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現場と経営を繋げるBIツールの導入支援プロジェクト

著者: 株式会社ジャパン・エンダストリアル

株式会社ジャパン・エンダストリアルの代表取締役・杉山純一が、とある部品加工メーカーを訪問したことがきっかけではじまったストーリー。創業60年目を迎えた部品加工メーカーに、BIツールの導入支援をすることになったが、現場からの反発を受け、プロジェクトは難航。本当に支援すべきはシステムではなく、経営と現場つなげることだった。プロジェクトを通じて、システムだけでは完結できない、人と人の想いを繋いだ経緯について語る。


株式会社ジャパン・エンダストリアル 代表取締役社長

杉山 純一(すぎやま じゅんいち)

2013年に株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ(リンクアンドモチベーショングループ)入社。プランナーとして、日本の大手メーカーのコーポレートブランディング(IR・理念浸透・採用)の支援に従事。2019年に株式会社ジャパン・エンダストリアルを設立。製造業の生産性向上・品質改善等を支援するサービスを提供開始。

埼玉県深谷市出身、上智大学文学部ドイツ文学科卒。好きな詩は”Zum Sehen geboren.” J.W.v. Goethe(『見るために生まれ〔塔守リュンコイスの歌〕』ゲーテ作)


プロジェクト発足の経緯


――プロジェクトが始まった当時の経緯についてお聞かせください。


杉山:プロジェクトがはじまったのは2019年です。ジャパン・エンダストリアルが創業1年目の時ですね。一方で、お客様となる部品加工メーカーは、創業60年目で、関東に本社・工場を持ち、従業員数は約100名。60年目を期に2代目社長が引退し、3代目社長が就任したタイミングでした。


――伝統と歴史のある会社さんに、創業一年目の会社が支援をするということに、不安はありませんでしたか?


杉山:「企業の持つ歴史の差」よりも、「困っている企業には遠慮をせずに踏み込む」ということを大切にしていきたいと考えていたので、そういったことは考えていませんでした。また、お客様ご自身にも、とても恵まれまして。創業間もない会社相手に、真摯に向き合い、本音を話してくれました。


――なるほど。そこから、プロジェクトが発足したと。


杉山:はい。当時、3代目の社長は、「私には、現場がわからないのです」とおっしゃられていました。その企業様は、既にIT化に自社で取り組まれていました。電子帳票や、加工機の情報を取得するシステム、在庫管理システムを導入済みでしたが、それぞれ違うシステムを使用していたため、総合的なデータを見ることができない。それゆえに、現場のことを俯瞰してみることができないことに、お悩みでした。


――それは、もったいない状況ですね。


杉山:そうなんです。そこで我々は、総合的なデータを取り、経営判断に活用することを目指して、電子帳票や、加工機の情報を取得するシステムから、どのような情報をどれくらいとっているのか、を調査しました。そこでわかったことは、これらのシステムがバラバラであることに加えて、システムを管理している部門自体も、バラバラであることでした。製造部門・生産管理部門・品質保証部門という3つの部門にわたっており、それぞれの部門の中で、システムから得た情報が完結してしまっていることで、現場全体の情報を読み取ることができていないことが見えてきました。


――そうやって、状況を「見える化」することから、プロジェクトははじまるのですね。


杉山:弊社は、まずは現場の状態を見ることからはじめることにしていますから。そうすると、先ほど述べた問題点に加えて、「モノの流れを把握しているシステム」がないことも、わかりました。モノが何日間滞在しているか、在庫がどれくらい残っているか、どんな状態で保管されているかがわからないと、どのようなモノが加工されていたかを、正確に見ることができません。今あるシステムと、モノの流れを把握するシステムを導入し、つなげることで、現場の流れ全体を見える化するプロジェクトが発足しました。



システム導入の決定と、ぶち当たった新たな壁


――ずいぶんと大掛かりなプロジェクトのように思いますが、実際はどのように進められましたか?


