[アステラス製薬 × カンバセーションヘルス] 対話型AIを用いた医薬品の情報提供ソリューション開発ストーリー
医療従事者は、ウェブサイトやMR (医療情報担当者)などを介して医薬品の情報を収集しています。これまでの情報収集方法では、必要な情報を素早く取得できなかったり、問い合せの時間帯が限られたりなど、様々な課題が存在しています。
また、2020年初より新型コロナウイルスの影響で、MRによる対面での情報提供活動は大きく制限されました。弊社は2020年にアステラス製薬様と共同で、医療従事者が24時間いつでも製品情報にアクセスできる対話型AIエージェント「Collabot」を開発・導入致しました。
業界トップの精度を誇る対話型AIを用いた開発秘話を、アステラス製薬 山内英樹様、田村一至様、小泉晋之介様、とカンバセーションヘルス アシュリー・ニジオールとベラ・ヨウロウの対談形式でお届けします。
今回の対談者は、
アステラス製薬様から
山内英樹 氏(情報システム部・コーポレート&コマーシャルパートナーグループ)
田村一至 氏(営業本部 プロダクトマーケティング部 マーケティング統括グループ)
小泉晋之介 氏(営業本部 プロダクトマーケティング部 マーケティング統括グループ)
左から山内氏、田村氏、小泉氏
そして弊社カンバセーション ヘルスより、
アシュリー・ニジオール (Collabotプロジェクトリード)
ベラ・ヨウロウ (APAC 事業戦略ディレクター)
左からアシュリー、ベラ
それでは早速、対談に入っていきたいと思います。
プロジェクトの経緯
アシュリー
― 当プロジェクトは、アステラス製薬様で選定されたデジタルプロジェクトのイニシアティブに基づき、弊社にパイロットプロジェクトとしてデジタルを活用した情報提供システムの開発を依頼されたことから始動しました。プロジェクト発足の経緯を少し教えていただけますか。
山内氏:
近年、DXは、各業界で急速に進んでおります。この潮流を先取り、弊社でもグローバルレベルでの取り組みを進めています。そのパイロットプロジェクトとしてこの度、IBS-D(下痢型過敏性腸症候群)という疾患とその治療薬の、情報提供ソリューションの企画、開発を行いました。まず、1疾患・製品におけるパイロットといたしました。
田村氏:
また、プロジェクトが進んでいた2020年初は新型コロナウイルスによるパンデミックが始まり、日本も緊急事態宣言が発出されたため、これまでと同様のMR活動を行うことが困難になりました。このような状況に対応するためにも、弊社を含む業界全体において、デジタル媒体を介した情報提供の重要度が増しました。
アシュリー
― なぜIBS-Dの治療薬や疾患を対象として選択されたのでしょうか。また、ソリューションとして、なぜ対話型AIを選ばれたのでしょうか。
田村氏:
成熟期にある製品において、新しいデジタルチャンネルを活用することの効果を確かめてみようと考えたことが主な理由です。
小泉氏:
なぜ対話型AIかという質問に関してコメントしますと、短時間で正確な情報を医療従事者に提供することが、製薬企業には求められていると考えています。その観点で、対話型AIの有効性を検証したく、このパイロットプロジェクトとして選びました。
アシュリー
― アステラス製薬様では以前にチャットボットや対話型AIを用いた医療従事者向けの情報提供サービスを開発されたことはありますか。
山内氏:
医療従事者向けのチャットボット開発は、弊社の国内事業にとって、今回が初めてです。もちろん、オウンドメディアにおいての製品情報の提供は以前から行っておりましたが、医療従事者との対話形式で、また24時間使用可能な情報提供サービスはCollabotが最初の試みです。
アシュリー
― 今回、御社のDXの鍵となる重要、かつ初めてのプロジェクトに、なぜ弊社を選んでいただけたのでしょうか。
山内氏:
弊社では現在、世界中の国と地域で医薬品の販売を行っており、企業活動のあらゆる領域において、グローバル化を進めております。それを踏まえた上で、ITソリューションの選択にはグローバルに展開できるケイパビリティーがポイントとなります。潜在的ニーズ、顕在的ニーズを踏まえグローバルで共通に使えるもの、加えて日本語という言葉の問題や技術的問題を克服できるサービスの構築はチャレンジでしたが、カンバセーションヘルス様のグローバルでの豊富な経験を魅力に思い、今回の案件をお願いした次第です。日本国内での経験は今回がカンバセーションヘルス様にとって初めてと存じますが、今まで培われてきたアメリカ、カナダ、そしてEU市場でのご経験は大変参考になると思っております。
AIbotについては、数年、先行するサービス等をウォッチしてきたのも事実ですが、カンバセーション ヘルス様との出会いは、グローバルでのケイパビリティーを見出す転機でした。
