「国境を越える協働で、新たな価値を実現する」英語苦手な尼崎の税理士事務所職員が、海外ワーカー20人以上の超グローバルスタートアップを立ち上げた話。
株式会社Jobwher(大阪府大阪市北区)は、2020年3月創業、自社ウェブサービス開発を主業とするスタートアップ企業です。2020年9月より、海外高度デジタル人材のリモート採用・リモートチームマネジメントを実現するプラットフォームサービス『Jobwher(ジョブウェア)』のベータ版を公開中です。
自らのサービス理念を体現するかのように、Jobwherは海外リモートワーカー率が80%以上の超グローバル組織。しかしこの組織を作り上げた代表は、意外にも英語が苦手な尼崎の税理士事務所職員。
今回はそんな超グローバルスタートアップ創業の裏にある代表のこだわりを、余すところなくお話しします。
株式会社Jobwher 代表取締役 中井 友昭(なかい ともあき)
2020年3月、株式会社Jobhwerを創業。2020年9月、ウェブサービス『Jobwher』を公開。公開後1ヶ月で登録海外デジタル人材は500人を突破。
世界5カ国から集まったインターン生たちが描いたビジョン
Jobwherは、海外インターンシップの受け入れを促進するAIESECという団体の大阪大学委員会のメンバーが、私たちの運営する大阪のコワーキングスペースを訪れ、海外インターンシップの受け入れを勧めてくれたことから始まりました。ちょうど私自身、将来的な海外とのネットワーク構築のため海外人材の受け入れを検討し始めたタイミングであり、渡りに船と思い、2019年2月に中国とトルコから2名、2019年7月にインドネシア、シンガポール、ブラジルから4名のインターンシップを受け入れました。
最初にインターンシップを受け入れたときは、漠然と、海外の人材と一緒に働いたら楽しそうだとか、組織に新たな視点や多様性が導入できるのではないかとか、英語の勉強になりそうだといったかなり不純な動機でした。
インターンシップ生の要件として第一に求めた条件は、“主体的に考えて行動できること”。私に英語でマネジメントできる自信がなかったからですね。そのくせ、“日本語は喋れなくてもよいからとにかく優秀な方を”、とも伝えました。海外の今の二十歳前後の優秀層がどのような考え方やスキルを有しており、こちらから枠を嵌めなかったときにどのような形で知性や創造性を発揮していただけるのか、純粋に興味を惹かれていたためです。
「日本はこれから労働人口がどんどん減少していくから、海外から優秀な人材を呼び込んで日本での起業や就労を促進したり、海外との連携を深めて企業の生産性向上やイノベーションにつながるようなサービスを企画開発したい」
彼らにまずこのコンセプトを伝え、あとは主体的にアイデア出し・プロトタイプ開発を行ってもらいました。
その結果として産み出されたのがJobwherです。デジタル分野において世界中のソフトウェアエンジニアたちが住む場所に捉われず協働し、一緒にプロジェクトを進めることできる、それによって世界に新たな価値を創出していくプラットフォームサービス。それが、なぜか縁あって大阪に集まり、わずか2ヶ月間の濃密な時間を過ごした彼らが描いたビジョンです。
彼らが自国に帰った後も、リモートでプロジェクトを継続し、1年越しの2020年9月、ようやくリリースへとこぎつけました。
その間、ナイジェリアやタイ、インドなどさらに多様な国々のメンバーが加わり、それぞれに違う国の文化や価値観を融合させながら遠隔でプロジェクトを進めています。奇しくも新型コロナウィルスの拡大感染という出来事もあり、デジタル人材のリモートワークを促進する本サービスは時代のニーズともピタリと合致しました。
税理士事務所の職員として感じたローカル経済圏への危機感
実は私は元々尼崎の税理士事務所の職員であり、現在もその事務所に籍があります。ちょうど十年ほど前に転職したのですが、さまざまな業種業態・規模の中小企業の現場を見て回る中で、FAX利用や手書き帳票の多さ、一昔前の化石のようなシステムを今も使え続ける実態を目の当たりにして当初かなり衝撃を受けたのを覚えています。
