ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。
☆
車に轢かれそうになりながら歩き続ける。
歩道がほとんどない。
日本のほとんどの道路は車用で、歩行者用ではないということを体感する。
歩きづらい。
ずっと歩いていると、道路がまっすぐ東に伸びていないことも、不満に思うようになってきた。
周り道が面倒くさい。
そのうち、山道に入ってきた。
山を迂回するルートもあったのだろうが、方位磁石の通りに東へ適当に歩いたらこうなった。
歩けば歩くほど、山の奥に入って行く。
もう完全に山登りだ。
そういえば、日本の国土のほとんどは森林だって学校で習ったよなと思い出す。
道路を無視して道無き道、藪の中もかき分けながら進む。
「工事中につき、この先通行止め」
警告看板も無視して通り過ぎる。
ヘルメットを被って作業をしている人たちの中を、なにくわぬ顔で歩いてゆく。
☆
高速道路に突き当たったときは、ちょっと考えた。
けど結局、壁をよじ登って侵入した。
車がときどきすごいスピードでビュンビュン通る。
高速道路も、山に沿ってゆるやかにくにゃくにゃ曲がっている。
出来るだけ真っすぐ東へ歩くため、壁をよじ登って高速道路を出たり入ったりを繰り返す。
高速道路の出口の料金所に来ると、職員さんが立っている。
見つかると面倒くさいことになりそうだったので、ほふく前進して道路脇の垣根の間からこっそりと脱出した。
何が起ころうが、それもそれでいい。
☆
やっと山を抜けて町に出れたのは夜9時すぎだった。
道路の標識で京都に入っていることを知って嬉しかった。
洋食屋さんで夜ご飯を食べて、雨の中、野宿できる場所を探して歩き回る。
雨をしのげて、身を隠せて、横になれる人気のない場所。
なかなかそんな場所はない。
町の少し外れで、倉庫みたいな建物の脇が寝れそうだった。
傘をさして地面に置いて、その陰で横になる。
野宿は初めてだ。
所持金も少ないので、宿に泊まるという発想は最初からなかった。
テントも寝袋も敢えて持って来なかった。
持って来なかったらどうなるのかわからなかったから、持ってこなかった。
この旅は、ぼくも神さまも、誰も何もわからない。
わからないほどいい。
いつもの日常、いまの人生、この自分から脱出するための旅なのだから。
☆
むきだしの体でコンクリートの地面に直接横になる。
寒いし、雨の中歩いたので濡れてしまった足が冷たくてなかなか眠れない。
近くで酔っ払いや人の歩く声や音がするたびに、ビクッとして目が覚めてしまう。
眠れないまま夜中の3時をすぎた。
今度は雨がどしゃぶりになってきて、寝ているコンクリートの地面までびしょびしょに濡れてきた。
少し移動して自転車置き場のようなところへ行く。
横になるスペースどころか、お尻を地面につけるほどのスペースもないけど、雨はしのげる。
しゃがんで座ったまま、いわゆるウンコ座りの体勢で眠る。
野宿も初めてだけど、こんな体勢で寝たのも人生はじめてだ。
☆
旅、2日目
2時間後、朝6時に目を覚ます。
変な体勢で寝たせいで、余計に疲れた気がする。
足がしびれてめちゃくちゃ痛い。
やってらんねーと思って、そこに置いてあった自転車に八つ当たりした。
(ごめんなさい)
人が来ないうちにと、出発。
雨はやむ気配なし。
☆
夕方、滋賀県に入ったことを電柱の表示で知る。
町に入り、コンビニを見つけたので、弁当コーナーで一番安かった蕎麦を買う。
お腹ぺこぺこだ。
昨夜から何も食べていない。
冷たい蕎麦を食べる。
冷たいものを食べているのに、雨で冷えた体がだんだん温かくなってくる。
食べ物ってほんとに体のエネルギーなんだと思う。
こんなこと感じたのも初めてだ。
☆
公園を見つけて、地面の水溜りで靴下、パンツを洗う。
というか濡らす。
リュックサックにぶら下げて乾かすことにする。
リュックサックもTシャツもズボンも、汗で塩を噴いているが替えがない。
☆
「お元気ですか?」
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