「古さを逆手に」ロングセラー菓子「ココナッツサブレ」の期間限定品、売上約2倍*達成の企画の裏側
発売から55年のロングセラービスケット、「ココナッツサブレ」。“昔懐かしい、昭和のお菓子”というイメージからの脱却を目指し50周年にあたる2015年から若年層開拓に向けた商品づくりや、プロモーションに取り組んできました。ロングセラーの菓子ブランドでは、基幹商品の売り上げの底上げや、ブランド鮮度維持、情報発信策として期間限定商品を企画することが多いのですが、ココナッツサブレもそのひとつ。直近5年で発売した期間限定商品は、通算30フレーバーにものぼります。そんな中、先月2月8日に発売をした「ココナッツサブレ <まろやかコーヒー牛乳味>」は、従来とは一線を画して好調に推移。前年同時期に発売した期間限定商品と比べると、約2倍*の売上を達成しました。商品の入れ替わりが激しい菓子業界において本商品がヒットした要因は何だったのか?今回はその企画の裏側を紹介します。
*昨年同時期発売の期間限定品との、発売後3週間での比較
湯沢 雅貴 2019年より「ココナッツサブレ」ブランドを担当する
ブランドが抱える課題
1965年(昭和40年)生まれの「ココナッツサブレ」は、発売当時から原材料と製法をほとんど変えることなく"サクサクッ、あきないおいしさ" でご愛顧いただいています。しかし、ロングセラーであるゆえに、メインのユーザーの年齢が40代以上に上がっており、学生をはじめとする若年層の開拓がブランドの課題でした。2016年には小分け化をするなど時代に合わせてリニューアルを行ってきましたが、若者がココナッツサブレと接点を持つ機会が少なく、若者へブランドのイメージを調査すると、「昭和のお菓子」といったイメージが残っているのが現状でした。
ココナッツサブレ
古さを逆手に、テーマは“ニューレトロ”
2019年よりブランドを担当する湯沢 雅貴(日清シスコ(株) マーケティング部)は、どうやったら若者に振り向いてもらえるのか日々悩んでいました。そこで注目をしたのが、若者の間でトレンドとなっている“レトロカルチャー”。子どもの時から既にインターネットが普及していた現在の10~20代の若者である”デジタルネイティブ世代”にとって、昭和レトロなものは「あたたかみ」や「懐かしさ」を感じられるとして、純喫茶や銭湯、レコードなど、昔懐かしいものをポジティブに楽しむ文化が流行しています。また、"ひと昔前の文化を現代の新しい感性で再解釈して楽しむ" ことを意味する「ニューレトロ」(New + Retro) という造語も生まれています。
この若者の間で広まる“ニューレトロ”トレンドのように、昔懐かしいものをポジティブに再解釈できれば、「ココナッツサブレ」の、おじいちゃんやおばあちゃんの家にあるような昭和のお菓子、というイメージを払拭できるのでは?と考え、ニューレトロをテーマに設定しました。
「ココナッツサブレ <まろやかコーヒー牛乳味>」の舞台は昭和レトロな“銭湯”!
ニューレトロなシーンとしていくつか候補があった中、第1弾の舞台として選定したのは“銭湯”。銭湯といえば、風呂あがりにビンに入った冷たいコーヒー牛乳を買って、グビグビ飲むのが醍醐味のひとつです。昭和レトロな銭湯で、番台さんから買って飲むコーヒー牛乳の味を再現しようということになりました。
こだわりの味づくり
開発担当の田﨑 奈緒子(日清シスコ(株) 開発研究所)は、銭湯で販売されているコーヒー牛乳の他、スーパーやコンビニで販売されている複数のコーヒー牛乳を飲み比べました。その結果、銭湯にあるようなコーヒー牛乳の味わいには、ミルクのコクとコーヒーのほどよい苦みが重要であることに着眼。ココナッツサブレでこれらを再現するために、ミルクのコクとコーヒーの苦みのバランス調整に苦労しましたが、乳、コーヒー原料の選定と量の微調整により実現をし、世代を問わず食べやすいコーヒー牛乳味に仕上げました。
デザインのポイントは「既視感がないこと」
商品の入れ替わりが激しい菓子市場。いくらおいしくてもお客様に店頭で見つけてもらい、手に取ってもらえないと意味がありません。デザイナーの鈴木 美加(日清食品ホールディングス(株) デザインルーム)は、「何味であるのか」「シズル感」「ココナッツサブレである事」といった、通常のパッケージ制作あれば重要である点は二の次と割り切り、ブランドチームとの打ち合わせで頻繁に出てきた「既視感がないこと」を意識してデザインを考えました。
デザインに落とし込む際に、若者が“ニューレトロ”に求めている「人の温もりを感じたい」という情緒的な価値をビジュアル化することに苦労しました。
実際に女子大生にヒアリングも行い、どんなパッケージが若者ウケするのかも調査しました。
女子大生にヒアリングを行った数々のデザイン
ついに「ココナッツサブレ<まろやかコーヒー牛乳味>」が完成!
調査や話し合いの中で、「人と人とのふれあい・コミュニケーション」をコンセプトに制作をしたこちらのデザインに決まりました。銭湯を楽しむ人間模様をみっちりと密集した絵柄で表現し、若者が好む鮮やかな色使いで現代風に落とし込みました。
社内の会議では、通常品のパッケージとイメージがかけ離れていて、店頭で「ココナッツサブレ」と気づいてもらえないのでは?との意見も上がりました。しかし、若者との接点をもつためにはこのデザインが企画意図に最も相応しい、ということを説明しました。20代女性社員から好評であったことも後押しとなりました。
発売後、SNS等での評判は上々。「パッケージがかわいい!」と“パケ買い”が発生したのとともに、今まで「ココナッツサブレ」を食べる機会が少なかった若い世代の人たちにも食べてもらうことができ、「おいしい!」というお声も多くいただいています。
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今後の“ココナッツサブレ”
今回の企画だけではなく、基幹商品のプロモーション施策への取り組みも通じて「ココナッツサブレ」の可能性が広がりました。今後も55年間培ってきたブランドの良さは守りながら、100年続くブランドを目指して、進化し続けます。ニューレトロ第2弾も引き続きワクワクできるような企画を用意しています。乞うご期待ください!
*担当者の所属は、2021年3月10日時点のものです。
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