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人の数だけ、物語がある

従業員体験向上のためにまずは人事の業務改善!ユニリーバとBloomの人事DX

著者: 株式会社Bloom

「世界を変える企業とともに、採用・人事・雇用を変える」をミッションに掲げ、日本・世界を代表する企業への支援事例が豊富な株式会社Bloom。人事領域や技術活用の知見をもとに、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの人事DXプロジェクトを進めています。


「ユニリーバ」といえば、誰もが知る世界有数の消費財ブランドであり、ダイバーシティ&インクルージョンや地球環境に配慮したサステナブルな事業経営の取り組みなどで最先端を走る企業です。


その日本法人の一社であるユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社(以下、ユニリーバ)が、現在取り組んでいるのが「人事領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)」です。日本法人の従業員約500名に加え、新卒・中途の採用活動や副業人材の受け入れなどを実施しているユニリーバ。膨大な人材データを抱え、国内のみならずグローバルに連携が求められ、多忙な人事部門の業務はどうすれば効率化できるのでしょうか。


本プロジェクトはユニリーバのHR領域のデジタル化を推進するため、株式会社Bloom(以下、Bloom)のCTOである吉岡が参画したプロジェクトのストーリーをお話しします。是非、業務改善やDXで社内を巻き込むことに苦労されている担当者の方に参考にしていただければ幸いです。


インタビュイー紹介

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

人事マネジャー/ EX (Employee Experience) 岡田 美紀子 氏

大学卒業後、リクルートグループでキャリア事業を10年経験後、グローバル企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)での人事マネジャー、日系ベンチャー企業を経て、2018年よりユニリーバ・ジャパンにて人事マネジャー。2021年よりユニリーバ内に新設された、EX (Employee Experience)部門の立ち上げとリード。


ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

情報システム部門 マネジャー横山 智美 氏

大学卒業後、SAPジャパンでERP導入のコンサルテーションに従事。2010年にユニリーバ・ジャパンに入社後、サプライチェーンのITビジネスパートナー、1年の上海勤務を経て、2014年からITインフラ担当。社内のDX推進に注力。


株式会社Bloom CTO 吉岡 大輔

10年間、アクセンチュア株式会社にて勤務。データ活用に関するプロジェクトを多数経験した後、Bloomを共同創業。プロダクト含む全ての社内技術利活用の検討・対応、並びにGoogle Cloud公認トレーナーとしても活動中。今回のユニリーバ社との共同プロジェクトのメンバー。


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サステナビリティの実現に向けて先端的なアクションを進める消費財メーカー

--- まず初めにユニリーバという企業について教えてください。


(岡田)ユニリーバのルーツは、1880年代にウィリアム・ヘスケス・リーバという創業者によりイギリスに生まれた会社です。当時イギリスで多くの命を奪っていた肺炎や下痢を予防するために「清潔を暮らしの”あたりまえ”に」をパーパスに据え、高品質な石鹸を誰でも買える価格で発売したのが起源です。現在は世界190カ国で事業を展開しています。


日本の事業は、シャンプーなどに代表されるビューティー&パーソナルケア事業が40%、リプトンなどの食品・飲料事業が40%、洗剤などのホームケア事業が20%を占めています。日本法人の歴史は約50年ほどで、現在はグループ会社5社の合計で約500名の従業員が働いています。



2010年代からは会社としても歴史の転換点がきていると認識し「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」ための成長戦略を導入しました。現在は「サステナビリティを暮らしの”あたりまえ”に」というパーパスに掲げ、環境やダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)など、SDGsの17の目標すべてに貢献するような取り組みを積極的に推進しています。



--- ユニリーバといえば、採用選考時の履歴書の写真と性別情報の欄を廃止するなどのアクションが記憶に新しいです。


(岡田)ユニリーバの製品は、世界中190か国以上で、実に多様な人々にお使いいただいています。そのため、多様性を尊重して事業に活かすダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを、重要なビジネス戦略の一つとして世界中で推進してきました。日本でも、ビューティケアブランドLUXを通じて、履歴書から写真や性別欄、ファーストネームをなくすことを提唱しています。これは、無意識に生じる性別への先入観について社会に気づきを発信しながら、実際に取り除くことを目的とした取り組みです。その他「WAA」(Work from Anywhere & Anytime)という制度では、従業員が働く場所・時間を自身で選択できるようになり、最近では副業人材の活用も進んできました。


誰もが ”be yourself” であるようにとの想いから、一人ひとりの選択肢を広げる施策を進めています。誰もが自分らしく働ける、生きられるようにしていくことが「サステナブル」というキーワードにつながると考えているためです。


人事マネジャー/ EX (Employee Experience) 岡田 美紀子 氏


人事領域のDXの背景は業務改善から生み出す従業員体験の向上

--- 時代を読み、時代の一歩先を行く取り組みの印象があるユニリーバですが、なぜこのタイミングで「人事領域のDX」を進めようと考えられたのでしょうか?