杉山:まずは、見えてきた課題を整理し、お客様に適したシステムをピックアップし、ご提案をしました。結果、モノの流れを把握するシステムと、BIツールを導入することが決まりました。BIツールとは、ビジネス・インテリジェンス・ツールの略で、企業に蓄積された大量のデータを集め、分析するためのシステムです。


――なるほど。そのシステムの導入に至るまでの経緯を伺えますか?


杉山:実は、導入はすぐに決定しました。本当の課題は、既存の社員の方々による、心理的な壁でしたね。


――心理的な壁、とはなんでしょうか?


杉山:歴史がある企業様で、自社でシステム化に取り組まれている企業様ほど、自社の事業や取り組みに対して誇りや熱量をお持ちです。そして、その分、さらなる変化に対して、懐疑的になったり、反発が起こったりします。


――なるほど。自社を、勝手に変えようとすることに対する、反発ですね。


杉山:おっしゃる通りです。今回の提案が、それぞれの部門でお持ちだったシステムを統合する、さらに上位概念となるシステムの導入であったこともあり、当初、社内からは反発が起きました。「これまでの仕事は無駄になるのか」というお声や、社長が交代されたばかりということもあり、自身よりも経験の浅い経営陣に対する不安感のようなものも、感じられました。


――経営としては、正直、扱いづらい現場だったのでしょうか。


杉山:いいえ、決して私はそうは思いません。自社を守ろうとする、既存社員の皆様の、自社への愛情の表れでもあると思いました。「私には、現場がわからないのです」と、社長の言っていたことの、本当の意味を、そこで私ははじめて理解しました。データが見えないだけではない。心理的に、彼らは繋がれていないのだと、気づきました。



既存社員の方々との対話と、リスペクトの重要性


――それでは、どのようにその心理的な壁を、乗り越えたか、伺えますか。


杉山:私が行ったことは、本当に単純なことで……現場に足を運び、既存の社員の方々と、対話をすることでした。「新しいシステムは、既存の社員の方々のこれまでの取り組みを否定するものではありません」とか、「先代の先輩たちが、何を見ていたか、何を大切にしていましたか?」とか、「先代の技術を、後世に伝えていくための、プロジェクトなんです」とか…それらを、現場の方々、ひとりひとりに伝えました。


――とても時間も手間もかかることのように思いますが…。


杉山:そうかもしれません。けれど、弊社、株式会社ジャパン・エンダストリアルの理念は、「ものづくりの世界をより豊かに」です。今あるものを壊して変えてしまうのではなく、今ある良いものを、さらに良くすることを志としています。だからこそ、これまで現場を支えてきた方々を、決して否定することはしたくなかったんです。例えば、スーツにネクタイの人間が、大切な現場に突然やってきたら、嫌じゃないですか。なので、その会社様の作業着をお借りして、それを着て皆様のところに伺うこともありました。システム導入時には、いかにして現場の皆様の理解を得て、巻き込めるかが、とても大切です。


――システムだけでは、解消できない、人同士のコミュニケーションですね。


杉山:はい、本当に、そこだけは自動化してはいけない領域のように感じました。既存の社員の皆様も、私の話に耳を傾けてくださり、最終的にはご納得をいただくことができました。無事にBIツールの導入が成功し、今では現場の状況が一つの流れとしデータ化されることで、リアルタイムで把握できるようになり、経営判断に役立てることができるようになりました。


本当の成果は、現場と経営を繋げることだった


現場の状況が一つの流れとしデータ化されたことにより、それらの機械を動かすための電気代、管理するための人員などが把握できるようになり、より最適な人員配置や、コスト削減を実現することができた。


しかし、本当に実現できたのは、現場と経営を繋げることだったと、杉山は言う。


杉山:「うちは古くて変われない」という、諦めのお声を伺うこともありますが、変わる必要はないというのが、ジャパン・エンダストリアルの、そして私のスタンスです。そのまま生かし、より良くするための方法を一緒に考えさせていただくこと。それが、ジャパン・エンダストリアルの役割であると、改めて感じたプロジェクトでした。





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