ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。
突然、目の焦点がいまいち合っていないおじさんに声をかけられた。
「えっ?あ、はい」
と返事をすると、おじさんは
「ほーほーほー」
いきなりフクロウのように叫んで走りだした。
怖すぎる。
目の前で車が止まり、窓があく。
車の中から男性がじーっとぼくを見つめてくる。
なぜかずっと無言で、気味が悪い。
走って逃げた。
なんとか診療所と書いた看板があった。
山の一角が病院になっていて、いつの間にか迷い込んでしまっていたのだろう。
精神病院だったのかもしれない。
町に引き返したら、こんどは町の人がみんなぼくを見つめている気がする。
なんだか気味が悪かった。
やたら石で出来た人形の置物が多い町で、その人形もみんな無言でぼくを凝視している気がする。
疲れでぼくの頭がおかしくなったのか。
早くこの町から抜け出そうと、ひたすら歩いた。
☆
夜、町のはずれの暗い通りの何かの店の前で、地面にひろげた傘の陰に隠れるように寝そべる。
地面が冷たい。
靴を脱ぐと両足とも複数個所、皮が剥けて血がにじんでいる。
痛い。
この2日間、かつてないほど歩いている。
びしょ濡れの靴がしんどい。
雨は止まない。
服は乾かないし、惨めだ。
ぼくはいったい何をやっているんだろう?
探し物は何ですか?
見つけにくいものですか?
カバンの中も つくえの中も
探したけれど見つからないのに
ー「夢の中へ」井上陽水
☆
旅、3日目
早朝の人が来ないうちに出発し、ひたすら歩く。
雨は降り続いている。
梅雨の時期に歩いて旅に出るなんて無茶だったなあ。
しょうがないけど。
☆
昼過ぎ、睡眠不足と足の傷の痛みがどうしようもなく、どこか休める飲食店を探したがなかなか見つからない。
やっと見つけたところは、ちょっと高級なレストランだったけど迷わず入った。
温かかった。
食後、テーブルにうつ伏せで1時間ほど仮眠させてもらう。
そう言えば、授業中は毎日このポーズで寝てたよなと思い出す。
☆
レストランで一休みして眠気は治まったが、足の傷の痛みは変わらなかった。
歩けないほどだ。
こうなったらヒッチハイクでもしようか。
どうせなら高速道路で乗せてもらおうと考えて、インターチェンジを探しながらのろのろと歩き続けた。
夜、やっと高速道路のインターチェンジにたどり着いた。
閉店間際の食堂で温かいカレーライスを食べる。
今日は足が痛すぎてほとんど進めなかった。
まだ滋賀県。
☆
トイレの手を乾かすヤツで服を乾かそうとする。
乾かない。
☆
トイレで誰かに話しかけてヒッチハイクしようと考えたけど、ふと気づくとバス停があった。
見たらハイウェイバスと書いてあって名古屋まで2千円ぐらい。
コンビニで食事を買ったりするだけで数日間でこれぐらいはかかるだろう。
もうこれに乗ってしまおう。
今夜はもうバスがないので、明日の早朝バスに乗ることにする。
休憩所のパラソルの下に椅子を並べて横になる。
明かりもあるし、ほどよい人気もあって安全そうだ。
ここだったら誰かに文句を言われたり、警察を呼ばれたりする心配もないだろう。
安心して眠りについた。
☆
不良少年との出会い
眠って1時間ぐらいしたころ。
人の気配をうっすら感じてガバッと跳ね起きた。
同い年くらいのジャージの男二人組がすぐ目の前にいた。
ぼくが頭突きしそうな勢いで飛び起きたので、相手も驚いて後ずさりした。
二人ともタバコをくわえて、缶チューハイを持ってニヤニヤしている。
一人は金髪。
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