日本は今なお世界第三位のGDPを誇りますが、今後労働人口が減少し、世界でのプレゼンスが低下していくことは不可避です。企業や人の生産性向上が急務であると叫ばれていますが、スイスのビジネススクールIMDが発表した「2020年版世界競争力ランキング」において、日本は63カ国中34位と過去最低水準にあり、とりわけデジタル化の遅れが目立つ点が指摘されています。にも関わらず、ローカル経済圏において、ほとんどの中小企業がその働き方やシステムを自らアップデートし、生産性を向上させようとする意欲に乏しく、現状維持に留まり続ける姿が顕著でした。
要因はいくつか挙げられるかと思います。ITに詳しい人材がいない、システム投資をする余力がない、などなど。ただ、私が一番感じているのは、「これまでやってきたことを変えたくない」という現状維持バイアスの強さです。幸いにも日本は先進国で、これまで豊かさを享受してきました。それが今後も続いていくという錯覚に捉われたまま、徐々に足元で地盤沈下を起こしていることに気づきながら、自分が現役の間は何とか逃げ切れるという意識がどこかに潜んでいるのではないでしょうか。こうした状態を茹でガエル現象と呼んだりしますが、一方でそうした間にも、中国や東南アジア諸国で、リープフロッグ(カエル跳び)現象と呼ばれるような新サービスが次々と産み出され、急速に浸透し、既存市場の秩序を破壊していっています。
茹でガエルとリープフロッグ、どちらも同じカエルですが、それらが同じ生態系の中で交わった時にどういう化学反応が起こるか、まずは実地に自社で試してみようと思い、海外の高度人材を受け入れました。結果的に思い知ったのが、私自身が気づかぬうちに茹でガエルになっていたということです。彼らとの協働を通じ、これまでできないと思っていたことが案外あっさり実現したり、今まで想定していなかった可能性が拓かれていくことに興奮を覚えました。具体的には、1年半の間に自社のWebやモバイルアプリのサービスを4つリリースできたことや、フィリピンで拙いながら英語でピッチをするという経験をしたことです。なりふり構わずチャレンジすれば40歳過ぎても人は成長できると知りました。
この海外高度人材の受入れというソリューションを他の中小企業にも展開し、既存の価値観やビジネスモデルを変革し、茹で上がる前に跳び上がる、リープ・ボイルドフロッグ現象とでも呼ぶべきものをあちこちで誘発できるのではないかと気づきました。この瞬間、海外インターン生たちが産み出してくれたJobwherと、私自身が税理士事務所で見聞きしてきた歩みが期せずして重なったのです。
DX推進に、海外高度デジタル人材の活用を
日本のデジタル化の遅れの理由の一つに、日本ではIT人材の約7割がベンダー企業に所属し、多重下請け構造のウォーターフォール型開発と言われる開発スタイルが主流であり、完成までに期間を要し、コスト高になったり、現場のニーズと乖離したシステムが出来上がってしまいがちである点などがよく指摘されます。
またスタンドアロンやオンプレミス型のソフトウェアの利用率が高く、システム間のデータ連携が進んでいないことも要因の一つです。
私たちは、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を進めるためには、ユーザー企業内部にIT人材を確保し、アジャイル開発と呼ばれる手法なども採り入れ、現場のフィードバックを反映させながら現場のニーズに合ったIT利活用を推進していくことが必要不可欠であると考えています。しかしながら、日本国内ではIT人材が枯渇し、とくに中小企業の場合、そのコストがネックとなり、自社で採用することは困難です。そこで私たちが提案するのが、海外高度デジタル人材の活用です。
Jobwherを活用することで、その時々のニーズに合った必要なスキル・経験を有する人材を採用し、まずはクラウド上で最低限のMVPをリリースし、その後現場のフィードバックを反映しながら、短サイクルで機能改善・ユーザビリティの向上に努め、現場がより使いやすいシステムを作っていくことが可能です。ユーザー企業内部にIT利活用の知見とノウハウを蓄積していかない限り、真のDXは実現されません。今後、ネットからリアルへとテクノロジーの適用範囲が拡がるに従い、ますますその差は顕著になっていくのではないでしょうか。
