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今日が、残りの人生の最初の1日。

コロナ禍のクラフトビール屋を救った「サンデーカンパニー」という試み

著者: MobilExSchool合同会社

大森山王ブルワリー代表の町田 佳路と申します。大森山王ブルワリーを初めて1年半。常に大変な局面がありましたが、特にコロナによる時代の激変は予想できていませんでした。会社の代表として、色々な判断を迫られる中、そして特に酒の小売という販売機会を失う中で、新しい形のプロジェクトを始めることでその局面を乗り越えることができました。


いや、プロジェクトではなく、救った仲間たちがいました。

それが「サンデーカンパニー」です。

■サンデーカンパニーって?


MobilExSchool合同会社が進める、大森発のクラフトビール「大森山王ブルワリー」では、まち=人、つまり「人が何より大事」だと考え、ビールの名前にも人の名前をつける形でやってきましたが、別に名前をつけるだけで人を大事にできるわけではありません。人財という言葉があるように、会社や組織にとってとにかく大事なのは人であると言われ続けてるが、本当にそれが出来ているのか?口だけになってはいないか?そんなことを常々考えて活動を続けてきました。


そしてその考えを形にしたものが、2020年コロナ禍で始めた「サンデーカンパニー」という試みです。サンデーカンパニーとは、月2回の日曜日に大森地域に関わる人たちと「大森山王ブルワリーは大森山王ビールを通じて、どういう価値・体験・時間を大森の人たちに提供していくか」を1年間かけて考え、実行し、それを検証しながらブラッシュアップしていくチームです。



サンデーカンパニーでは、会社のミッションや行動指針、それに基づくサービスまで一緒に考えます。簡単に言ってしまえば、会社の肝である経営戦略を自分たちでやらずに、町の人たちと一緒に行う。しかも参加費をいただいて、体験として参加してもらう。というちょっと珍しい試みです。

■サンデーカンパニーを始めたきっかけ


地域に根ざし、地域の人たちと共存し、まちを盛り上げていくために活動をしているのに、自分たちだけで進めてもしょうがないのでは?という思いもありましたが、ちょうど別会社で同じ目的で活動を続けていた方が、異動で大森を離れるときに、「関わりなくなっちゃうのは寂しいな〜」という声を聞いたこと、そして、コロナ禍で、色々と生活環境が変わっていく中で、地域とのつながりを増やしたいと漠然と考えている人や、クラフトビールづくりに関わってみたいという人、何より大森山王ブルワリーに関わりたいという興味のある人がいるのであれば、その熱量をうまく活かせないかと考えたことがきっかけです。


2020年3月末に募集し、その中で10名の方が参加してくれることになりましたが、4月スタート予定が、緊急事態宣言もあって、6月スタートとなりました。そしてこの6月は本当にピンチのときでした。

■ピンチの中でサンデーカンパニーで行ったこと


これが2019年8月~2020年6月までの売上数値です。



2019年7月末に事業を開始し、イベントや卸売の開始など年末にかけて、ちょっとずつ販路を拡大し、数値を伸ばしていましたが、2020年に入って、どかんと数字が落ちます。とくに4月〜5月までほとんど何もできませんでした。


そんな6月に始まった、サンデーカンパニーでは、

  • 誰に向けて何を「今」一番提供したい / すべき価値なのか?
  • その行為は将来どんな形になっていきたいのか?


を徹底的に議論しました。もちろん会社であるので、未来の目標も大事です。だけど、この変化の時代、何より「今できること」を考え、それを形にしていくこと。そこに注力し、1つ1つ形を作っていきました。


2020年8月、そんな逆風の中でOPENしたのが、大森山王ブルワリーの公式ショップ「Hi-Time」です。2坪しか無い元地域スーパーの駐輪場。元々はビールの保管場所としての冷蔵庫を置くだけの機能を考えていました。しかし、コロナ禍で人が集まれないけど、1分でも良いからHiと挨拶ができるような関係性を失ってはいけないし、作りたい!ということで現状の「Hi-Time」が生まれました。


(右から3人目が町田 佳路)


そして、「なんかちょっとしたつまみがあったらいいのに!」と言われることもあるのですが、Hi-Timeはまちの酒屋です。飲食店ではありません。Hi-Timeの目的は上記の通り、ちょっとしたコミュニケーションです。もしおつまみも出して長居を生むようなものであれば、大森山王ビールを店主さんの意思で取り扱ってくださっている飲食店と競合になってしまう。同じ土俵に立ちたくない。それがサンデーカンパニーで話した価値なのです。


8月以降の数字が下記です。この「Hi-Time」というまちとの関係性が作った数字です。このように、まちや社会との関係性をサンデーカンパニーという仲間たちとの関係性も作りながら、行ったこと。これが会社を存続させました。近い人たちとの関係づくり、これはサンデーカンパニーを考える元になった「ファンベース」で学んだことでもあります。


近くとの関係を深めていくことが、1番楽に楽しく遠くに行ける。これに尽きると実感しました。


■会社って何??


さて、一旦話はちょっとずれますが、会社で働くということは、会社とその個人の間に、労働⇔賃金という雇用関係が発生しています。どんなにやりたいことができる場所であっても、甲乙関係が出来ている。もっと良い給料がもらえるならと転職するのは、どうしようもできない。言ってしまえば、どうしても損得のある関係になってしまう。


でも、本来、会社とは社会にある課題を自分たちの商品やサービスで解決しようという意思のある仲間の集まりのはず。でも雇用が当たり前になりすぎると、それがうまく機能しないこともある。だけど、やっぱり会社の一番おもしろいところはその意思であり、社会との関係性であって、それが社会にどんな反応と幸せを生むのか、それが根源な気がするのです。

■サンデーカンパニーがもたらしたもの

ちょっとしたことで経営方針がブレそうなことが起きれば、仲間たちからもっとこうしたほうがいいんじゃない?と意見が出る。「ああ、そうだ!」となり、修正していく、しかもすごい速さで。そこには上下はなく、ただ「もっと良い価値を」という意思しか存在しません。それこそが会社というか組織のある姿だと思うし、振り返ってみると、明らかにこのサンデーカンパニーを通して出来た仲間たちに救われたということです。


会社を大きくしたり、健全に保つために雇用関係や契約が必要なことはわかっています。だけど、それを超えた仲間たちと一緒に未来を作っていくこと、そして何より関係を作ることこそが会社の醍醐味であるし、それしか未来を作れないのではないかと考えています。


2021年3月に1期は終わり、2期が始まっていますが、1期の仲間たちで勝手に「裏カンパニー」というのが出来て、メディアにも取り上げられた「TAP TO YOU」というサービスはこの裏カンパニーから生まれました。ここで出会った仲間たちとは、きっとこれからも形を変えながらも続いていく関係ですし、会社とはそんな関係を作る場であると考えています。



だから、僕らのシャツには「Let’s brew!」が刻まれているのです。

(後列右から2人目が町田 佳路)




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