(岡田)DXというと、テクノロジーを活用するイメージだと思いますが、正直ユニリーバの人事部門はまだその段階まで進んでいません。今回お伝えするのは「テクノロジーを活用する土台を作るための第一歩目をどのように踏み出したか」というお話です。


今回のプロジェクトを進めようと考えた目的は大きく2点です。


1点目は、業務の複雑性と属人化を脱することです。

ユニリーバは、各国法人のやり方を尊重してくれる風土の会社です。それが故に、人事制度や評価制度の仕組みを世界共通で持ちながらも日本法人独自の仕組みも発達し、複雑で属人化した仕事が出来上がっていました。担当者が変わっても、新しい技術を取り入れても、サステナブルに業務を進められる状態にする必要がありました。


2点目は、従業員体験 / (EX =Employee Experience)向上のための戦略推進の必要性です。

従業員がユニリーバに入社してから退社するまでの一通りの体験を通して「この会社に来てよかったな」と思ってもらうための取り組みに注力しています。会社が掲げるEX Strategyを推進する大きな力の3本柱として ①デジタルワークプレイス ②働く場所 ③業務の一元化、標準化、自動化 を挙げています。つまりEX向上のためには、人事を含めたテクノロジーの活用が不可欠なのです。


このような動きは、決して新型コロナウイルスの流行の影響ではなく、ユニリーバのパーパスのために以前から進めていたことです。



--- ユニリーバは、グローバルでシステム面を有効活用しているようなイメージがありますが、これから着手することもあるのですね。他社の人事の方でも共感する方は多いかもしれません。このような局面で、今回パートナーとしてBloomを選んだ理由はなんでしょうか?


(岡田)業務改善のプロというだけでなく、人事領域ならではの業務プロセスのプロでもあったからです。

Bloomさんには当初、採用プロセス改善をゴールとしたプロジェクトに参画いただきましたが、一緒にやっているうちにまだまだ人事業務そのものを改善できると感じました。ユニリーバとして、業務コンサルティングの企業をお迎えした経験もありましたが、Bloomさんが人事領域にも詳しかったことで自然と色々お任せする流れになりました。



--- 今回のプロジェクトを推進し、BloomのCTOも務める吉岡さんに伺います。得意とすることや、プロジェクトでの役割について教えてください。


(吉岡)私はもともとアクセンチュアなど2社の企業でエンジニアとして勤務したのち、Bloomを共同創業しました。バックエンド開発のほか、データエンジニアとしての経験があります。Google Cloud公認トレーナーとしてのGCP環境でのデータ活用の講義をする機会もあります。20代の時、上司に鍛えられたこともあり、Microsoft Excelをスピーディに活用することも得意にしています。


エンジニア経験を通じて感じるのは、ビジネスの現場における有用性が大切だということ。技術は活用できてこそ意味があり、「なぜ、誰のために、何を改善するのか」を考え抜いて実現するようにしています。

Bloomでは採用・人事領域のプロダクト提供、コンサルティングを行っており私は技術全般の利活用の責任者をしていますが、事業運営を通じてより一層「現場の有用性」の大切さを実感しますね。


今回、ユニリーバからの依頼をうけ、私がプロジェクトを進める役割を担うこととしました。技術活用へのご期待を頂いていましたが、とにかくまずは関わる方々が業務改善できることを目指し、ここまで進めてきました。



--- 具体的にはどのような業務を改善したのでしょうか?プロジェクトが始まった当初の状態から教えてください。


(吉岡)まずは現状把握のため困っていることを洗い出しリスト化しました。例えば、人員構成管理や月次の異動の管理、それによって起こる人件費や残業代、勤怠データなどのファイナンスに直結するデータの数字の変更に課題がありました。グローバルで使用している人事データ管理ツールがあり、そこからデータを出せるのですが、日本だけで5つの法人があり部門によって欲しいデータの切り口が異なるため、そのままでは活用できません。その上、最長で20年近くもブラックボックスのまま引き継がれてきた業務もあり、かなり複雑化していた部分がありました。


これらの多くは、月次・年次など定期的に発生する業務にも関わらず、業務フローが固まっていなかったり、特定のメンバーしか対応できない状態になっており、とてもサステナブルとは言えない状態でした。かつ、お金に関わる重要なデータのため、担当者のプレッシャーも大きかったと聞いています。


最初に作成した困りごとリスト。着々と進行中。


このような業務のヒアリングを進めていくうちに、


  • 加工される方法
  • 加工される目的


どちらも状態がわからないケースが多く発生していることがわかったので、まずは関係者全員が「必要としているデータ」を把握することから着手しました。次に、元データを加工するプロセスをヒアリングし、過去のインプットデータとアウトプットデータを比較してブラックボックスになった部分を丁寧に紐解いていきました。そこからやっと「必要なこと」「必要ないこと」「アドオンでご提案できること」を整理することができ改善プロジェクトが進み始めました。


結果的にベテランの従業員でも2〜3日かかる、かつミスも発生しがちだったデータが30分程度で作成できるまでになりました。人事部門の皆さんに、時間以上に心の余裕が生まれたと言っていただけるのが何よりもの成果です。



