馬×騎手×音楽:芸術的な「パラ馬術」フリースタイル選曲の裏側
馬場馬術とパラ馬術は、馬術の中でも最も芸術的だと言われています。その中でも、馬とアスリートが特に本領を発揮できるのは、選手それぞれが選んだ楽曲に合わせて自由に演技を組み合わせていくフリースタイルです。
8月26日(木)に東京パラリンピックで、パラ馬術個人金メダルを獲得したオランダの馬場馬術スター、サンネ・ヴォーツ選手は、次のようにコメントしています。
「馬と騎手と音楽が完璧にフィットしたとき、魔法のようなことが起こるのです。良い振り付けの第一の要素は、自分の馬をよく知り、得意な動きを知ることです。そして自分の能力を世界に示す大胆さが大切です。フリースタイルは、馬術競技の馬場馬術やパラ馬術の選手に、その機会を与えてくれます。」
サンネ・ヴォーツ選手は、オランダのトップフリースタイルプロデューサーであるJoost Peters氏と、オランダで最も人気のあるバンドの一つであるHAEVNとのコラボレーションした、新しいフリースタイルを披露しています。シンガーソングライターのMarijn van der Meer氏と、映画サウンドトラック作曲家のJorrit Kleijnen氏によって2015年に設立されたHAEVNの音楽は、ユニークなサウンドを持っています。
サンネ・ヴォーツ選手は使用した楽曲について、次のように語っています。
「HAEVNは、ピアノ、ストリングス、エレクトロニック・サウンドが特徴的な、シネマティック・ミュージックを作曲しています。ヴォーカルのMarijn氏はクリアで温かみのある声をしていて、それがバンドのサウンドをユニークなものにしています。車に乗っているときに初めて聴いたのですが、歌詞がとても心に響きました。
使用した楽曲『Where the heart is』は、夢を追いかけること、自分の道を切り開くこと、そして信念を持って飛躍することを歌っています。私がこの曲を選んだのは、この曲に自分自身を重ね合わせたからです。私も、一般的に受け入れられていない方法であっても、自分がベストだと思うことをして、自分の道を進もうとしています。疑問は常にあります。あえて人と違うことをする必要があるのか?これは正しい選択なのだろうか?この曲は、私に "信念を持て "と言っているように感じます。」
生まれつき足が弱く、他の関節にも影響を及ぼす病気を持つサンネ・ヴォーツ選手は、ヨーロッパをはじめとする世界各国で、チーム、個人、フリースタイルの金メダルを獲得しています。
「馬とアスリートの関係は、成功に不可欠です。良い関係が築けなければ、良いパフォーマンスや調和のとれた動きをとることはできません。デミ(愛馬Demanturの愛称)はとても個性的で、私たちは深いつながりを持っています。彼は私にとって特別な存在です。彼はいつも私に本当に大切なことを思い出させてくれますし、私が自分の夢に向かって進み、何者にも邪魔されず、また善い行いをするように励ましてくれるのです。数年前、ある人が『良いフリースタイルは映画のようなものだ』と言っているのを聞いたことがあります。このHAEVNのフリースタイルは、まさにそれを実現しています。」
イギリスの作曲家兼プロデューサーのトム・ハント氏は、音楽、アスリート、そして馬が完璧に調和し、息を呑むようなフリースタイルを実現させてきた人物です。
ロンドンを拠点とするトム・ハント氏は、シャーロト・ドュジャーデーン選手とカール・ヘスター選手のフリースタイルの音楽を担当しており、東京オリンピックでシャーロト・ドュジャーデーン選手が銅メダルを獲得したフリースタイルの音楽も作曲しています。また東京パラリンピックでは、イギリスのナターシャ・ベーカー選手とシンガポールのローレンシア・タン選手のフリースタイルの音楽を担当しました。
曲作りについて、ハント氏は次のようにコメントしています。
「通常、作曲のプロセスは、アスリートとの打ち合わせから始まります。そこで、フリースタイルについてや、アスリートの好みについて話します。
アスリートの情熱が、私との仕事の進め方に反映されます。アスリートの中には、すべての段階で非常に熱心に取り組み、細部まで完璧に仕上げようとする人もいます。
デモを作り始める前に、馬の大きさ、ペース、表現力などを確認する必要があります。そして、フロアプランを見て、どのように作られているかを確認します。そうすることで、馬の長所を強調することができ、音楽が振り付けのその部分を際立たせることができるのです。馬のペースを最大限に表現するためには、音楽のダイナミクスをベースにすることが重要です。
フリースタイルの音楽を制作する際には、選手がやりたいことや伝えたいストーリーに、いかに音楽を合わせるか、選手と馬のためにスタイルを成立させるかが重要となります。」
しかし、ローレンシア・タン選手の音楽を作曲する際、ハント氏は様々な人の意見を参考にしなければなりませんでした。パラ馬術で世界4位の成績を収めているタン選手は、重度の聴覚障害者です。
ローレンシア・タン選手の音楽を作曲したときのことについて、ハント氏は次のようにコメントしています。
「ローレンシア・タン選手には、音楽を聴かせるだけでなく、彼女が音楽を感じられるようにするための技術も提供しています。
SUBPACは、彼女がバックパックのように身につける技術で、音楽の低周波をフィードバックして、乗馬中に音楽の引力を感じられるようになっています。ローレンシア・タン選手の東京パラリンピックでのフリースタイルの音楽制作は、他のものに比べて長いプロセスを経ており、すぐにできるものではありませんでした。だからこそ、この1年間、彼女と一緒に仕事ができたことは良かったと思っています。」
大会での競技については、東京2020パラ馬術のページ(https://inside.fei.org/fei/games/paralympic/tokyo-2020)をご覧ください。
Photo credit: FEI/Liz Gregg
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