ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

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著者: 成瀬 望

ヤンキーに絡まれた?


「何やってんの?」

「金持ってんの?」

「いくら持ってるん?」

きたきたきた。

警戒しつつ会話する。

大阪から来たこと。

学校をさぼっていきなり旅に出たことを話す。


二人とも、ぼくの話に驚いている。

興味をもっていろいろ聞いてくる。

そのうち、彼らも自分の話を始めた。

彼らはぼくより1歳年下の15歳で中学を卒業したばかり。


しばらく話すと、黒髪が家に帰っていき、金髪少年が、家に来ないかと誘ってくれた。

面白いのでついて行くことにする。

こんな展開、わくわくする。






金髪少年の部屋に入ると、暴走族の特攻服がかけてあった。

少年はじっくりと自分のことを話し始めた。


中学時代の武勇伝。

その後、仲間うちで彼だけが進学せずに、ガソリンスタンドで働きだした。

最近、毎日がいまいち冴えなくて。

仕事もうまくいかなくて。

ちょうど今日、ガソリンスタンドの仕事をクビになってしまった。

モデルをしたことがあり、タレントになりたいという夢がある。


「で、家出少年は童貞なん?」

彼が好きな音楽の話を聞いていたら、いきなり話が変わった。






そうだけどと答えると、じゃあやれる女を今から呼ぼうと言い出した。


「1コ上の女やけど、電話してみるわ」

電話はすぐにつながり、受話器をスピーカーフォンにして3人で話せるようにした。

ぼくが敬語で話すと、女の子はタメ口で話そうやと言った。

なんで家出してきたのかとか、旅に関していろいろ話していると、だんだん彼女とも仲良くなってきた。


「で、童貞なん?」

くすくす笑いながら、突然きかれた。

「やりたくないん?」

しどろもどろする。


女の子とこんなにあけすけな会話は今までしたことがない。

高校のクラスメートや同じ部活の女の子達とはあまりに違う。

「こいつとやったってや」

不良少年が口を挟む。

「いまからそっち行こうか?」

女の子ものってくる。


だけど結局、電話でからかわれただけで、彼女は来なかった。






「うちに泊まって行くか?」

金髪少年が誘ってくれたけど、明日の朝早く出ようと思うし、インターチェンジで寝ると答えた。

インターチェンジまで彼も一緒に歩いて送ってくれた。


「最近つまらんことが多かったけど、久しぶりに今日はワクワクしたなあ。

こんな変な家出少年といきなり出会って、こんなに話すなんて。

ガソリンスタンド首になって最悪な一日だったのに。

でも夜中にこんなことが起きて。

何が起こるか世の中わからんなぁ」


彼は同じようなことを何度も言っていた。

ぼくも、今夜は驚いたし出会えてよかったと何度も繰り返した。

2人とも興奮していた。


雨はやみ、少し星が見えていた。





「人生、何が起こるかわからんで、おもしろいな」

金髪ジャージの男前、15歳の不良少年のつぶやく「人生」という言葉が胸に響いた。






「電話番号とか住所を教えて。また連絡する」

ぼくが言うと、

「そういうのはやめよう。今夜だけの偶然。お互いに何もわからんのがええわ」

と彼が答えた。

インターチェンジに着くと、夜があけるまでにまた様子を見に来るかもと彼は言った。

持っていた寺山修司の本を記念にあげた。


「ほんじゃ」

あっさりと別れた。

ぼくは再びパラソルの下で眠った。






目が覚めたら朝だった。

まぼろしみたいな夜だった。






旅、4日目


早朝、バスに乗り込み、一気に滋賀から名古屋へ。

エアコンのついた暖かい快適なバスの中で思いっきり眠る。




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