業務改善は運用まで見据えて完成する

--- 細かい業務が複雑に絡み合って、膨大な時間をとっていたのですね。今回の改善に当たって、どんな手法や技術を採用しましたか?その採用の背景も教えてください。


(吉岡)ユニリーバがグローバルで導入しているWorkdayというシステムのデータとExcelのデータをMicrosoft Power Query for Excelを使って処理し、5つほどの必要なレポートを生成できる仕組みを作りました。さまざまなHRツールがある中でこの方法を選んだのは保守・運用を重視してのことです。情報システム部門ではない人事のみなさんがメンテナンスできるのか。かと言って新しいツールを入れたら学習コストが大きすぎないか。全てを天秤にかけるとインターフェイスはExcelから変えないという選択がベストでした。


(岡田)このようなDXという取り組みにはいくつかフェーズがあると思います。ユニリーバとしてはまだITリテラシーが追いついておらず、今回取り組みをフェーズ1として今後発展させていきたいと考えています。パーパスに基づいた業務改善とはどう言ったものか、人事が社内へモデルを示すことができたのは大きいです。


チームの垣根を越えたプロジェクトを経たユニリーバ式DXの今後

--- テレワークが浸透して様々なツールを導入する企業が増えていますが、ツールを入れただけでゴールだと考えてしまい、結果的に運用が上手くいかずに「ツール=上手くいかない」という失敗体験を持っている企業も増えているかもしれません。このような地道で本質的な取り組みが重要ですね。このプロジェクトには、途中からIT部門として横山さんにも参画していただきました。


(横山)人事部門とBloomさんとが協働してRPAのような改善活動を進めていることを社内で聞きました。情報システム部門としてはちょうどMicrosoft Officeを32bit版から64bit版にアップグレードする計画があり、よりデータ活用に積極的に取り組む機運だったため、情報システム部門としても参画しました。


当社にはグローバルで横断して行うITの取り組みも多く存在しますが、日本ではそのまま導入できないケースもあります。市場や業務の変化に対応するためにも、情報システム部門はデータ分析や業務効率化の手段としてMicrosoftのPower Platformや Docusignの活用を促す啓蒙活動を進め、従業員一人一人がITを活用するカルチャーを醸成しています。


情報システム部門 マネジャー横山 智美 氏


--- 非IT部門のスタッフの皆さんにもレベルの高い啓蒙活動を行われているのですね。そんなユニリーバであれば、自社独自の取組みでも人事DXを進められるのではないかと思ってしまうのですが…。


(横山)いえ、今回のプロジェクトは社内の人事部門、情報システム部門、そしてBloomさんの三者が揃わなければ上手くいかなかったと思います。


もしBloomさんがいなかったら、情報システム部門は人事部門の依頼通りに動くことしかできず、必要なデータは作れても、継続性のある業務へと改善するプロセスは踏めなかったでしょう。逆に、私たち情報システム部門も参画していなければ、Bloomさんとしっかり会話して仕組みの運用のケアまではできませんでした。


三者誰が欠けても上手くいかなかったプロジェクトだったと思います。



--- ユニリーバとして今後のIT活用、DX領域での展望は見えてきていますか?


(岡田)私自身、EXの向上には3つの段階があると考えています。


Work Style (Place) → Work Engagement → Well-being


まず初めに働く場所やスタイルが確立されること。その次に働くエンゲージメントが上がること。その2つを経て、瞬間的なものではなく持続的な幸福 = Well-being な状態の創造に繋がるはずです。


これらは、人事部門が幸せに働けていないことには成り立ちません。まずは業務のミスやストレスを生む要因をなくし、スムーズに業務が推進できる環境の確立が必要でした。今回、DXの取り組みの最初の一歩を踏み出せたことで、EXの向上に向けてどんなことができるのか人事部門全体で体感することができました。


このおかげもあり、EX Strategyの中にもある「Degital Work Place of the future」のプランニングが年内にも完成するのではないかと考えています。人事部門ができれば他の部門も真似できます。


会社のパーパスに少しでも近づくためにも、この成功体験を社内に広め、引き続きEX向上の取り組みを継続していきたいです。



--- Bloomとしてはこの先どのように展開させていきたいですか?


(吉岡)ユニリーバは、日本でも世界全体でも多くの生活者に良い影響を与える会社です。サスティナブルを重視する姿勢や、そのためにこそ従業員体験の向上を図る岡田さんはじめ人事の取組みにも非常に共感しています。人事DXはまだまだ取り組みの途中であり、より抜本的な業務改善ができるように支援していきたいですね。


適切な技術選定・ツール活用も考えていきたいですが、何よりも日常の業務に関わる人事スタッフ一人ひとりひとりの負担感や複雑さが高まらないよう、本当に使いこなせる環境作りも重視していきます。


Bloomのミッションは、「世界を変える企業とともに、採用・人事・雇用を変える」こと。我々自身はまだまだ小さな会社ですが、人事領域の実務把握力・技術活用力を武器に、世界への影響力の大きな各業界のリーディング企業に「人事・採用の変化」を届けられるようにしていきます。


顧客企業に提供した新たな変化を幅広く転用・提供し、社会全体の採用・人事・雇用をより良い方向へ変えていくチャレンジを続けていきたいです。



--- 岡田さん、横山さん、吉岡さん、本日はありがとうございました!




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