ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。
ヤンキーに絡まれた?
「何やってんの?」
「金持ってんの?」
「いくら持ってるん?」
きたきたきた。
警戒しつつ会話する。
大阪から来たこと。
学校をさぼっていきなり旅に出たことを話す。
二人とも、ぼくの話に驚いている。
興味をもっていろいろ聞いてくる。
そのうち、彼らも自分の話を始めた。
彼らはぼくより1歳年下の15歳で中学を卒業したばかり。
しばらく話すと、黒髪が家に帰っていき、金髪少年が、家に来ないかと誘ってくれた。
面白いのでついて行くことにする。
こんな展開、わくわくする。
☆
金髪少年の部屋に入ると、暴走族の特攻服がかけてあった。
少年はじっくりと自分のことを話し始めた。
中学時代の武勇伝。
その後、仲間うちで彼だけが進学せずに、ガソリンスタンドで働きだした。
最近、毎日がいまいち冴えなくて。
仕事もうまくいかなくて。
ちょうど今日、ガソリンスタンドの仕事をクビになってしまった。
モデルをしたことがあり、タレントになりたいという夢がある。
「で、家出少年は童貞なん?」
彼が好きな音楽の話を聞いていたら、いきなり話が変わった。
☆
そうだけどと答えると、じゃあやれる女を今から呼ぼうと言い出した。
「1コ上の女やけど、電話してみるわ」
電話はすぐにつながり、受話器をスピーカーフォンにして3人で話せるようにした。
ぼくが敬語で話すと、女の子はタメ口で話そうやと言った。
なんで家出してきたのかとか、旅に関していろいろ話していると、だんだん彼女とも仲良くなってきた。
「で、童貞なん?」
くすくす笑いながら、突然きかれた。
「やりたくないん?」
しどろもどろする。
女の子とこんなにあけすけな会話は今までしたことがない。
高校のクラスメートや同じ部活の女の子達とはあまりに違う。
「こいつとやったってや」
不良少年が口を挟む。
「いまからそっち行こうか?」
女の子ものってくる。
だけど結局、電話でからかわれただけで、彼女は来なかった。
☆
「うちに泊まって行くか?」
金髪少年が誘ってくれたけど、明日の朝早く出ようと思うし、インターチェンジで寝ると答えた。
インターチェンジまで彼も一緒に歩いて送ってくれた。
「最近つまらんことが多かったけど、久しぶりに今日はワクワクしたなあ。
こんな変な家出少年といきなり出会って、こんなに話すなんて。
ガソリンスタンド首になって最悪な一日だったのに。
でも夜中にこんなことが起きて。
何が起こるか世の中わからんなぁ」
彼は同じようなことを何度も言っていた。
ぼくも、今夜は驚いたし出会えてよかったと何度も繰り返した。
2人とも興奮していた。
雨はやみ、少し星が見えていた。
☆
「人生、何が起こるかわからんで、おもしろいな」
金髪ジャージの男前、15歳の不良少年のつぶやく「人生」という言葉が胸に響いた。
☆
「電話番号とか住所を教えて。また連絡する」
ぼくが言うと、
「そういうのはやめよう。今夜だけの偶然。お互いに何もわからんのがええわ」
と彼が答えた。
インターチェンジに着くと、夜があけるまでにまた様子を見に来るかもと彼は言った。
持っていた寺山修司の本を記念にあげた。
「ほんじゃ」
あっさりと別れた。
ぼくは再びパラソルの下で眠った。
☆
目が覚めたら朝だった。
まぼろしみたいな夜だった。
☆
旅、4日目
早朝、バスに乗り込み、一気に滋賀から名古屋へ。
エアコンのついた暖かい快適なバスの中で思いっきり眠る。
☆
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