カンバセーションヘルス社がある北米最大級のイノベーションハブMaRS
開発チャレンジ
アシュリー
― 開発前の経緯やアステラス製薬様のDXや対話型AIソリューションへのお考えをお話しいただきましたので、ここからは開発に関してお聞きしたいと思います。
先ほどもおっしゃったように今回のプロジェクトは「初めての連続」だったと思います。対話型AIエージェントの開発も含め、いくつかの課題を一緒に解決させて頂きました。私の方から、アバターのデザインとペルソナの設定について、お話させてください。
1.アバターのデザインとペルソナ
アシュリー:
まずはアバターのデザインを確立するまで思った以上に大変でした。弊社が最初にデザインを提案し、アステラス製薬様からフィードバックを繰り返し頂き、ようやく今のCollabotのデザインに落ち着きました。最終的に、現在の可愛らしさもありつつ、信頼性もあるアバターをデザインすることができ、本当によかったです。
田村氏:
今回、私としては海外のベンダー様とお仕事をさせていただくのが初めての経験だったため、言語の違い、文化の違いを踏まえた、正確で密なコミュニケーションの重要性を痛感しました。
私としてはアバターに関しては医療従事者にネガティブな印象を与えなければそれで良いと思っていたのですが、アバターの重要性をカンバセーションヘルス様にお聞きし、少し考えが変わりました。アバターを通してアステラス製薬のカラーを出すことは確かにとても重要だと理解し、そのうえで一緒にアバターを考えて頂きました。最初のアバターは、日本のユーザーの好みを考えると可愛さがもう少し欲しかったので、その様にお伝えしました。次にご提案頂いたデザインは医薬品の情報を提供するアバターとして少し可愛すぎかったのかな。と(笑) この辺りは文化の違いとして、印象に残っています。
ベラ:
3回目で今のCollabotに落ち着きましたよね。弊社デザインチームはアステラス製薬様の過去のマスコットやブランドブックなどを参考に、アステラス製薬様にご評価頂ける可愛さを研究させていただきました。(笑)
弊社としてもよりクライアント様の企業カラーにあったアバターを作成することがボットの信用性、定着化につながると考えているため、最終的にアステラス製薬様に合ったデザインができ本当によかったです。
田村氏:
なるほど。そうでしたか(笑)またアバターに関連してペルソナ設定にも苦労しました。対話型AIエージェントのペルソナを考えるなど全くの初めての経験で、今まで考えたこともなかった概念の為、正直、最初はどうしたらいいのか全くわかりませんでした。改めて、弊社の目指すMR像や、医療従事者とお話しする際のトーンなどから考え始めました。その情報を参考にCollabotのペルソナを考えましたが、その当時は何が正解かわからなかったです。
ベラ:
確かに対話型AIエージェントのペルソナを考えるなんて、普段の製薬企業の業務では、あまりありませんよね。対話型AIエージェントに人間らしさを与えるためには大変重要なペルソナ設定ですが、普段、MRさんが行っている複数の業務を対話型AIエージェントが担うからこそ、医療従事者に好印象を与えるペルソナの設定が大切になってきます。
アシュリー
― アステラス製薬様としてもこのプロジェクトでは繰り返し新しい壁を乗り越え、Collabotのローンチに至ったと思いますが、貴社内部ではどんなチャレンジがあったのか、お聞かせ頂けますか。
2.UAT (ユーザー受け入れテスト) のやり方& ボットの正確さ
小泉氏:
私としては対話型AIのUATは初めてだった為、果たしてやり方が合っていたのか、効率よく出来たのか、大変不安でした。今回は複数の社員でUATを行いましたが、果たしてそれでよかったのでしょうか。
アシュリー:
UATはリリース前にクライアント様に対話型AIエージェントに触れ、正確さ、問題点や改善点などをご指摘いただく機会です。一人でも多くの人が触れることでよりボットの精度の確認、対応力を測ることが可能なため、複数の方でUATを行ったのはとてもよかったと思います。
またUATは、本来は弊社がクライアント様のオフィスまで出向き、リリースへ進むのですが、今回は新型コロナウイルスの影響で全てがオンライン、リモートで行われたため、通常のようなエキサイトメントが減った印象でした。コロナ禍でのUATで弊社として不安もありましたが、アステラス製薬様のご理解あるご対応には大変感謝しています。
田村氏:
私としてはUAT前のインフォーマルテスティングの段階でお見せいただいた対話型AIの精度が思った以上に低く、UAT前まで少し心配していたのが本音です。ですが、UATの際にインフォーマルテスティングの段階から格段にAIの対話精度が向上していたので、安心したのを覚えています。
アシュリー:
