フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第11話

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決別のとき

《これまでのあらすじ》初めて読む方へ

普通の大学生の篠田桃子は借金返済をきっかけにショーパブで働くことになる。始めは気が進まなかったものの接客に慣れ、指名が取れると桃子の中で野心が芽生えてくる。他のホステスとのトラブルなど経て、さらに上を目指したいと願う桃子は恋人拓哉への愛が冷めたことをきっかけに別れる決心を固めたのだった。



拓哉は2本目のタバコに火をつけた。


当時すでにニコチン中毒気味になっていた私は

煙の匂いを嗅ぐとどうしても吸いたくなったものだ。



「で、どういうことかって聞いてんだけど」


「え?」


「え、じゃないだろ。なんの冗談かって聞いてんの。藪から棒に別れるだなんて」


「だから、昨日の電話で言ったよね。学校とバイトで忙しくて気持ちの余裕がなくなったって」


「気持ちに余裕がないからこそ、支えあうのが恋人なんじゃないの?」


そんなキャラじゃないくせに。

私が黙っていると拓哉はふうっとため息をついてタバコを消した。


「分かったよ。で?何なの?聞くからさ」


「…?何?」


「だから、分かんないの?大人の対応してんだよ。俺が折れてやるからさ。

言ってみ?俺の気に入らないところ」


「タッくん…あの、そういうことじゃなくって」


「俺が自分勝手とでも言いたいの?え?それとも何?浮気とか疑ってるとか?」


「違うよ、そういうんじゃない。私の気持ちっていうのはね」


私はミルクも砂糖も入れてない緩くなったコーヒーを見つめた。


「好きって思う気持ちがなくなったって意味なの」


拓哉が私を見た。私は思わず視線を逸らし俯向く。


「は?何それ」


拓哉は引きつった顔で笑った。


「何?本気なの?俺と別れたいって。」


私は小さく頷いた。


「お前、バカ!?俺のどこが気に入らないんだよ!M物産に内定してるし

お前が思ってる以上に俺すげえモテんだぞ!この前なんかサークルで1番狙われてる1年の子から

告られて…でもちゃんと断ったんだぞ、俺!」


拓哉は身を乗り出してまくし立ててくるが

その言葉は1つも私には響いてはこなかった。


「お、親だってなあ、お前の事、あんまりよく思ってなかったけど俺、

頑張って説得してきたんだぞ!」


拓哉は、言いすぎたと思ったのかそのまま黙りこんだ。


「ゴメン…私のことはもう忘れて」


「ふざけんなよ!一方的に決めんな!!」


拓哉は拳でテーブルを叩いた。


周りの客らが一斉に私たちの方を見た。


拓哉はいたたまれなくなったのか乱暴に伝票を握りしめると立ち上がった。


「俺、納得いかない」


「タッくん…」


拓哉は私と目を合わさず憤慨したまま店の外に出て行った。


私はノロノロとした動作で後を追うフリをして店を出たが


拓哉はもうすでにいなかった。


納得したかどうかは別にしても


言うべきことは言えた。


ホッとしている自分自身に


ヒドイ奴


と悪態をひとつ、ついた。






その夜は平日だというのにパテオは賑わっていた。


私は待機席でアドレスを知っている全ての客にメールや電話をしたが


今夜は皆、都合が悪く来られないという。


今週あと一本でも多く指名が取れればボーナスが出るところだったのに。


いざって時に、使えない奴らばっかり…


私は心の中で舌打ちした。



「おっかない顔!」


隣でミホが笑っている。


「え、顔に出てた?」


「うん、ヤバイくらいに。大丈夫?なんかあった?」


パテオに入店して4ヶ月目に入り、気がつくとミホと待機席や更衣室で

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