アホの力 1-5.アホ、馴染む
先ほど触れた長期滞在が可能な施設とは、南相馬市は鹿島区のある地区にあった。地域の集会所と消防団倉庫を兼ねた敷地に、支援によって送られてきたテントを20張ほど張った施設で、通称『テント村』と呼ばれていた。
私より早い時期に南相馬入りし、支援活動していた人物が、地区の人と協力して運営している場所だった。
そういう場所なので、当然その場には、市外からのボランティアや、そうした活動に理解のある地元市民が集まってくる。
そこで出来たつながりは、それまでの私の人生では、あまり無かった繋がりだった。
地元の方たちは、とにかくみんな面倒見が良い。毎夜毎夜、何かしらの差し入れを持って来てくれる。そして、南相馬の魅力を、熱く語ってくれる。テント村に滞在中、衣食住に関わる費用は、殆ど発生しなかったほどだ。
そして、地元の人は地元愛を、市外の人は自分のすべき事を、熱く語っていく。
南相馬に来るまでは、どことなくシニカルな目線で、諦め加減に、半ば自動操縦で毎日を適当に過ごしていた私である。
ぶっちゃけ初めは思った…
『何だこの空気は?暑苦しいし気持ち悪っ(笑)!』
宇宙人の集まりのようにも見えた。
けど、剛球一直線な思い込みで、特別な宛てもなく南相馬にやってきている時点で、私も宇宙人なのだ。
すぐに馴染んでしまった(笑)。
『今こそ、新しい【当たり前】を創る時だ』と説く人…
放射能について、知っている限りのことを、酒の勢いで語る人…
国や社会のシステムを、ひたすら批判する人(こういう人とは、いつも意見が対立した)…
…気持ち悪いでしょ(笑)!?
けど…面白いのだ。何が面白いかというと、みんなぶっ壊れてて、変な常識にとらわれていないのだ。
『こんな感覚を持っても良いのかぁ』と意識が転換した瞬間、私の頭上に、あるアイデアが降ってきた。
”南相馬には、こうした『場』が必要だ“
様々な思いを持った人が集まり、アイデアを出し合い、行政が出来ないような事を手掛ける…その受け皿となる『場』が!
誰が?
自分で創ればいいじゃん!
ああ…『思い込み』『勘違い』である。
そんな場づくりの経験など、あるはずがない。知識も金もない。あるのは身体と時間、そしてやる気だけだった。
2011年8月の話である
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