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「ヤンチャごころ」で一歩飛び出す勇気を〜伸びしろへの挑戦が100年続く成長のDNA〜

著者: タカラベルモント株式会社

タカラベルモント株式会社広報室の平岡三季です。2021年に創業100周年を迎えるタカラベルモントの、業界や社会を驚かせてきたエポックメイキングなストーリーを代表取締役社長・吉川秀隆に取材して来ました。創業から1世紀に渡って伝承されてきた、挑戦者魂に溢れたタカラベルモントのDNAをご紹介致します。


■ 部品工場からものづくりメーカーへの転身。手を加えることで生まれる新しい価値。

 大正時代の話ですが、タカラベルモント初代社長の吉川秀信がまだ10代の頃に鋳物屋へ丁稚奉公しました。そこで、「どんな形でも自由自在に作れる」という鋳物の魅力に気づき、「これを自分でやったらいけるのでは!」と考えたことが当社の起源です。1921年に秀信が経営困難に陥った鋳物工場を買収する形で 、今の工場がある大阪の地にて当社の歴史は始まります。創業当時は七輪の簾(す)と呼ばれる家庭用鋳物部品や、マンホールなどを作っていました。しかし、バラバラとしたものを作っていても二束三文にしかならないので、何かまとまったものを作りたいと考えていました。理容室で使われる理容椅子は鋳物部品を使うのですが、この部品注文が増えてきていたことから、いっそ自分たちで作ってみようとなったことで、当社の屋台骨である理容椅子づくりが始まりました。こうして鋳物部品の製造から、付加価値のある「ものづくり」をはじめることになりましたが、伸びしろを見つけては創意工夫して挑戦するのが当社のDNAでありこれまでの成長の原動力です。


■レッドオーシャン市場にて、知名度を飛躍的に上げてくれた「えべっさんの椅子」作戦。

1931年より理容椅子の自社生産をスタートさせましたが、当時大阪だけでも理容椅子メーカーが17社もあり、競争が激しく、新参メーカーは門前払いされることが多かったんです。そこで、自分たちの知名度を上げるために1932年1月10日、今宮戎神社(大阪)の十日戎の参道に理容椅子を並べました。十日戎は商売繁盛の神でもあるえびす様を祀るお祭りですが、夜店が並ぶ中に突然理容椅子が置いてあったことで多くの人が驚き、翌日から「えべっさんの椅子」と一躍有名になりました。当然こうしたお祭りには、商売繁盛を祈願する理容師さんも訪れますので、ターゲットのお客様に直接製品をお試し頂ける場をつくったことは当時の営業手法を考えるとかなり斬新です。現代で言うポップアップストアです。

この時のブランディングのイメージは「商売繁盛のご利益がありそうなえべっさんの椅子!」と言った感じでしょうか。


そして東京へは1935年頃に進出しましたが、当時の大阪の製品は「さかもん」と言われてあまりイメージもよくなく、どこへ行ってもなかなか話を聞いてもらえず苦労したそうです。1945年の終戦を機に、戦後復興で他社に先駆けて製造の再スタートをしたこともあり、1950年頃から販路をどんどん拡大していきました。

そして、国際的な行き来が今ほど自由にできない時代とはいえ、大変魅力的な市場として海外に目をつけました。


■アメリカに進出。椅子文化の強いアメリカ人のニーズが日本品質に磨きをかける。

世界は一つ。良いものは国や人種に関係なく世界中に必要とされている。この精神が創業時から現代まで貫かれていますが、1950年頃の海外営業は今聞いても驚かされるぐらいの視点が豊かで、遊び心のある創意工夫がありました。