実は弊社としては通常インフォーマルテスティングは行わないので、まだ開発段階である対話型AIをお見せするのは心配でした。ですが、今回はアステラス製薬様にとって初めての対話型ソリューション開発であることも承知し、途中段階をお見せしました。UATの段階の精度に満足していただけたのならよかったです。
山内氏:
私としてはインフォーマルテスティングの段階での精度に関してはあまり心配していませんでした。というのも、プロジェクト初期の提案、設計段階でカンバセーション ヘルス様のタクソノミー(タクソノミーについては注釈、またはこちらも参照ください)をお見せいただいて、他社様にはない対話型AI の正確さを理解することができました。
タクソノミー (サンプル)*
ベラ:
山内氏はタクソノミーについても開発以前よりご存じだということですが、他のシステムではなく、タクソノミー型を選ばれた理由を伺ってもいいでしょうか。
山内氏:
これまでに拝見したチャットボット事例は、辞書型を利用しているところがほとんどで、医療情報や医薬品情報を体系的に構築したり言語解析したりできる、または客観的に判断できるとまでは、理解できませんでした。カンバセーション ヘルス様のタクソノミー型は、事前に承認された会話パターンに基づいて、質問者の正確な意図を理解した上で、最適な回答を提供できるので、会話の設計がよりハイレベルかつ効率的に行えるのではと期待しました。よって、製薬会社が信頼をおけるシステムだと理解しています。
アシュリー:
確かにタクソノミーは弊社の対話型AI の精度の秘訣でもあり、最大の魅力だと自負しているので、山内氏にそのように言っていただけて大変心強いです。
最後に
山内氏:
無事、Collabotをローンチでき、カンバセーション ヘルス様には感謝しております。期待を超える精度、そしてスピードで開発して頂きありがとうございました。
田村氏:
これからは、Collabotをより多くの医療従事者にご利用いただけるように、弊社としては頑張らなくてはなりません。
小泉氏:
このようなパイロットプロジェクトでは忘れがちですが、今回のプロジェクトは開発がゴールではなく、Collabotが医療従事者への情報提供ソリューションになって初めてプロジェクト成功です。そのため、弊社としては引き続きマーケティングによって認知度の向上を進めると共に、UXの改善をし続ける必要があると考えております。
アシュリー:
アバターのデザインやペルソナのような問題から対話型AIエージェントの正確さ、UATのやり方への不安といった、いくつもの壁をアステラス製薬様、そして弊社が共に乗り越えられたことにより、完全なリモートにもかかわらず開発スケジュールに沿って無事にCollabotを立ち上げることができたと思っています。今回のプロジェクトは弊社にとっても日本への進出となる大変重要なマイルストーンとなりました。
ベラ:
Collabotはより多くの医療従事者にご利用いただくことで、機械学習を行い、更に優秀なエージェントになります。是非、多くの人の手に触れさせてあげてください。弊社としても引き続き、クライアント様のニーズにあった製品開発を進めていきます。まずはCollabotのリリースおめでとうございます。そして、引き続きどうぞよろしくお願い致します。
------------------------------------
注釈
*タクソノミー
タクソノミーは元々、分類学や分類法を指す用語ですが、IT業界では情報やデータなどを段階構造で整理したものを示します。弊社が開発したタクソノミー型は医療情報に特化したA Iデータモデルで、複雑な医療用語や質問内容の意図を理解し、正しい応答の提供を可能にしたシステムです。
詳しくはこちら: https://note.com/convohealth_jp/n/n004f60efe517
会社概要
会社名:カンバセーション ヘルス
代表者:ジョン リーブス
事業内容:製薬業界向け対話型AIの開発・導入支援・対話型AI戦略コンサルティング
公式サイト: https://www.conversationhealth.jp
Twitter: https://twitter.com/convoHEALTH_JP
LinkedIn: https://www.linkedin.com/company/カンバセーションヘルス
note: https://note.com/convohealth_jp
問い合わせ先
カンバセーション ヘルス APAC事業戦略
ディレクター ベラ・ヨウロウ
TEL:+1(647)-389-3180
e-mail:bella@conversationhealth.com
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