経済的困難を抱える女子中高生にITとデザインの力を。「IFUTO」プロジェクトレポート
2022年10月はデジタル庁が定めるデジタル月間です。アドビでは、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を目指すデジタルの日/デジタル月間の賛同企業として様々な活動を行っています。活動の一つとして、プロジェクト「IFUTO(いふと)」の支援活動についてお届けします。
■IFUTOとは
もし(IF)ITの力があれば、可能性はさらに広がる。そんな思いから名付けられた「IFUTO」は、IT教室に通うのは経済的に難しいという⼥⼦中⾼⽣を対象に、ITおよびデザインを学ぶ機会を提供するプログラムです。貧困家庭の子どもの支援を行う認定NPO法⼈キッズドア(以下:キッズドア)が、千葉⼤学デザイン・リサーチ・インスティテュート、⼀般社団法⼈プロジェクト希望をパートナーとして、2022年7月より半年間にわたって実施しています。
事前アンケートでは参加者の半数近くが「日頃パソコンをほとんど使わない」と回答しており、ITリテラシーを身につける機会が少ないことがうかがえます。今回のプログラム期間中参加者には、提供を受けたパソコンが貸与され修了後には付与される予定です。プログラムでは、パソコンの操作から始まり、デザイン、マーケティングなどを学び、終盤では自分でデザインしたTシャツをオンラインショップで販売することを目指します。講義は千葉⼤学墨田サテライトキャンパス(墨田区)で行われています。
9月のテーマはデザインで、アドビは2日間にわたる講座の企画・運営にたずさわりました。講師にイラストレーターであり、Adobe Japan Prerelease Advisorとして活躍する、あさひな。さんをお呼びし、参加者にはAdobe Photoshop、Adobe Illustratorの基本的な使い方を学んでいただき、缶バッジ制作を通じて楽しくデザインすることを実感してもらいました。
■学んだテクニックを活かして、自分でデザインした缶バッジを制作
講義では、缶バッジのデザイン制作において使えるテクニックとして、文字タッチツールを活用したフォントのアレンジ、写真のクリッピングマスク、丸の図形のみを活用したレモンの書き方などをピックアップ。生徒たちは、手を動かして習った機能の使い方を試していきます。
講義のあとは缶バッジのデザインの作成です。千葉大学の学生やアドビのスタッフがサポートしながら自分だけのデザインを形にしていきます。
デザインが完成したら、いよいよ缶バッジの作成です。インクジェットプリンターでデザインを印刷し、缶バッジの上にラミネートといっしょにプレスすれば出来上がりです。最後のプレスを自分でやってみた生徒も。
完成したバッジを見てパッと顔を輝かせる生徒たち。友だちの缶バッジを見て「かわいい〜」という声もあがっていました。
2日間の講義終了後のアンケートでは、次のような声が寄せられました。
・新しいことを学ぶのはとても楽しかったです。先生もおもしろい人で毎回あっという間に終わっちゃいました。ありがとうございました。最高でした!(高校1年生)
・あさひな。先生がとても分かりやすく、楽しくできました。とても楽しい講習会、ありがとうございました。(高校1年生)
・とても楽しかった。新しいことにチャレンジできて良かったし、何かを作ることの面白さ楽しさを知ることができた!(高校2年生)
・図形をたくさん組み合わせて作るのは、とても大変でした。時間が足りなくて缶バッジは作れなかったけど、使い方などは学べたので、家でもイラスト等かきたいと思いました。(高校2年生)
・スマホではできないところまでできたので、とても楽しかったです。(高校3年生)
・自分の力をうまく発揮できなかったことが少し残念でしたが、本当に楽しかったです。ありがとうございました。(中学3年生)
・パソコンはなんでも出来ることがわかった。自分の力で出来るように、日々努力して最後の日までに、少しでも自分の得意分野にしたい。(中学3年生)
■この体験を将来の可能性につなげてほしい
プロジェクトを主催するキッズドア 理事長 渡辺由美子氏は次のように話します。
「キッズドアでは、以前からひとり親世帯など経済的に厳しい家庭や子どもたちの支援の一環として学習支援を行っており、学校の勉強だけでなく、世の中で役に立つITのスキルを得られるような機会も作ってきました。しかし、テーマをプログラミングにすると、女子生徒は苦手意識があるのか、男子生徒の参加が多くなりがちでした。
今回のプロジェクトでは女子生徒に焦点を合わせて、彼女たちが興味を持ちやすいデザインをテーマに取り入れました。想定以上に参加者が多く、神奈川、埼玉から通っている子もいますし、参加率も非常に高くなっています。
アドビさんには、昨年の母親の就労支援としてデザインを学ぶ講座で支援をいただき、今回も相談させてもらい、ご快諾いただき大変心強く思っています。今回のプログラムで、AdobePhotoshop、Adobe Illustratorを体験してもらい、自分の将来の可能性の一つとしてデザインすることを考えてくれる生徒が一人でも生まれればいいと思っています。」
プロジェクトの企画からたずさわった千葉⼤学理事の渡辺誠⽒は次のように話します。
「大学として、今回のプログラムは高大接続改革の可能性として捉えています。海外では、アドバンスト・プレイスメント (AP: Advanced Placement) という仕組みがあり、高校のうちに大学の授業を学び、大学入学後の単位として認定するというものがあり、千葉大学でも取り入れたいと考えています。今回のプログラムは、そのトライアルとしての側面があります。
同時に、プログラムとして生徒のこれからに役立つことを考え内容を企画しました。ここでAdobe Photoshop、Adobe Illustratorを学んだ生徒が、デザインに興味を持ち、スキルを磨いていけば履歴書にも書けるようになります。プログラム後半では、マーケティングやECショップの作成を学んだり、Tシャツを制作している会社を見学する機会があり、世の中にあるものがどうやって生まれて売られていくのかということがわかるようになります。世の中の仕組みを知ることが生きていく上でプラスになると伝えたいですね。」
講師を務めた、あさひな。さんは次のようにコメントしました。
「Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorに初めて触れる生徒でも、『これなら自分にもできそう!』と思ってもらえるお手伝いができたら良いなと思い、講師をお受けしました。講義を通して、PhotoshopやIllustratorの基本的な操作を体験してもらい、自分の中にあるアイデアをカタチにすることができるようにプログラムを構成しました。
授業をやってみて、自分で何かを作りたい生み出したいと思っている生徒さんが多くて嬉しかったです。缶バッジを作る際に、デザインや文字の配置に真剣に悩んでいる姿を見て、この中から将来クリエイティブな道に進む生徒さんが出てくるのではないかというワクワクした気持ちになりました。」
2日間にわたるプログラムの運営にたずさわったアドビのCreative Cloud エバンジェリストの仲尾毅は次のように話します。
「デジタルの日の『誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化』というコンセプトに賛同し、普段なかなかIT教育を受けられない生徒さんにデザインの楽しさを伝えられる機会として、IFUTOの支援を行うことになりました。ツールの提供、講義の運営だけでなく、生徒さんの作成のサポートなども通して、自分で作ることの楽しさを感じてもらえたことを実感しています。デザインというクリエイティブな活動を体験し、伝えたいメッセージを伝えるツールとしての”クリエイティブ”を活用したことが、将来の仕事や趣味につながればうれしいですね。」
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