~ランニングソックスも進化し続ける~ファイテンがシリーズ累計100万足を売り上げた「足王」をリニューアルした理由
コロナ禍で、テレワークやオンライン授業が多くなり、運動不足解消のために体を動かす人が増えており、2020年の笹川スポーツ財団の調べによると、週1回以上の運動・スポーツ実施率が、1992年に調査を開始して以来最高の59.5%と発表されました。
出典元:https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/datalist/2020/index.html
こうした背景のもと、ファイテンは2021年10月7日(木)より、「足王レーサー」「足王」をリニューアルします。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000046267.html
「足王」シリーズが発売開始されたのは2013年秋。当時、ランニングに特化した機能ソックスが少なかった中、「足王」シリーズはたちまちランナーから大きな反響を呼びました。
その後、「足王」の開発ノウハウを活かして、ゴルフ専用ソックスや、歩く機会が多いビジネスマンに向けたソックスも販売。2021年9月に売り上げ総数が100万足を突破した「足王」シリーズは空前のヒット商品となりました。
なぜリニューアルに至ったのか、そのきっかけや生産において苦労した点などについて、「足王」を世に送り出した2人に話を聞きました。
(左:商品企画第一部 商品制作チーム/金成奎
右:博士(スポーツ健康科学) 株式会社ブルーミング 代表取締役/ 高尾憲司)
「初代:足王」は商品化まで2年。妥協を許さなかったので時間がかかった
――まずは2人の出会いについて聞かせてください。
金:2011年にランニング用の機能ソックスを作ろうと、「足王」の開発が始まったのですが、なかなか思うようなものができませんでした。その時ですね、高尾さんを紹介いただいたのは。ランナーとして(世界陸上に2度出場し、1998年のバンコクアジア競技大会・男子10,000mで優勝するなど)高いレベルを経験しているだけでなく、ソックスを作ってくれる工場も知っていたので、ではタッグを組みましょう、となったのです。
高尾:私は選手を引退してから、旭化成の繊維部門で働いていました。指導者になる道もあったのですが、ずっと陸上競技しかしてこなかったので、社会のことも知りたいと思い、配属させてもらったのです。
一方で、大学(大阪産業大)に通い、一般市民ランナーのランニング障害についての研究をしてまして。市民ランナーは8割くらいが足の痛みを抱えていますが、いろいろなランナーの足型も取りながら、痛みを軽減できるものを作りたいと考えていたんです。こうした経緯と、ファイテンさんのランニング専用のソックスを作りたいという思いが、タイミング良くマッチしました。
金:高尾さんとの出会いは大きかったですね。僕らはあくまで商品がメインで、どういったものをどういった素材で作るかを考えますが、高尾さんは足や走り方を基本にモノ作りを考える。そういったところが勉強になりましたし、それを学びながら発想を商品化させることができたと思います。
――「初代:足王」は着想から商品化までどのくらいかかったのですか?
高尾:商品になるまで2年かかりました。妥協すればすぐに商品化はできたかもしれませんが、金さんはこちらが“これはダメ”と伝えたことを絶対に“いけるだろう”とはしなかった。製造工場を含めた三者でとことん話をしました。
振り返ると、私もその頃は選手としての経験値に頼っていた部分が大きく、こういうものがほしいという思いが、現実的な商品化の妨げになっていたところもありました。
金:機械はできることが限られているので、最初は1足編み立てるのにも30分くらいかかりました。売れると増産という話になりますが、そんなにすぐに増産できないよ、とも言われましたし。妥協を許さなかった分、生産まで時間がかかりましたね。
<初代:足王(ソッキング)5本指>
<初代:足王(ソッキング)丸つま先>
いち早く前足部分のサポートに着目
――「初代:足王」で特に重視したところは?
高尾:まずはファイテン独自の機能を活かした、足首のテーピング機能です。人によって足幅も違いますし、締まり方の感覚も異なりますが、足首のブレをなくせば、ランナーの意識が変わってくると。
金:当時のランニングソックスは短い丈が主流でした。モニターからももっと短い方が、という意見もあったのですが、高尾さんから、足首はしっかり締めたほうがいいと。販売店にも説明してなんとか理解を得られましたが、説得が難しいところがありましたね。
高尾:2つ目は拇趾と小趾のところに付けた大きめのパッドです。拇趾と小趾に必ずパッドが当たるようにして、衝撃吸収をしながら、足の力がしっかり抜けるようにしました。
その頃はまだ、推進力に優れた「厚底」のランニングシューズがなく、前足で着地することは着目されていなかったのですが、いち早く意識していたわけです。そして、3つ目が土踏まずのところです。アーチは疲れてくると落ち込み、バネ作用をしなくなるので、サポートする機能を入れました。
――「初代:足王」と同時並行で「旧:足王レーサー」も開発したのですか?
