ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

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著者: 成瀬 望






車に轢かれそうになりながら歩き続ける。

歩道がほとんどない。

日本のほとんどの道路は車用で、歩行者用ではないということを体感する。

歩きづらい。


ずっと歩いていると、道路がまっすぐ東に伸びていないことも、不満に思うようになってきた。

周り道が面倒くさい。

そのうち、山道に入ってきた。

山を迂回するルートもあったのだろうが、方位磁石の通りに東へ適当に歩いたらこうなった。

歩けば歩くほど、山の奥に入って行く。

もう完全に山登りだ。

そういえば、日本の国土のほとんどは森林だって学校で習ったよなと思い出す。


道路を無視して道無き道、藪の中もかき分けながら進む。

「工事中につき、この先通行止め」

警告看板も無視して通り過ぎる。

ヘルメットを被って作業をしている人たちの中を、なにくわぬ顔で歩いてゆく。






高速道路に突き当たったときは、ちょっと考えた。

けど結局、壁をよじ登って侵入した。

車がときどきすごいスピードでビュンビュン通る。

高速道路も、山に沿ってゆるやかにくにゃくにゃ曲がっている。

出来るだけ真っすぐ東へ歩くため、壁をよじ登って高速道路を出たり入ったりを繰り返す。


高速道路の出口の料金所に来ると、職員さんが立っている。

見つかると面倒くさいことになりそうだったので、ほふく前進して道路脇の垣根の間からこっそりと脱出した。


何が起ころうが、それもそれでいい。






やっと山を抜けて町に出れたのは夜9時すぎだった。

道路の標識で京都に入っていることを知って嬉しかった。

洋食屋さんで夜ご飯を食べて、雨の中、野宿できる場所を探して歩き回る。


雨をしのげて、身を隠せて、横になれる人気のない場所。

なかなかそんな場所はない。

町の少し外れで、倉庫みたいな建物の脇が寝れそうだった。

傘をさして地面に置いて、その陰で横になる。


野宿は初めてだ。

所持金も少ないので、宿に泊まるという発想は最初からなかった。

テントも寝袋も敢えて持って来なかった。

持って来なかったらどうなるのかわからなかったから、持ってこなかった。


この旅は、ぼくも神さまも、誰も何もわからない。

わからないほどいい。

いつもの日常、いまの人生、この自分から脱出するための旅なのだから。






むきだしの体でコンクリートの地面に直接横になる。

寒いし、雨の中歩いたので濡れてしまった足が冷たくてなかなか眠れない。

近くで酔っ払いや人の歩く声や音がするたびに、ビクッとして目が覚めてしまう。


眠れないまま夜中の3時をすぎた。

今度は雨がどしゃぶりになってきて、寝ているコンクリートの地面までびしょびしょに濡れてきた。


少し移動して自転車置き場のようなところへ行く。

横になるスペースどころか、お尻を地面につけるほどのスペースもないけど、雨はしのげる。

しゃがんで座ったまま、いわゆるウンコ座りの体勢で眠る。


野宿も初めてだけど、こんな体勢で寝たのも人生はじめてだ。






旅、2日目


2時間後、朝6時に目を覚ます。

変な体勢で寝たせいで、余計に疲れた気がする。

足がしびれてめちゃくちゃ痛い。

やってらんねーと思って、そこに置いてあった自転車に八つ当たりした。

(ごめんなさい)


人が来ないうちにと、出発。

雨はやむ気配なし。






夕方、滋賀県に入ったことを電柱の表示で知る。

町に入り、コンビニを見つけたので、弁当コーナーで一番安かった蕎麦を買う。

お腹ぺこぺこだ。

昨夜から何も食べていない。


冷たい蕎麦を食べる。

冷たいものを食べているのに、雨で冷えた体がだんだん温かくなってくる。

食べ物ってほんとに体のエネルギーなんだと思う。

こんなこと感じたのも初めてだ。






公園を見つけて、地面の水溜りで靴下、パンツを洗う。

というか濡らす。

リュックサックにぶら下げて乾かすことにする。

リュックサックもTシャツもズボンも、汗で塩を噴いているが替えがない。






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