石屋に18歳で修行に出て学んだこと(4)「理不尽の中で教えてもらったこと。」
数年すると、呼び名も「あんちゃん」から「ゆき」に変わり、
肉体労働にも体がだんだん慣れてきて少し余裕ができたきた。
今思うと「職人」と呼ばれる人はコミュニケーションが不器用な人が多い。
コミ障とでも言うのだろうか?
いや、ちがう。きっと必要がないのだ。
余計な口聞く暇あったら仕事しろ。的な何かがあるんだと思う。
(たまにおしゃべりな人もいたけど、無口な人のほうが多かった)
今(というか、業種かな?)みたいに、教育制度なんてこれっぽっちもない世界。
だーれも仕事教えてくれません。
業界特有の言葉もあっても誰も教えてくれない。
仕事は基本、「見て覚える」「盗む」「怒られて理解する」だ。
言葉もわからない。
「こっぱ」→「石のかけらなどのゴミ」
「よっこする」→「どかす」
「ねこ」→「一輪車」
等々
おーい、ねこもってこい!
っす!
にゃぁぁぁ〜〜〜〜
バキッ!!!
・・・いたい。。ねこっていったのに。
みたいなコントして殴られて覚えていくわけです。
修行中にもランクみたいのがあって、
「こぞう」→「手元」ってランクがある。
「手元」になると名前を呼ばれるし、名の通り職人さんの横で手伝いをする。
道具を取って渡したり、職人さんが次することを見越して段取りをする。
手術室の助手さんがメス渡すのをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれない。
でも、メス!とかは言われない。手が出てくるだけだ。
だから、“手元”って言うのかもしれない。
石と石を積んだり、組み建てたりすると、石と石の合間ができるが
それを「目地」といい、その隙間にセメントなどを詰める道具を「目地コテ」と言う。
目地の間にセメント等を詰める作業を「目地詰め」というのだが、目地コテは5厘(約1.5mm)単位で種類がある。
1)目地詰めしてる、職人さんから手がでる。
2)目地の厚みを予測して、目地コテを渡す。
3)違う。
4)目地コテが飛んでくる。
まあ、そんなことは日常茶飯事。よくあることです。
今思えば理不尽なことはたくさんあった。
職人さんの手違いで、帰りが遅くなって番頭さんに報告するとき
「手元がだらだらしてっから遅くなった。」
なんてこともよくあった。
悔しくて、ふてくされたりもした。
悔しくて、仕事を覚えようと、職人にくっついてうざがられたりもした。
たまに手伝いに来る職人さんは可愛がってくれて、やることをずっと見ててもやな顔せず、にこにこしてた。
「仕事は段取りで9割決まるし、段取りができた時点で仕事はおわったようなもんだ。」
その職人さんから教えてもらった一言は今でも大切にしています。
次回予告
石屋に18歳で修行に出て学んだこと(5)「ちょっとオカルトな話でも。」
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