金:当初はレーサーを作るつもりはありませんでした。発売後の足王の反響が大きく、売れ行きもそれまで展開していたスポーツソックスの10倍くらいだったので、高尾さんとも相談して、もう少し競技志向のソックスを出したらどうか、という話になったんです。レーサーが誕生したのは足王が出た4年後です。
高尾:実は足王ができた時に、生地が薄い試作品も作っていました。次は速さをサポートするソックスがいいと。私が主宰するランニングクラブの人にサンプルを履いてもらったところ、薄くていいねと好評で。この薄さでパワーがあるものを作ってほしいと言われました。
金:難しかったのはそこでしたね。パワーを保ちつつ、薄くする…。
高尾:大変だったのは工場の職人さんだったと思います。要望はいくらでも言えますが、それを形にする機械の性能には限界がありますからね。職人さんはなんとか叶えようと、一生懸命に試作品を作ってくれるのですが、そのたびにダメ出しをしまして。申し訳ないと思いつつも、妥協をしないのが大事、という信念がありました。
金:薄く作るためには、糸の細さから編み機の選定まで足王とは全く違うやり方で考える必要がありました。編み機は何種類もあり、それぞれで試作品を作ってもらいまして。できるとすぐに高尾さんに試してもらい、これではない、強過ぎる、弱過ぎると4年間の間に、数えきれないくらいにやり取りをしました。
高尾:薄さ、軽さというのは微妙な感覚なんですが、速さを追求する者にとってはとても大事なところなんです。一方で耐久性も必要なので、形にするのは本当に難しく、試作品の中には3回履いたら破れてしまったものもありました。
リニューアルを後押しした「厚底」の到来。ソックスでも効率の良い走りをサポート
<足王(ソッキング)レーサー>
<足王(ソッキング)5本指>
<足王(ソッキング)丸つま先>
――今回なぜ「足王」をリニューアルしたのですか?何かきっかけがあったのですか?
高尾:大きかったのは「厚底シューズ」が主流になったことですね。2019年に厚底シューズが登場してから、それまで「薄底」を履いていた競技者もこぞって「厚底」を履くようになりました。
厚底の1つの特徴はカーボンプレートを搭載していること。シューズ自体が反発することで、効率の良い走りができます。つまり、ランニングエコノミーを高めるので、パフォーマンスが向上します。そこでソックスでもバネ効作用強化しようと、土踏まず部分にテーピングラインを入れたのです。
難しかったのはバネ作用の強弱。強くし過ぎると足が痛くなり、緩めると意味がなくなりまして…痛くなるのは締まっている証拠ですが、1人2人が痛くても“まあ仕方がない”としてはいけない。誰が履いても痛くならないよう試行錯誤を重ねたので、完成まで時間がかかりましたね。
それと前足部分のクッションパッドとの兼ね合いです。これを残しつつテーピングラインを入れる難しさもありました。
金:リニューアルにあたり生地も変えました。もともとファイテンのアクアチタンの糸を使っていたのですが、それを最高峰の技術であるメタックスを染み込ませた糸にしたのです。
滑り止めを増やした「足王レーサー」はより速さと軽さを追求
――「足王レーサー」はどのように改良したのですか?
高尾:もともと足王レーサーは、速さ・軽さを追求してきたのですが、足首とアーチをつなげるラインを強化することで、地面からの反発を上手く利用できるようにしました。
それと前足部分の滑り止めを増やしました。理由は「厚底」が主流になって以来、注目されているのが前足の部分だからです。踵から入ってつま先に抜けていく時間帯、つまり前足部分の設置時間が短いほど速く走れるのですが、「厚底」はその可能性を高めてくれます。
ならばソックスにおいてもこれを促進させることが必要かと。滑り止めを付けた箇所や量を増やしたことで、前足がシューズの中で滑ることなく、しっかり蹴れるようにしたのです。前足が滑りにくいということはランニングの効率化、ランニングエコノミーにもつながると思います。
金:足王レーサーでは、指の部分にも滑り止めをという要望があったので、これにお応えした形ですね。
高尾:新旧を履き比べても、感じも全然違います。薄さも違いますし、丈も短くしました。丈を短くするかどうかもかなり議論しましたね。
金:足王はランナーがケガをしないために足首をしっかり保護して、足王レーサーではそれよりも軽さや薄さを優先しました。
短くした分、多少は足首のサポート力は落ちますが、足王レーサーを履くランナーは足首がしっかりしているので、耐久性も高めました。元々、テーピングラインとベースとなる糸の部分の境目があったので、そこから破れてしまうこともありましたが、今回リニューアルしたことにより、テーピングラインの中にベースの糸が入っています。
その分、完成まではすいぶんと時間がかかりましたね。いろいろな機械別でサンプルを作ったので、コストもかかりましたし…モニターさんからもいろいろな意見を聞きました。
高尾:本来は1年前の完成を目指していたんです。コロナの影響もありましたが、私が納得せず、ストップしてもらったことも(笑)ファイテンさんがすごいところは、これが最終段階というところになっても、僕がこれはおかしいと連絡すると、機械のラインを止めてくれるんです。
金:何回か止めましたね(笑)
高尾:よく私のわがままに付き合ってくれたと思います。どんなにいい商品を作ってもクレームがあるのは仕方がないですが、ないようにするためにとことん努力しなければなりません。それにしてもよくここまでできたと思います。現段階ではこれを超えるものはないでしょう。
将来的にはバリエーションを増やし、多様なニーズに応えていきたい
――高齢化が進む日本において、健康増進がますます大切になると言われています。こうした中、「足王」はどんな役割を果たしたいと考えていますか?また将来的にはどのような展望がありますか?
高尾:健康増進をするのに不可欠なのが、ほど良い運動を長く続けることだと思います。大敵なのがケガです。機能性ソックスである足王はケガから守ってくれるので、ランナーのみならず、ウォーキング愛好者にも試してほしいですね。
金:足王は健康を保つためのソックスだと思います。将来的には足の形はみんな違うので、それぞれに合ったソックスを追求し、商品化できればと思っています。
高尾:今後は自分の走りの特徴やクセがわかるテクノロジーを入れられるようになる可能性もあるでしょう。シューズが進化しているのだから、ソックスも進化し続けなければなりません。双方向で進化すれば、タイムの伸び率も高まりますし、ソックスを進化させることで健康志向の人にも貢献できると思います。
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