閉園に追い込まれていた「壱岐イルカパーク」再生プロジェクトから2年。「施設の自走」を見通せるまでになった、これまでの挑戦
壱岐イルカパークは、平成10年に長崎県壱岐市が開園した施設でしたが、事業の継続が困難な状況が続いており、閉園に追い込まれそうな状況でした。この状況を変えるべく、イルカパークの再生を中心に、壱岐島全体の観光振興を行うための「壱岐リブートプロジェクト」を始動することになりました。長崎県壱岐市と、当時、内閣府の国境離島アドバイザーであった高田佳岳の共同出資の上、「IKI PARK MANAGEMENT 株式会社」を官民連携の第三セクターとして2018年11月に設立。2019年4月25日に「壱岐イルカパーク&リゾート」として、施設のリニューアルオープンを迎えました。リニューアルから2年を迎え、当初目標であった、「施設の自走」を見通せるまでになった経緯や、これまでの挑戦などについて、IKI PARK MANAGEMENT代表の高田佳岳がお話させていただきます。
2017年、日本の国境離島を盛り上げるための国策が始動し、当時農水省の六次産業化のプランナーをしていた私は、このプロジェクトの調査事業に招聘されました。日本中の国境離島の魅力を探す仕事に就く中で、この壱岐島を訪れたのです。当初は、飼われているイルカに対する良心の呵責により、イルカパークの視察を拒んでいました。しかし、最終的にイルカパークの再生を願う市職員の熱意に押され、視察に行くことになりました。
訪れたイルカパークは、入場料200円で、廃れた小屋があるのみ。護岸されたとても大きな自然の海の入江があるにも関わらず、中心にある9m四方ほどで囲われた小さな生簀に2頭ずつのイルカが飼われていました。この状況を自身の目で見て感じた上で、イルカパークの再生を考え始めました。
イルカパークの大きな課題は2点あると考えられました。1つ目は、働いているイルカトレーナーのスキルと、観光施設のスタッフとしてのマインドセットが期待を超えるものではなかったこと、そして2つ目は、「稼ぐ」仕組みがなかったことででした。
まず始めたことは、イルカトレーナー達と心を通わせる努力をしたことでした。当初、「経営を立て直さないといけない」という経営者視点の私の話と、イルカトレーナーの「イルカを守りたい」という視点の話が、噛み合うことがありませんでした。そこで、とある飼育施設の経営者に相談したところ、「行動心理学」についての一冊の本を紹介していただきました。その本を読むことで、トレーナーの思考や、動物のトレーニング方法について理解することができ、トレーナーの気持ちに寄り添って「同じ言葉」で会話ができるようになりました。
また、飼育の考え方がわかっただけではなく、トレーナーが動物と接する時に使っている知識と技術は、そのまま経営者・マネジメント層が社員達とコミュニケーションをとるために使える技術であるということがわかりました。具体的に言うと、イルカのトレーニングをしている中で、イルカが好ましい行動をした時に、笛を吹いて魚をあげることを専門用語で「強化」と言います。これを人間に置き換えて見ると、イルカにおける魚のような、わかりやすいご褒美にはなりませんが、相手が一生懸命話してくれていることを真摯に受け止め、肯定的に捉え、「話してくれてありがとう」といえば、それはプラスに働く「強化」になり得ます。
これらの基本的な言語での会話や、積極的な強化によって、円滑なコミュニケーションや有意義な議論が可能になり、チームとしてもどんどんと雰囲気が良くなっていきました。
また、事業展開の面においては、来場者数を増やすことと、客単価を上げることに注力しました。壱岐島全体の観光客数は約25万人もいるという実績があったにもかかわらず、当時のイルカパークの来場者数は約2万5千人しかいませんでした。理由を調べてみると、以前の運営では観光バスツアーの受け入れを断っていたことが発覚し、まずは観光バスにイルカパークまで再び来ていただくようにお願いしました。さらに、島外のお客様に向けて広告宣伝を重点的に行い、認知度を高めていきました。また、リニューアルと同時にカフェをオープンし、イルカのふれあい体験を拡充しました。イルカだけに頼らないアクティビティとして、サップやカヤック、キャンプや釣りなどのアウトドアプログラムも新たに展開し、客単価を上げる施策を行ってきました。
これにより、これまで毎年約2,500万円の赤字だった施設が、わずか2年で自走できるところまで来れました。
現在は、「どこにいてもイルカとともに」をテーマに、日本中のどこよりも、ヒトとイルカの境界線が限りなくゼロに近い場所となる空間づくりを行っています。また、宿泊および旅行業、飲食業など、壱岐島全体への誘客を目的とした活動を行っています。新型コロナウイルスの影響により、今後の見通しを立てることが困難な状況ではありますが、壱岐イルカパーク&リゾートの2021年の抱負は、「お客様に常にワクワクを届ける。」です。全てのスタッフ、そしてイルカが一丸となって、来場者のみなさまに「ワクワク」をお届けし、国境の島から、壱岐島全体、そして日本を盛り上げ、明るくしていきたいと考えています。
壱岐イルカパーク&リゾートとは
1995年、長崎県壱岐市が市営でイルカの保護を目的に創業。創業以来、市営にて運営し、至近距離でイルカとふれあえる施設として、年間約2万人程の島内島外の来場者が訪れてきました。2018年11月、長崎県壱岐市と内閣府の国境離島アドバイザーである高田佳岳が共同出資し、「IKI PARK MANAGEMENT 株式会社」を設立。2019年4月25日(木)にリニューアルオープンを迎えました。また、2020年には、アメリカフロリダ州にあるドルフィンリサーチセンター(DRC)と世界で初めて施設としての飼育技術提携を行いました。DRCが提唱する“Relationship Based Training”を取り入れ、ヒトとイルカの信頼関係構築を基礎とした飼育を実践し、日本国内への技術普及を推進しています。
IKI PARK MANAGEMENT株式会社について
長崎県壱岐市と内閣府の国境離島アドバイザーである高田佳岳が共同出資し、2018年11月に設立。壱岐市内の公営遊休施設をファシリティマネジメントにより有効活用し、官民連携で潜在的な資源を磨き上げ、観光交流人口の拡大や、観光消費の拡大により、島の経済浮揚を牽引することを目的としています。その第一歩として、壱岐イルカパークのリニューアルに加え、バーベキュー、マリンアクティビティ事業、キャンプサービスなど島の自然を活かしたアウトドアやレジャーを軸に展開しています。
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