豹変

著者: おとこの 看護師

80代のおばあちゃん

手術目的で施設からうちの病院にやってきました。


この方を一言でいうと 


凶・暴


入院の時、車椅子に乗ったおばあちゃんに挨拶をするためスタッフが近づくと

「なんだよ!?」

とけん制をしてきました。


この時点でうちのスタッフはある理解をします。


この方は危ないな・・・ と。



うるせーよコノヤロー

なにすんだよコノヤロー

こっちくんなコノヤロー


この辺の言葉は一通り使われ


着替えや車椅子への移乗にスタッフが介入しようものなら

ひっかく、つねる、なぐる、ける

この辺の暴力は一通りつかわれていました。


これまた力がめちゃ強く、何をするにせよスタッフは3人いないとどうにもならない状態でした。


ちなみに3人のスタッフの役割は


1、介助する人

2、両手を握手する人

3、両足を握手(握足?)する人


もちろん愛護的にです、アイゴテキニ。


このおばあちゃんが手術をしたら、術後どうなるんだろうと誰もが戦々恐々でした。

点滴やら管やら速攻で引っこ抜きそうだからです。




そして迎えた手術当日。

誰もが固唾を呑んでおばぁちゃんを手術室へ見送りました。


そして手術後・・・



無動でした。



おばあちゃんは無動だったのです。


目は開いてるし、会話も出来る

ただ、無動だったのです。


その動かなさっぷりはスタッフが心配するほどで

「先生、なんの手術したの?」

とみんなで医師に思わず聞いてしまいました。


まぁ当日は麻酔が効いてるからと思っていたのですが、

その後も暴れることなく無事に経過していきました。


ベッドの上でごろごろしているおばあちゃんのそばに行くと

「なんだよ?」

と言ってきますが、手は出してこない。



体を拭いた後に、どーいたしましてと恩着せがましく言ってみれば

「ありがとう」

と返事をしてくれる。


なんとも癒しのおばあちゃんに変わったのです。

もちろん介助するスタッフは、握手する必要がなくなったため一名へと減りました。


それは本人にとって良かったことなのかわかりませんが、スタッフの笑顔は間違いなく増えました。

迎えた退院の日、お迎えに来た施設のスタッフが僕ら以上に驚いていたことは言うまでもありません。

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