世界一過酷なサハラ砂漠240kmマラソンで、5km走って息切れするモヤシ男を完走に導いた、心が震えるたった一言の応援メッセージ

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すでに13時間以上歩き続けて疲労はかなり溜まっていました。

でも、「何か」が僕を闇の中へ飛び込ませました。



満天の星空の下で


午前0時、サハラ砂漠は静寂と闇に包まれていました。

空には美しい星と眩しいほどに輝く月。

そして、ヘッドライトの明かりと12.8km先のチェックポイントから夜空に発射されているレーザー光。それ以外は何もありません。


地球の上半分はすべて星空で覆われていて、言葉ではとても表現できないくらい美しい景色でした。


僕は、疲労と痛みを紛らわすために、音楽プレイヤーを取り出し、応援音声を何度も何度も繰り返し聞きました。すると自然と涙が出てきました。



僕たちはサハラ砂漠を歩いていました。


4月10日深夜2時、僕たちはサハラ砂漠の深い闇の中にいました。

スタートから17時間も歩き続けています。


でも、不思議と痛みや疲れはなく、とても穏やかな気持ちで、心は笑っていました。

辺りは光のない闇の中。


でも、僕たちのまわりだけ、スポットライトが当たっているように明るく感じました。


夜の砂漠は昼の暑さと打って変わって10℃近くまで下がります。

それでも寒さを感じることなく、ただ一歩足を前に出すことだけに集中し、”僕たち”は歩き続けました。


スタートから19時間後、ついにチェックポイントに到着


午前4時15分、僕はついに第5チェックポイント(58.1km地点)に到着しました。

ここで3時間ほど仮眠をとり、午前8時に再び歩き始めました。


日本にいる家族や友だちの顔を頭の中で想い浮かべながら、痛む足をサポートするためストックを力強く地面に突いて勢いをつけ進んでいきました。


最後の5kmはキツかったです。


目の前に見えているのに、進んでも進んでもゴールゲートが近づいてきません。

それでも足を止めることなく歩き続けました。


一歩一歩、前へ前へ。


そうつぶやきながら、歩き続けました。


そして、ついに・・・


レース開始から29時間42分後、ついに僕たちはついにゴールしました。


ゴール後に支給されるペットボトルの水が、自分で持つことができず、スタッフの方にサポートしてもらいながら自分のテントへ帰りました。


その途中、たくさんの選手達から「ブラボー!」と拍手をもらいました。

疲れて腕を上げることができない僕は、小さく親指を立てて応えました。


絶対に完走できる。


オーバーナイトステージから一夜明けて、いよいよレース最終日。

変わらず続く足の痛みに耐えながら、僕は一歩一歩進んでいきました。

次第に足の筋肉が固まっていく恐怖に襲われながらも、昨夜の出来事を体験した僕は、不思議と完走できるような気がしていました。


そして、制限時間1時間を切ったところで、ついにゴール地点が目に入りました。

昨夜まで毎日流した涙はもう枯れていました。

僕はただ無心で歩き続けました。


そして、ゴールゲートをくぐると、大会主催者が、私の首に金メダルをかけてくれました。

その時にはじめて、自分がゴールしたことに気づきました。



星空のオーケストラ



レース最終日の夜、表彰式が終わると、星空の下でオペラコンサートが開かれました。

僕は背中で演奏を聞きながら、自分のテントに戻ることにしました。


空を見上げると、オーバーナイトステージの時に見た同じ星が広がっていました。

そして、てっぺんには大きな月が輝いていました。




思えば、体力のない僕にとって、いつリタイアしてもおかしくない過酷なレースでした。


日本を出発する前、たくさんの人に励ましの言葉をもらいました。

レース中にもたくさんの応援メッセージがプリントアウトされてテントに届きました。


9時間の時差があるにも関わらず、インターネットで実況中継を見ながら明け方まで応援してくれた人たちがいました。


僕がもし自分のために走り続けたとしたら、ゴールに辿り着く事はできなかったと思います。


僕は空に向かって、「ありがとう」とつぶやきました。



* * * * * 

    


サハラマラソンから帰国して1週間後。

僕は、一緒にレースに出場した友だちや、日本で応援してくれた友だちと都内の公園に来ていました。

青空の下でシートを広げ、レースを走った時の思い出話をして盛り上がりました。


そしてサハラマラソンに導いてくれた友だちの1人が今度はこんな事を言いました。


「今度はアタカマ砂漠のレースに出ることになったから」


その中には、もちろん僕も含まれています。


そして、お台場の海沿いの道をみんなでランニングすることになりました。

茫然と立っていた僕をよそ目に、次々と走り出す友だち。


みんなの背中を見ながら、僕は心の中で呟きました。


「さあ、次の冒険に出かけよう。」


そして、僕も海に向かって走り出しました。



○おわりに1

ここまでご一読いただき、本当にありがとうございました。

このストーリーが、読んでいただいた方に良いインスピレーションを与えられるよう願っています。


もし今回のストーリーを読んで良かったと思っていただけましたら、下の「読んでよかった」のボタンをクリックいただけると嬉しいです。


○おわりに2

サハラマラソンを支えてくれた私の妻は、

その2ヶ月後に、3日間で715キロを下る、カナダの世界規模のカヌーレースに出場することになりました。


是非、こちらのストーリーも見ていただければと思います。

↓↓↓

うつ・不眠症・ひきこもりだった主婦が3日間で715キロを下る、カナダの世界規模のカヌーレースで世界3位になった話




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