私はここにいる(書き換え)

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「ほまれは知らなくていい」
ほまれは頭が混乱して何が何だかわからなくなっていた。
次の言葉が見当たらない。
ほまれは振り絞るような声で
「じゃ、何で私と付き合ってたの?」
平田は顔色を変え
「俺たち付き合っていたのか?俺はお兄ちゃんだろ?兄と妹だ」
付き合ってなかったと否定された。
ほまれの目から涙がポロポロ落ちる。とめどなく。

「泣くなよ。最後に抱かせてくれないか?部屋は取ってある」
なんて卑怯な男だと思った。今までの思いは何だったんだ。走馬灯のように頭が駆け巡る。

すると、
「やぁ、ほまれ」
と声をかけ真壁が綺麗な女の人と一緒にほまれたちの斜め前に座った。

平田も一瞬、真壁を振り向いた。
真壁はビックリしたような顔をした。

「誰?」
平田はバツが悪そうに聞く。
「クラスの嫌な奴」

泣いているところを真壁に見られては困る。このまま走って帰ってしまおうか。
屈辱と苦痛、そして真壁が目の前にいる。
何でこんな時に真壁がホテルに来るんだ。歳上の女性と密会か?真壁に腹を立てた。
「帰るね、奥さんを大事にしてあげて」
真壁に聞こえないように小さな声で言った。
この場からすぐ立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。真壁がいることにもイライラ感を覚える。

「いいよね?もう一回」
「いやだ」
ほまれが席を立とうとした瞬間、平田も立ち上がりほまれの腕を掴んで引っ張った。引きずられるようにエレベーターの方に行こうとする。
ほまれはとっさに真壁の腕をギュッと握った。
ほまれにとっては助けてと言う意味だった。
真壁は後ろを振り向きほまれたちを見ていた。

「あれ、平田健一じゃん。あ、あいつ同級生。何かあったのかな」
連れの女性に言った。

平田に無理矢理部屋に引きずり込まれほまれは拒否した。
いやだ!いやだ!卑怯者!
声にならない態度で暴れた。
平田は容赦無くほまれを抱いたのではなく犯したのだ。
ほまれは無言で服を着る。
平田がかばんから何かを取り出しベッドに座ってうつむいているほまれの手の中に納めた。
良く見ると封が付いてる札束だった。
ほまれはこの札束で買われていたのか。激しい憎悪に変わる。
「なに、これ」
「俺からのプレゼントだ。好きなように使えよ」
「ふーん、手切れ金?お金なんか貰う必要ない!」
ほまれは札束を投げた。
激しい憎悪がほまれを支配した。
平田はドア近くまで飛んで行った札束を取りに行きまた言った。
「俺たちは付き合ってなんかいなかった。俺はおまえのお兄ちゃんだろ?」
ほまれは呆れて口も聞けなくなった。
平田はほまれのかばんを取りかばんの中に札束を入れた。
「帰る」
早く逃げ出したかっ。
平田は何も言わなかった。
ほまれはかばんを取り逃げるように部屋を後にした。
エレベーターのボタンをカチカチと何回も押す。

大嫌い!大嫌い!顔も見たくない!
エレベーターがやっと来てドアが開く。ほまれは中に入り1階のボタンをカチカチと何回も押した。
エレベーターのドアが閉まる。1階に着くまですごく時間がかかったような気がする。
始めて平田と部屋に行った時と同じように。
走ってホテルのロビーをすり抜けホテルの出口に出ようとした時、女性を連れた真壁とぶつかった。
「ごめん」
真壁の反応を見ることなく走った。

ほまれは自分の部屋に入りかばんを投げ捨て平田から買って貰ったネックレス、バッグ、服、ぬいぐるみ、スニーカーを片っ端からゴミ袋に入れた。そしてベッドへと潜り込む。
ほまれの母親がノックをし
「ほまれ、ご飯は?どうしたの?」と心配気に声をかける。
「ちょっと頭が痛いから寝る。ご飯いらない」
この時ほど親が煩わしいと思ったことはなかった。

俺たち付き合ってたのか?
お兄ちゃんと妹だろ?
その言葉が離れない。

朝起きたら死んでたらいいのに…
死にたい…
ほまれは眠れなかった。


ザワザワと人の声がする。平田がいた。まるでテレビのコント劇みたいだった。…お兄ちゃんとほまれは声をかける。平田には聞こえていない。周りを見回すと女性たちがたくさんいる。平田と楽しく会話している。ある女性がほまれに近づき
「健一はね…」
何かを言いかけた。平田は笑っていた。
「…お兄ちゃん」
「何だよ!おまえなんか知らないからあっちに行けよ!」
それでもほまれは想いを告げたくて何を書いたかわからないメモを平田の黒いジャケットのポケットに入れようとした。平田はそれに気づき
「もう、いいって!」
そのメモをクシャクシャにして捨てた。ほまれは落胆した。外に出ると山の頂上だった。平田はこんなところに住んでいたのか。こんな山の頂上からどうやって帰る?辺りは雪景色だった。
「あの子、死ぬ気よ!」
別の女性が言った。
「ほっとけ!それよりさぁ」
平田が言った。
ほまれは山の頂上から雪の中へ入ろうとした。死んでしまってもいい。平田に止めて欲しかった。後ろを振り向くと平田はヘラヘラと笑いほまれのことなど忘れているようだった。雪の中に足を踏み入れた。帰る道もわからない。死んでもいいか…

夢だった。目覚まし時計を見ると午前11時だった。
目が覚めてしまったんだな…死にたかったのに。

もう、授業は始まっていた。学校に行く気もしない。夢見も悪かったせいか何もする気が起きない。
じっとしていたら頭がおかしくなりそうだった。
母親はパートに出ていない。
ほまれはバスルームに行きシャワーを浴びた。そして頭と身体を何回も洗った。
髪の毛をドライヤーで乾かしながら外に出てみようと思った。

電車に乗った。しかし、つい癖で学校があるビルまで来ていた。
真壁と会いたくない。でも仲間がいる。ディスコへ誘ってくれるかもしれない。
ほまれは教室に入った。
真壁と目が合ってしまった。
「こら、もう授業は終わりだぞ」先生が言った。
「すみません、体調が悪かったので」
明美も真子もみんな帰る用意をしていた。自分からディスコに行こうと誘うことは出来なかった。

「どうしたの?寝坊助」
明美はほまれが良く寝坊して遅刻するのを知っていた。

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