戦前も韓国や台湾へ商社を通じて椅子を輸出していたことから、海外でも売れるという感覚が創業者にあったようです。その中でも世界最大の消費国であるアメリカに目を付け、「どうもアメリカという所はいいマーケットみたいやから、一つやってみいひんか」、「なんか分からんけどやりましょか」ということになったのが海外進出のきっかけです。まず1955年にシアトルで開催された「国際貿易見本市」に理容椅子24台を出展しました。品質は現地品に劣りはしたものの、全て現地で売りつくしたことで創業者は自信を深め、翌年1956年にニューヨークの5番街に現地法人「タカラカンパニー・ニューヨーク」を設立しました。日本の製造業としては4番目の進出ですので、当時の感覚としてもかなりの怖いもの知らずな挑戦です。しかも当時米国の理容市場は、2大メーカーが押さえており、この市場に食い込むことは至難の業。営業に回るにしても車も運転できない外国人ですから、免許を取得することから始まりました。そして、前年の見本市で椅子を売って得たお金で、GM車の緑色のバンを購入。とにかくアメリカ中を徹底的に回らないと考え、地図を見て、バンに理容椅子を積んでアメリカをぐるりと一周回りました。ついた先ではイエローページ(電話帳)で理容美容のディーラーを探しては、片っ端からドアを叩く。行って話しして、ちょっと興味がありそうなら、椅子を下ろして、ちょっと動かしてみせて。


しかしこの頃はまだ日本の技術は低く「メイドインジャパン」は粗悪品の代名詞。古くから椅子の文化が根強くあるアメリカの品質には到底及びません。実際、製品のトラブルも多かった頃です。製造技術の未熟さによる機器の故障だけでなく、日本の皮革の染色技術もまだ発展途上で革の色落ちやなどクレームも多かったようです。社員は熱意だけを武器にサロンを毎日回り、クレームには言葉の通じない相手に必死に謝りながら修理をし、より良い品質の部材や皮革材の調達に奔走したそうです。調達先であった日本のビニール業界などを始めとする様々な産業も急激に品質を上げてきた頃であり、産業同士が支えあって日々の工夫により新しい価値を生み出していました。こうした市場からの学びが生まれる度に、改良を着実に重ねて行ったことで当社の技術力も飛躍的に向上していきました。その中でも、次々と新製品を発表することで評判は徐々に上昇していきました。そして米国の2大メーカーの一つであったKOKEN社を1969年に買収するまでに至ったのです。


■アメリカから始まった、デンタル市場への新挑戦

理容椅子から始まった当社の事業ですが、同じ油圧ポンプ機構がデンタルチェアにも使えることから新領域に踏み込んだのが1966年頃。当時他社の油圧ポンプは斜めにしたら中から油漏れがするような脆弱な構造だったそうですが、それではまずいということで当社は密閉式のポンプを製造し、どちらに向いても油こぼれしないものを作りました。これが本当に質の良いものができましてアメリカの競合もコピーをしたぐらいの品質だったと聞いています。チェアの製品構造を見てみるとドイツ製かと思われるぐらいの整然とした美しい構造だったそうです。デンタル領域においても見本市を見て回って競合品を参考にしては製品改良を繰り返すことで、米国業界内でのプレゼンスを確実に上げていきました。現在は全世界に展開している当社のデンタル事業ですが、実はアメリカで始まり日本に逆輸入されたものなんです。


そして当時の販促は、カタログの作り方もかなりアバンギャルド。アメリカ人のデザイナーが素晴らしいアイデアをデザインに反映してくれて、海岸にデンタルチェアを並べて撮影したりもしました。この斬新な撮影写真が使われたカタログは迫力のある仕上がりで、今でもやはり強烈なイメージが残っています。他にもマンハッタンの夜景を背景に撮影したデンタルチェアや、欧州のコロッセオ中心にデンタルチェアを置いての撮影などもあり、なかなか他にはないアプローチでして、一つの独自の世界観が出来上がっていましたね。

アメリカ人と日本人は使う言語が違っても通じ合うものは通じ合う。基本的な人間のニーズというものは住む国が違えど本質的には同じなんです。情熱や迫力のあるものというのはそれだけで強いメッセージ性を放つものです。これらのクリエイティブも強烈なインパクトを生んでくれました。



