う業界でまあ立派なもんだと思う。

現場の職人さんたちの構成は、
・現場監督 兼 現場責任者_番頭さん
・職人A せきさん
・職人B やまちゃん
・職人C わーさん
・先輩 Sさん
職人さんは皆さん僕の父親より年上。先輩は5歳年上。
自分の子どもか弟が入ってきたみたいで、みんな喜んでくれた。
「若い子が入ってきてくれて、うれしい。仕事が受け継がれる。」番頭さんは喜んでくれた。
大歓迎で迎えられた僕は、右も左もわからず毎日通っていた。
先輩のSさんがいろいろ指示してくれて、体力も無いけど毎日必死に水汲みしたり、
穴ほったり、荷物運んだりしていた。
数カ月後、ひとつの事に気がついた。
先輩のSさんは、僕の下の名前を呼んでくれたのだが、
職人さんたちは「あんちゃん」「こぞう」なのだ。

やまさん
「おい、こぞう。ジュース買ってこい。」
「・・・・・はい!」
わーさん
「あんちゃん。あれもってこい。」
「・・・・・はい!」
編集

別に機嫌悪くてそう言ってるわけではないようだ。
名前を覚える気がないみたいだ。
まあ、職人の世界なんて数年は「丁稚奉公」みたいなもんだ。
そんな感じで一年ぐらいは、「あんちゃん」だった。

※「こぞう」は番頭さんがガラ悪いからやめろ。とほかの職人さんに怒ってた。
 問題そこかよ。。。と思ったけど。。。

=======================
ちょっと解説。
石工とか、大工とか、職人仕事と呼ばれる職業はだいたい同じかと思うけど、普通の「就職」とは違うことをご理解いただきたい。
普通の会社やお店でもいいけど、18だろうと、会社に入れば「就職」で「新入社員」だ。
石屋は「修行」で「弟子入り」である。
最初の5年間は「修行」の期間で、その間は「丁稚・小僧」とも言う。
参考
http://ja.wikipedia.org/wiki/丁稚
=======================
※1
石材店の多くは慰霊施設の付近に居を構えたり、契約を行っている。
つまり、寺院等で“出入りの石屋”が決まってるのだ。かなり密接に。。。
※2
石問屋のタケちゃん。親父の悪友?某石問屋の専務。そのうち出てくるかも。

次回予告

石屋に18歳で修行に出て学んだこと(4)
「理不尽の中で教えてもらったこと。」

著者のSUSSIE LUREさんに人生相談を申込む

続きのストーリーはこちら!

石屋に18歳で修行に出て学んだこと(4)「理不尽の中で教えてもらったこと。」