ユーザー企業が海外人材をダイレクトにマネジメントすれば、日本で開発した場合の10分の1から2分の1にコストを抑えることができます。
「日本人同士でビジネスしていれば十分」という世界観は崩れる
ただし、そこで立ちはだかるのは「言葉の壁」です。英語を喋れる人材がいない。そうした声も実際よく聞きます。
事実、私自身も英語はまったく得意ではないため、海外インターンの受け入れ当初、細かいニュアンスが伝わらず、孤立感やストレスを感じさせてしまうのではないかと不安に感じていました。ただ、実際に来て話をしてみたら、そんな杞憂は吹き飛びました。
実は私たちは英語が話せるのです。ただ話したことがないので、それに気づいていないだけです。忘れてはいけません。私たちは少なくとも3年間、英語教育を受けているのです。知っている単語を並べたら通じます。文法的に正しく話そうなどといった邪(よこしま)な考えさえ捨て去れば。同時に「テクノロジーの力」に負うところも大きいです。Google翻訳など翻訳ツールを駆使しながら身振り手振りを交えて一生懸命喋れば、言わんとしていることはおおむね理解してくれます。自動翻訳技術は日進月歩で進み、数年後にはさほどストレスなく、海外の方とのコミュニケーションが可能になるのではないでしょうか。やはり何より大事なのは、双方が相手のことを理解しようと努力し歩み寄ることです。何より海外の優秀な人材と共に働くことは新たな気づきも多く、喜びでしかありません。
日本語という壁に守られ、日本市場で日本人同士でビジネスしていれば十分に豊かであるという世界観は、次の四半世紀で間違いなく崩れていくと予見されます。
私たちが提供するサービス「Jobwher」を通じて、日本の各ユーザー企業に、まずは遠隔でも海外のデジタル人材とともにプロジェクトを進め、協業経験を積み、そしてDXを推進してもらいたいと考えています。
そして彼らとのネットワークが、今後まさに人口ボーナス期を迎えるインドネシアやフィリピンといった東南アジア市場へと打って出る最初の一歩にもなると確信しています。
国境の壁を越えて協働・共創し、新たな価値を実現する場へ
Jobwherを単に企業が仕事を外注するフリーランスのエンジニアを探すサービスといってしまえば類似のサービスは多数あります。しかし、私たちが実現したいビジョンはもう少し別のところにあります。色々な国の人たちが国境の壁を越えて一つのプロジェクトで協働・共創し、新たな価値を実現するチームコラボレーションの場と言ったほうがイメージに近いかもしれません。
地球温暖化や新型コロナウィルスなど、一国では解決できない社会課題が山積する一方、世界はデカップリング(分断)の方向へと徐々に流れつつあります。そんな中、色々な国のエンジニア同士が個と個でつながり、信頼のネットワークを構築していくことは価値があると信じて取り組んでいます。
今後は、Jobwherでエンジニアがたくさんのプロジェクトに参画し、実績を残して信頼スコアを蓄積していくと、彼らが何か新しいサービスを立ち上げようとしたときに、開発メンバーを募ったり、クラウドファンディングで資金を集めたりといったことが容易になるプラットフォームにできないかと考えています。
世界中の高度人材が国境を越えて協働し、信頼のネットワークを基盤にさまざまな社会課題解決へとチャレンジしていくようなサービスになればまさに理想的です。
そもそも色々な国のインターン生を一時に受け入れたことに端を発した本プロジェクトですが、彼ら意欲と才能に溢れる若者たちとともに描いたJobwherのビジョンを、コロナ禍というこの困難な時期にしっかりと芽吹き、成長させていきたいと考えています。
■Jobwherについて
株式会社Jobwher
代表: 代表取締役 中井友昭
所在地: 大阪府大阪市北区西天満2丁目5-3 堂島深川ビル3F
設立: 2020年3月
【お問い合わせ】
■本件・サービスに関するお問い合わせ先
担当:
セールス・プロモーション部
森川 悠希
Email: business@jobwher.com
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