■プロダクトデザインの重要性。デザインから生まれる感情的価値

時代は少し進んで1970年頃、2代目である吉川秀一はプロダクトデザインにも強い関心を持っていました。機能や品質だけでなく、デザインにのせられる感情的な価値も製品価値として大変重視していました。当時から、定期的にデザイナーのプレゼンテーションを受け、それを製品開発に生かしていましたが、多くの著名デザイナーとのコラボレーションも積極的に進めていきました。ピエール・カルダンやミッシェル・ケネセンなどから始まり、1990年頃にはフィリップ・スタルクといったデザインの世界では誰もが知っている重鎮の方々と製品づくりを重ねました。アメリカ人デザイナーのブルース・ハナによるこちらのデンタルチェアは、その斬新でアイコニックなデザインから、発表と共にデンタル業界に旋風を巻き起こし、その後のプロダクトデザインに大きな影響を与えた傑作となりました。あまりの美しさに他社の社長も購入したとか。現代でこそデザインへの重要性は社会的に広く語られていますが、当時どれほど売上に影響するのかも測れないデザインに投資するということはかなりの強い信念の表れです。しかしこうしたデザイナーの方々との共同制作により得られる議論がものづくりの文化として定着し、現代の私たちの事業にも強いインスピレーションを与えてくれています。


■これからの未来に向けて社長として思うこと

これまでの100年で様々な挑戦を重ねてきましたが、成長の伸びしろを見つけては事業が拡大してきました。七輪の部品から始まり、鋳物による油圧シリンダーを搭載した理容椅子への付加価値製品への転換。そして既存領域を生かし新領域のデンタルチェアの生産を開始し、その後理美容産業で更に拡大するきっかけとなったのが海外のプロ用化粧品ブランドWELLA(独)やClairol(米)などの輸入販売の開始。そしてその学びを生かして自社化粧品の開発をスタートし、自社ブランド「ルベル」を立ち上げるといった形で、より魅力的な仕事を追いかけて100年が経ちました。創業時には思いもよらなかっただろう現在の姿は、様々な挑戦者たちの強い意思がもたらしてくれたもので、彼らの挑戦があるからこその失敗と学びを財産に現在の姿になっています。


文字通り様々な事業を切り開いてきた100年でしたが、これからも挑戦者としての精神を大切にし、社会にとって強く求められる企業となっていきたいと思っています。当社は面白いチャレンジを喜ぶ人材が豊富です。色々な知識や経験、パーソナリティとストーリーを持った人が揃っています。それぞれの夢と知恵を掛け合わせて、新しい化学変化を多いに産んでいきたいと思っています。こうした化学変化こそ、人をワクワクさせてくれる伸びしろをつくってくれます。

挑戦は自信を育みます。どこにでも踏み込んでいけるような「ヤンチャごごろ」で、今よりも一歩前に進む。その一歩飛び出すことで生まれる新しい世界そのものを一人一人が楽しんでいける、そんな姿を目指したいですね。

そして私たちから生まれる奇想天外なアイデアで、市場を賑やかにしていきたいですね。


吉川秀隆(よしかわ・ひでたか) 

1949年、大阪市生まれ。日本大学経済学部卒業後、自動車販売会社で勤務した後、1974年に祖父の吉川秀信が創業したタカラベルモント(大阪市中央区)に24歳で経理担当として入社。デンタル・メディカル機器の営業及び製品企画、理美容機器の営業を経て、1980年ベルモント化粧品常務、1985年に東京支社長。1989年に40歳で社長に就任後、1999年から会長を兼任している。子供時代はショールームが遊び場で、学生時代は同社の工場でメッキ加工やトラック配送のアルバイトをしていたことも。アルバイトで貯めた資金は趣味の車の改造へ。


< 会社概要 >

商号 :タカラベルモント株式会社

代表者 :代表取締役会長 兼 社長 吉川 秀隆

所在地 :大阪本社(本店) 大阪市中央区東心斎橋2-1-1

東京本社:東京都港区赤坂7-1-19

創業 :1921年10月5日

資本金 :3億円

従業員数 :1,544名(2020.3.31現在)

事業内容 :理美容・化粧品事業・デンタル・メディカル事業

URL:https://www.takarabelmont.co.jp/

   https://www.takarabelmont.co.jp/100th/ (100周年特設サイト)

   






 





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